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2015年2月 8日 (日)

ネトウヨって何?

東京新聞は2014年11月27日に「首相はネトウヨだった!?」という記事を掲載した。「ヘイトに加担」という副題も。大学生が小4になりすましたサイトを安倍首相がフェイスブックで「最も卑劣な行為」と批判した件に関する記事である。また12月には衆議院議員選挙の結果を受け、同紙に「ネトウヨの星 次世代なぜ激減」という記事も載った(→こちら)。 ところで、「ネトウヨ(ネット右翼)」って、その実態は何?

右翼の定義として、辞書には「《フランス革命当時、議会で議長席から見て右方に穏和派のジロンド派が席を占めていたところから》保守的または国粋的な思想、立場の一派。また、その者」とある。

一方、左翼は「《フランス革命当時、議会で議長席から見て左方に急進派のジャコバン派がいたことから》社会主義・共産主義・無政府主義などの革新的な思想。また、そのような立場の人・団体」とある。

日本においては大雑把に次のように分類出来るだろう。

  • 右翼-天皇を崇拝し、天皇制を是とする人々(詳しくは産経新聞「国民の憲法」を参照のこと→こちら)。外国を排斥したい、日本は日本らしく(クール・ジャパン万歳!)という考え方。家父長主義、父権主義。憲法9条を改正し、日本は強い軍隊を持つべきだと主張。原発推進派。
  • 左翼ー社会主義・共産主義革命に共感する人々。当然、天皇制に対しては否定的。ゆえに「日の丸」「君が代」を憎む。憲法改正には断固反対。平和主義者。自らを「市民」と語りたがる(プロ市民)。反原発派。

奇妙なのは、本来「右」「左」とは無関係な筈の価値観、日本国憲法改正の是非とか原子力エネルギーの是非で両者の思想が真っ二つに分かれていることである。ここが世界から観た日本の右翼/左翼の特殊性である。つまり奇形・異端なのだ。

そもそも右翼は保守派であり、左翼は改革・革命を志しているのだから前者が憲法堅持、後者が改正論者であるべきだろう。この齟齬の原因は日本国憲法の成り立ちに端を発する。我が国の憲法はGHQ支配下のもと、連合国にとって都合のいい内容として書かれた。マッカーサー草案(GHQ草案)の原文は英語であり、それが日本語に翻訳されている。だから右の人たちは自主憲法制定を目指し、左派は軍国主義(治安維持法、特高警察)再現の悪夢を恐れ(当時共産党員は弾圧され、多くが命を落とした。例えば「蟹工船」の著者・小林多喜二)、憲法9条改正阻止に必死になっているわけだ。しかし考えてみれば彼らが大嫌いな筈のアメリカが草案を書いた我が国の憲法を、左翼が守ろうとしている姿は滑稽ですらある。正に日本独自の特殊事情、「ねじれ現象」である。

そもそも憲法改正=9条改正ではないし、仮に日本が正式な防衛軍を持ったとして、それは果たして「右翼化」なのだろうか?軍隊を有する国が右翼国家ならば、世界の99%がそうなってしまう。北朝鮮も中国も、そして韓国も。無茶苦茶な話だ。「軍隊を有すること」=「侵略戦争を再び起こすこと」を意味しない。スイスみたいに永世中立国として生きる道もある。

日本のマスメディアに関しては、全国紙(読売・朝日・毎日・産経・日経)のうち、最も右なのが産経新聞でその次が読売、逆に最も左なのが朝日新聞である(地方紙では東京新聞など)。朝日が左翼である根拠は以下のとおり。

  • 事実とは異なるいわるゆる「従軍慰安婦問題」を1991年以降繰り返し記事にし、その誤報について32年間訂正も謝罪もせず、日本の国益を損ない続けた。
  • 「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」(いわゆる「国旗国歌条例」)に反対する立場をとった。つまり「日の丸」「君が代」が大嫌い。条例案を推進した橋下徹知事憎しのあまり、系列会社の週刊朝日は暴走し「ハシシタ・奴の本性」という知事の出自に関する差別的記事を掲載。後に謝罪、社長は引責辞任に追い込まれた。
  • 日本国憲法改正に反対の立場を取る。
  • 原子力発電所の再稼働には反対である。

「国旗国歌条例」や憲法改正、原発再稼働に反対という点で、毎日新聞社も左寄りだと言えるだろう。

では右翼はどうして原発推進派なのか?その理由は福島原発事故で白日の下に晒された。3・11の後、読売新聞は社説で原発をなくしてはいけない理由として「プルトニウム保持」の必要性を掲げた。万が一他国に戦争を仕掛けられた場合、速やかに核兵器を作れるようプルトニウムを我が国は持っていないといけない。だから安全保障のために原発は必要であり、「プルトニウムは潜在的な核抑止力」だというのだ。しかし考えてみれば全く非現実的な話である。非核三原則・憲法9条を無視して、そんなに直ぐに原爆・水爆を作れる筈がないではないか?ナンセンスとしか言いようがない。

