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2015年2月

ガヴァドン登場!〜柳亭市馬・柳家喬太郎 二人会 (2/22)

2月22日トリイホールへ。

  • 桂弥太郎:寿限無
  • 柳家喬太郎:抜けガヴァドン
  • 柳亭市馬:花見の仇討
  • 柳亭市馬:のめる
  • 柳家喬太郎:双蝶々

喬太郎は「ウルトラQ」の出囃子で登場。マクラはJR東海が企画したウルトラマン スタンプラリーの話題。全64駅をめぐる冒険。「嫌らしいことに、スタンプは駅の構内ではなく、改札を出たところにあるんです」と、スタンプ帳を客席に披露。

「抜けガヴァドン」は古典落語「抜け雀」のパスティーシュ。バリエーションとしては他に「竹の水仙」や「抜け蟹」(上方の噺家・桂文太による贋作)などがある。土管に書かれた絵から抜け出してくるのがウルトラマンに登場する怪獣というのが最高に可笑しい!どうやらガヴァドンAとガヴァドンBというのがいるらしい。

A
ガヴァドンA

B
ガヴァドンB

ガヴァドンAって可愛いね。噺の中では「はんぺん」と表現されていたけれど、どちらかというと生の餃子に近いかな(多分、擬古典主義を意識して中国由来の餃子は回避したのだろう)。

「花見の仇討」はいい声で陽気な一席。「のめる」は上方の「二人癖」。登場人物の気風がいい。

「双蝶々」(ふたつちょうちょう)は三遊亭圓朝 作と言われている。でなんでこんなタイトルなのかといえば圓朝が人形浄瑠璃(後に歌舞伎化された)「双蝶々曲輪日記」からインスパイアされた作品ということらしい。「ガヴァドン」から一転して一切笑いのないシリアスな世界へ。このギャップがまた喬太郎の堪らない魅力である。嫌味な番頭、そして主人公が丁稚を絞め殺すときの迫真の演技。固唾を呑んで見守った。噺全体を貫く諦念であるとか、人間の業の深さに感じ入った。

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新作を披露/笑福亭鶴瓶落語会@兵庫芸文(1/25)

1月25日(日)兵庫県立芸術文化センターへ。笑福亭鶴瓶落語会。

  • 笑福亭喬若/動物園
  • 笑福亭鶴瓶/オールウェイズ お母ちゃんの笑顔
  • 桂文華/ふぐ鍋
  • 笑福亭鶴瓶/三年目
  • 笑福亭鶴瓶/山名屋浦里

参った。私落語「Always -お母ちゃんの笑顔-」を聴くのはこれで8回目くらい?もうウンザリ。飽きた。頻度高すぎ。前日24日(土)の昼公演は「琵琶を弾く観音像」で夜公演は「長屋の傘」だったという。うゎ、どっちも聴いたことがないのに!ハズレを引いてしまった。なんでも鶴瓶は3公演とも「琵琶を弾く観音像」を演じるつもりだったが、最初の公演を聴いた鶴瓶夫人から「ワタシあの噺嫌い」と言われたので変えたのだそう。「いらんこと言うな!」と申し上げたい。

「鶴瓶噺」も自分や夫人の自慢話ばっかりで詰まらない。少しも笑えない。来年からこの会に来るのはやめようかな?

鶴瓶は大体年間135席高座に上がっているそうである。また落語会初日に中谷美紀が聴きに来てくれて、(兵庫県の名店)ツマガリのケーキを差し入れてくれたと。

トリネタの元は扇屋の花魁・花扇の実話。それをタモリから聴いた鶴瓶が落語作家・くまざわあかねに台本を依頼し、主人公を山名屋の花魁・浦里にしたもの。これは以前「お直し」でも感じたことなのだが、鶴瓶に大阪のオバチャンは似合うけれど、若い花魁を演じると違和感をすごく感じるのである。あたりまえだけれど色気がないし(逆に柳家さん喬とか桂春蝶なら似合いそう)、彼のニンに合っていない。ガッカリだった。

