柚希礼音 主演/宝塚星組「黒豹の如く」「Dear DIAMOND !!」
2月8日(日)宝塚大劇場へ。
星組公演「黒豹の如く」「Dear DIAMOND !!」を観劇。柚希礼音、夢咲ねねのサヨナラ公演である。柚木はトップを就任後6年の長きに渡り務めた。
チケットは本当に入手困難だった。宝塚友の会もチケットぴあやe+の先行もことごとく落選し、当日券に勝負をかけるしかなかった。大劇場近くの喫茶店でも「黒豹は全然チケットが手に入らない!漸く何とか平日B席が1枚だけ当たった」といった会話を耳にした。
観劇予定日の前日に11時開演の当日券(座席指定券)が70枚、15時開演は50枚出るとの情報を入手した。僕は気合を入れて朝4時40分に大劇場正門に到着。その時点で11時の並びが14人、15時が8人だった。当日券の枚数を考慮して11時の回に並ぶ。販売開始の9時半には両者合わせて軽く400人を超えていた。
「黒豹の如く」は作/柴田侑宏、演出・振付/謝 珠栄。過去にこのふたりが組んだ作品には「黒い瞳」「激情-ホセとカルメン-」「凱旋門」「ガラスの風景」がある。
舞台は1920年代のスペイン(バルセロナ→マドリード→カディス)。第一次世界大戦が終結し、フランコ軍事政権が台頭する前の束の間の平和な時代。スペインを舞台にした柴田作品には「情熱のバルセロナ」「激情-ホセとカルメン-」「誰がために鐘は鳴る」「哀しみのコルドバ」がある。自家薬籠中の物と言えるだろう。
主人公のアントニオは海軍大佐で海賊の末裔。無敵艦隊が名を馳せたスペイン栄光の時代はとうに過ぎ去り、主役は空軍に移ろうとしていた。そしてドイツやイタリアではファシズムの台頭。しかし海を愛するアントニオは船を捨てず、しっかりと帆を張り時代の風に流されることなく、自らの意志で進路を決める。……この物語がしっかり柚希退団とリンクしており、見事としか言いようがない。また柴田さんは本当に台詞が上手く、哀歓があって味わい深い。
柴田作品で僕が好きなのは「琥珀色の雨にぬれて」「花の業平」「仮面のロマネスク」「哀しみのコルドバ」だが、「黒豹の如く」はそれらに勝るとも劣らない傑作である。
謝 珠栄(宝塚歌劇団OG)の振付はダイナミックで見応えがある。彼女と劇団四季の加藤敬二が日本で最も優れた振付師だと僕は考えている。タンゴあり、フラメンコあり、そして最後はカルナバルの熱狂。まさにダンス・ダンス・ダンス!であった。
柚希礼音はバランスがとれた男役である。滑舌がよいとはいえないし美声でもないが、音程はしっかりしていて、ダンスよし、容姿よしで申し分ない。
敵役アラルコンを演じる紅ゆずるはビジュアル・歌唱・ダンス力全てにおいて柚希に劣る。雰囲気もちょっと暗い。悪役にはいいけれど……。
夢咲ねねは美人だし、とにかく抜群に踊れる娘役なので観ていて気持ちがいい。彼女の退団は惜しい。
ショー「Dear DIAMOND !!-101カラットの永遠の輝き-」は作・演出/藤井大介。
藤井の演出は大劇場デビュー当初からいくつか観ているが、「どうしようもない奴」だと想っていた。ところが!久しぶりに彼のショーに接し、「見せ方」が格段に上手くなっているのでびっくりした。石の上にも三年である。
オープニングから華やかで、ピアソラの「リベルタンゴ」を使用するあたり、前半の芝居からの継続性が感じられてニヤリとさせられた。組子がみこしを担いでその上に柚希が乗る演出にもやられた!
途中、柚希が客席に降りてくる場面があり、僕が座っている席の5列前まで来たので ドキドキした。眩しかった。本当に彼女は太陽のように周囲を明るく照らすひとだ。
あとショパンのピアノ独奏曲「バラード第1番」が静かに流れ、主役二人がデュエット・ダンスのする場面もしみじみ感銘を受けた。客席のあちらこちらからすすり泣き、嗚咽の声が聞こえてきたのもむべなるかな。
今回は芝居もショーも大当たり、満塁ホームランである。必見。
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