では朝日新聞グループが目の敵にしている橋下徹・大阪府知事は果たして右翼なのだろうか?僕は全く違うと考えている。橋下氏が左翼や日教組が嫌いなのはその言動から明らかだ。しかし、だからといってアンチ左翼=右翼ではない。「国旗国歌条例」は教育現場から日教組を排除するための、いわば踏絵として導入されたというのが僕の見解である。橋下氏にとって天皇制は関心事ではなく、彼が天皇について語っているのは聞いたこともない。それに彼は”原発フェード・アウト”を唱える脱原発派である。右であろう筈がない。その点を多くの人々は誤解している。そもそも公務員は公僕である。国旗や国歌に対して敬意を払うのはあたりまえのこと。それをしなくていいと考える人がいること自体が異常だ。嫌なら公務員を辞めて民間で働きなさい。

現在の日本では「愛国心」を語ると、即座に「右翼」のレッテルを貼られてしまう。ある意味タブーになっていると言ってもいい。それは左翼ジャーナリズムが国旗と国歌(そしてそれらが象徴するもの)を憎んでいるからだ(ネガティヴ・キャンペーン)。しかし故郷を、祖国を愛するというのは人間性の基本中の基本ではないだろうか?例えば貴方はアメリカ合衆国のパレードで星条旗を振っている人たちを指さして「この右翼めが!」と罵りますか?馬鹿げている。

2015年1月現在、日本共産党と社会民主党(社民党)の政党支持率は合わせて3.6%である。つまり日本の左翼支持者は4%程度と考えられる。では左翼運動が最も華やかだった日米安保闘争から学生運動の最盛期に至る1960年-1970年代前半はどうだったかというと、日本共産党と社会党の支持率は 合わせて20-30%で推移していた(資料は→こちら)。その後、連合赤軍による浅間山荘事件が1972年にあり、それを契機に日本人の左翼に対する幻影・夢想が一気に冷めた。さらに1991年にソビエト連邦が崩壊、2002年に北朝鮮が日本人拉致を公式に認め被害者たちが帰国。こうして日本の左翼支持者は急速に減っていった。

左翼が4%しかいないマイナーな存在、絶滅危惧種となった今、右翼も多く見積もって10%未満に収まるよう定義付けするべきだろう。もし非左翼=右翼とするなら、日本国民の90%以上が右翼になってしまい、バランスが取れない。そんな乱暴な分け方は無意味である。つまり右翼も左翼もごく少数であり、大半は中道、穏健派であるというのが僕の考えだ。米ソ冷戦時代ならともかく、右か左で世界を語れる時代はとうの昔に終わったのである。

さて、「ネトウヨ」「ネット右翼」とはなんだろう?Wikipediaには「インターネットの電子掲示板上などで、右翼的、保守的、国粋主義的な意見を発表する人たちを意味する」とある。しかし論者によって意味するところが異なり、定義は極めて曖昧である

大阪大学准教授の辻大介がネットユーザー998人を対象におこなった調査では、以下の項目全てに該当する者を「ネット右翼」と定義した。

  • 「韓国」「中国」いずれにも親しみを感じない
  • 靖国公式参拝・憲法改正等に賛成
  • 政治・社会問題についてネット上で書きこみや議論をした

国粋・排他主義者を「右翼」とするのは分かる。中国は共産主義国家だから当然親しみを感じないだろう。しかし韓国を名指しするのは何故?だって同じ民主主義国家じゃないか。「韓国」を入れるのなら当然「アメリカ」や他のアジア諸国も含まれるべきであろう。ここにも日本の特殊事情が垣間見られる。

戦後70年が経過した。しかし未だに中国は「南京大虐殺」を、韓国は「従軍慰安婦」を言い募り、延々と日本に対して謝罪を求めてくる。彼らは決して許さない。これは外交で常に優位に立とうとする政治的駆け引きであり、ナショナリズムの発露である。日本の左翼ジャーナリズムもそれに同調し、「南京大虐殺」や「従軍慰安婦」で日本は反省するべきだと主張し続けてきた(自虐史観)。いや、むしろ外国を煽ってきた彼らこそ元凶であるとも言える。そういったやり口に日本人の多くは嫌悪感を抱いている。でもその感情って右翼なの??変だと思いませんか。つまり中国や韓国に対して悪いイメージを持つことに対し、「右翼」「ヘイト・スピーチ」という負のレッテルを貼るのは左翼ジャーナリズムの常套手段、プロパガンダなのである。そんな手口に安易に乗るべきではない。

ネトウヨとは定義が曖昧で実態のない、左翼ジャーナリズムが創りだした幻影である。本物の「右翼」は「左翼」同様、ごく少数派なのである。

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