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宴の後/演技部門でオスカーを勝ち取る方法

アカデミー賞授賞式が終わった。僕の今年の予想で的中したのは作品・監督・演技賞4部門全て・脚色・美術・衣装デザイン・撮影・長編&短編ドキュメンタリー・短編実写・外国語映画・音響編集・メイクアップ・作曲・歌曲の計18部門。昨年と同数だった。5年連続18部門以上というレベルは保つことが出来たからまずまずかな。

アカデミー賞の演技部門は「アル中・娼婦・精神異常者・身体障害者・病人(AIDSなど)」を演じると取りやすいという法則がある。これはレイ・ミランドがアル中を演じて主演男優賞に輝いた「失われた週末」(1945)から70年間全く変わらぬ鉄則である。つまりフツーの人を演じたのでは目立つことが出来ず、オスカーは勝ち取り難いのである。AIDS患者役で受賞したのはトム・ハンクス(フィラデルフィア)やマシュー・マコノヒー、ジャレッド・レトー(ダラス・バイヤーズクラブ)らがいるし、娼婦だったらアン・ハサウェイ(レ・ミゼラブル)やシャーリーズ・セロン(モンスター)が記憶に新しい。障害者なら「マイ・レフトフット」(主人公は脳性麻痺で左足しか動かすことが出来ない)のダニエル・デイ=ルイスとか「愛は静けさの中に」のマーリー・マントン(彼女は映画の役柄同様、聾者=聴覚障害者である)。今年主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインが演じたのはスティーヴン・ホーキング博士であり、「アリスのままで」のジュリアン・ムーアが演じたのはアルツハイマー病患者。見事にセオリーに当てはまっている。主演男優賞の予想を「バードマン」のマイケル・キートンと予想した人たちはアカデミー賞の歴史を全く理解していない間抜けである。

また1964年にジュリー・アンドリュースが「メリー・ポピンズ」で主演女優賞を受賞して以降、「歌うと有利」という法則が生まれた。彼女の歌唱がパーフェクトであることは論を俟たないが、果たして「メリー・ポピンズ」での演技が際立っていたと言えるだろうか?僕は甚だ疑問に感じる。”歌うお姉さん”という感じ。実は1964年はミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」が公開された年でもあった。ジュリーはこのミュージカルのブロードウェイ版オリジナル・キャストである。しかし映画の経験がなかった彼女は選ばれず、代わりにオードリー・ヘップバーンが抜擢された。オードリーの歌はマーニ・ニクソンによる吹き替えであった。このことでオードリーは激しくバッシングされ、映画は8部門アカデミー賞を受賞したものの、オードリーはノミネートすらされなかった。つまり同情票ジュリーに流れたのである。この事件以降、ハリウッドでミュージカル映画に出演する俳優は極力自分で歌うようになった。歌ったおかげでオスカーを手にした役者たちを列記しておこう。「ファニー・ガール」のバーブラ・ストライザンド、「キャバレー」のライザ・ミネリ、「シカゴ」のレニー・ゼルウィガー、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」のリース・ウィザースプーン、「ドリームガールズ」のジェニファー・ハドソン、「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイらである。

さて、そのジュリー・アンドリュースが今回の授賞式にサプライズ登場した。今年は映画「サウンド・オブ・ミュージック」公開から丁度50周年にあたり、レディ・ガガがトリビュートとしてメドレーを歌ったのである。素晴らしかった。

また歌曲賞を受賞した映画「セルマ」のGloryも胸を打つ感動的なパフォーマンスであった。映画でマーティン・ルーサー・キング・ジュニアを演じたデヴィッド・オイェロウォが客席でこれを聴きながら号泣、クリス・パインもボロボロ涙を流していた。

そして何より時めいたのが司会者ニール・パトリック・ハリスのオープニング・パフォーマンス。「アナと雪の女王」の楽曲を手がけたクリスティン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペスがこのショーのために書き下ろした新曲「Moving Pictures」をニールが歌い、途中から「イントゥ・ザ・ウッズ」のアナ・ケンドリックが加わってデュエットとなる。そこへ”ならず者”ジャック・ブラックが客席から乱入し、毒を吐くという意表をつく展開に。とにかく詩が面白いし、曲も美しい。ロペス夫妻のコンビは最高だね!新作短編「アナと雪の女王/エルサのサプライズ」(Frozen Fever)がすごく愉しみだ。これを観ながら宮﨑駿監督「風立ちぬ」の台詞じゃないけれど、正しく「この世は夢」だと想った。

そうそう、エディ・レッドメインの隣に座っていた奥さんのハンナ・バグショーが綺麗で驚いた。調べてみると女優じゃなくて一般女性なんだってね。写真はこちら①とかこちら②。

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2015年アカデミー賞大予想!

日本時間の2月23日に米アカデミー賞授賞式が開催される。 なお過去4年間、僕がアカデミー賞を予想したうち的中した数は全24部門中、最低18部門、最高20部門である。今年の目標はズバリ20部門。

では第87回アカデミー賞の受賞予想である。相当自信がある(鉄板)部門には◎を付けた。過去に僕がレビューを書いた作品はタイトルをクリックすればそちらに飛ぶ。

  • 作品賞:バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)◎
  • 監督賞:アレハンドロ・G・イニャリトゥ「バードマン」
  • 主演女優賞:ジュリアン・ムーア「アリスのままで」◎
  • 主演男優賞:エディ・レッドメイン「博士と彼女のセオリー」◎
  • 助演女優賞:パトリシア・アークエット「6才のボクが、大人になるまで。」◎
  • 助演男優賞:J・K・シモンズ「セッション」◎
  • 脚本賞(オリジナル):グランド・ブダペスト・ホテル
  • 脚色賞(原作あり):イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
  • 視覚効果賞:猿の惑星:新世紀(ライジング)
  • 美術賞:グランド・ブダペスト・ホテル
  • 衣装デザイン賞:グランド・ブダペスト・ホテル
  • 撮影賞:エマニュエル・ルベツキ「バードマン」◎
  • 長編ドキュメンタリー賞:Citizenfour ◎
  • 短編ドキュメンタリー:Crisis Hotline: Veterans Press 1
  • 編集賞:6才のボクが、大人になるまで。
  • 外国語映画賞:イーダ◎
  • 音響編集賞(Sound Editing):アメリカン・スナイパー
  • 録音賞(Sound Mixing):アメリカン・スナイパー
  • メイクアップ賞:グランド・ブダペスト・ホテル
  • 作曲賞:アレクサンドル・デスプラグランド・ブダペスト・ホテル
  • 歌曲賞:Glory「Selma」◎
  • 長編アニメーション賞:ヒックとドラゴン2
  • 短編アニメーション賞:ダム・キーパー
  • 短編実写映画賞:The Phone Call

「6才のボクが、大人になるまで。」のリチャード・リンクレイターが監督賞を受賞する可能性は捨て難い。

あと長編アニメーションだが、我が国の「かぐや姫の物語」の受賞は芸術性の高さから十分あり得るのだが、様々なデータを分析した結果、確率的に「ヒックとドラゴン2」を選んだ。苦渋の決断である。高畑勲監督、応援出来なくて本当にごめんなさい!

歌曲賞は「セルマ」のGloryで決まり。聴いた瞬間にビビッときた。ゴスペルとラップを融合したコンセプトが鮮烈だ。正にBlack musicの集大成である。

「グランド・ブダペスト・ホテル」のアレクサンドル・デスプラには今回、どうしても作曲賞を受賞して貰いたい。僕は「真珠の耳飾りの少女」の頃から彼の音楽が大好き。「ラスト、コーション」もいいね。

視覚効果賞は正直「インターステラー」か、「
猿の惑星:新世紀(ライジング)」か、どちらか判らない。

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イチオシ!映画「はじまりのうた」

評価:A+

Begin_again

公式サイトはこちら

「ONCE ダブリンの街角で」(2007)というアイルランド産の音楽映画があった。主題歌Fallying Slowlyはアカデミー歌曲賞を受賞。後に舞台ミュージカルとなり、トニー賞で最優秀作品賞、演出賞など8部門を受賞した。映画を監督/脚本したのはダブリン(アイルランド)生まれのジョン・カーニー。彼の新作が「はじまりのうた」である。

主演はキーラ・ナイトレイとマーク・ラファロ。ロックバンド「マルーン5」のボーカリスト、アダム・レヴィーンも重要な役割を果たす。アダムは実に演技がうまい、そしてセクシーだ(2013年、ピープル誌で「世界で最もセクシーな男性」にも選ばれたという)。

キーラ・ナイトレイ出演作は「スター・ウォーズ エピソード1」「パイレーツ・オブ・カビリアン」「プライドと偏見」「つぐない」「わたしを離さないで」「アンナ・カレーニナ」など沢山観ているが、今回の彼女が最高だった。びっくりした。やっぱり歌ったからだろうね。彼女が歌えることは知っていた。一時期、ミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」リメイク版への出演が取り沙汰されていたので(記事は→こちら)。

本作は全面的にニューヨークで撮られた。キーラがあちこちの街角で歌う(バンドを伴いレコーディングする)情景はさながら「ニューヨーク散歩」であり、僕は「ロンドン散歩」が魅力的なキャロル・リード監督の愛すべき遺作「フォロー・ミー」のことを想い出した。

原題Begin Againが示している通り、本作は再生の物語である。と同時に音楽が持つ魔法の力についての映画でもある。何というヴィヴィッドな作品なのだろう!全編が魅力的な楽曲で溢れ、ミュージカルと言っても過言ではない。キーラ・ナイトレイとマーク・ラファロが1台のiPodが再生する音楽をイヤホンスプリッターで共有し、それを聴きながらNYの街を彷徨う場面がある。ふたりがタイムズ・スクエアに差し掛かった瞬間、フランク・シナトラが歌うLuck Be a Ladyが流れたのには痺れたね。これはブロードウェイ・ミュージカル「野郎どもと女たち(Guys and Dolls)」のナンバーで、正にタイムズ・スクエアが舞台の物語なのである。抜群の選曲センスだ。

また「(音楽を通じて)恋愛感情抜きの男女の友情は成立し得る」という力強いコンセプトに「我が意を得たり!」と首肯した。

ニューヨークを舞台にしたノーラ・エフロン脚本/ロブ・ライナー監督の「恋人たちの予感」(原題:When Harry Met Sally...)という名作がある(未だにビリー・クリスタルがアカデミー賞授賞式に登場する時にはこの映画の主題歌It Had to Be Youが流れる)。メグ・ライアンのキュートさが絶頂期に達した作品で、僕も大好きなロマンティック・コメディだ。しかし映画の冒頭で「セックス抜きの男女の友情は成り立つのか?」という問題提議を掲げておいて、最後はな、なんと「いや、成り立たない」という結論に達するのである。公開当時大学生だった僕は映画館の暗闇で「そりゃないぜ!?」と悶絶した。その後ノーラ・エフロンは監督業に進出し、メグ・ライアンと引き続き組んでニューヨーク三部作(「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」)を撮ることになる。「恋人たちの予感」から24年。「はじまりのうた」はそのアンチテーゼ、見事な返歌なのである。長い間の喉のつかえが取れた気がした。

音楽が好きな人は絶対に見逃すな。今すぐ映画館へ駆けつけろ!

最後に、アカデミー歌曲賞にノミネートされたLost Starsは地味だけれど、しみじみしたいい歌だ。ただし受賞は無理だろう。栄冠を勝ち取るのは「セルマ」のGloryで決まり!初めて聴いたとき、雷に打たれたような衝撃を受けた。

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創作ミュージカル「河内湖」初演!〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2015

2月15日(日)フェスティバルホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 第10回 記念定期演奏会を聴く。指揮は総監督の梅田隆司先生。

第1部

  • 創作ミュージカル「河内湖」(作曲:高 昌帥、台本:梅田隆司)

第2部

  • ステージ・マーチング
    歌劇「アイーダ」より凱旋行進曲~TOIN ファンファーレ~スター・トレック~組曲「惑星」より「木星」~星条旗よ永遠なれ
  • バーンスタイン(C.グランドマン 編):ミュージカル「キャンディード」より
    序曲~ウェストファリア讃歌~死刑宣告~我らの庭を育てよう
  • ストラヴィンスキー(R.アールズ 編):組曲「火の鳥」より
    子守唄~魔王カスチェイの凶悪な踊り~終曲
  • ~3年間の歩み~
    「ベイマックス」エンディング・テーマ(AI 「STORY」)~メンケン(鈴木英史 編):「魔法にかけられて」
  • ~卒業生(8期生)を送る歌~
    GReeeeN:遥か
  • ストラウス(J.デ=メイ 編):ミュージカル「アニー」メドレー
    It's The Hard-Knock Life - You're Never Fully Dressed Without a Smile - Maybe - Tomorrow

アンコールは、

  • ロペス夫妻(S.ブラ 編):「アナと雪の女王」シンフォニック・ハイライト
    氷の心〜Let It Go〜雪だるまつくろう〜生まれてはじめて〜エピローグ
  • ももいろクローバーZ「行くぜっ!怪盗少女」
  • ゴダイゴ(樽屋雅徳 編):「銀河鉄道999」(ロング・バージョン)
  • 星に願いを

第1部の創作ミュージカル(初演)ではオーケストラ・ピットに生徒たちが所狭しとギュウギュウ詰めに陣取った。僕はしばしばオペラやミュージカル観劇目的で劇場に足を運ぶが、オケピにこんなに沢山人が入っているのって見たことがない!

高 昌帥(こう ちゃんす)は大阪音楽大学 准教授。本人の表記に従うと、在日コリアンである。吹奏楽コンクールの自由曲でしばしば取り上げられる「ウィンドオーケストラのためのマインドスケープ」「吹奏楽のための風景詩《日が昇るとき》」が有名。難易度の高い曲を書く、第一線バリバリの現代音楽作曲家という印象が強い。ところが今回の新作「河内湖」は非常に親しみやすいメロディだったので驚いた!こんなキャッチーな曲も書けるんだ。オープニングの輝かしいファンファーレはミクロス・ローザ作曲:映画「ベン・ハー」序曲みたいだった。

古代の大阪・河内湾にはクジラが泳いでいたという。治水対策として20kmにわたる「茨田堤」(まんだのつつみ)が築かれたとか(この堤の痕跡は現存している)、人柱のこととか、とても勉強になる。百舌鳥(モズ)の早贄(はやにえ)についての言及あり、「モズの歌」も登場。モズは捕らえた獲物を木の枝に突き刺したり、木の枝股に挟む行為を行う。秋に初めての獲物を生け贄として奉げたという伝承からこう呼ばれるようになった。

大阪府・堺市に仁徳天皇陵として知られる、墓域面積が世界最大規模の古墳がある。その近くには中百舌鳥町という地名が残っており、仁徳天皇陵も別名「百舌鳥耳原中陵」と呼ばれる。またモズは大阪府・市の鳥として指定されている。

物語は古代4-5世紀を舞台として、朝鮮からの渡来人による土木工事集団「匠衆」と祈祷師(+彼女を信仰する漁民たち)との対立が描かれる。そして最後は祈祷師ナギと匠衆の長老(爺様)の死(=人柱)によって両者は和解し、新しい時代に向けて歩み始める。観ている途中で気がついたのだが、この台本ってシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を下敷きにしているんだね。モンタギュー家とキャピュレット家の諍いはロミオとジュリエットの死をもって贖われる。「ロミオとジュリエット」は20世紀にミュージカル「ウエストサイド物語」(WSS)として生まれ変わるのだが、WSSはプエルトリコ系アメリカ人(シャーク団)とイタリア系アメリカ人(ジェット団)の闘争が描かれる。これが匠衆(渡来人)と祈祷師+漁民(倭人)の関係に繋がっていくのだ。実に巧みな作劇である。そしてその音楽を「渡来人」である高 昌帥が担当していることに深い意味がある。堰を切って川が流れ出す場面で、生徒たちが持った水布(みずぬの)が1階席を縦断していく演出にもやられた。

本作の完成度は高校生の学芸会レベルを遥かに超越しており、関西二期会などプロも絶対取り上げるべきだ。関西発のオペラとしては大栗裕の「赤い陣羽織」が有名だが、「河内湖」はそれに勝るとも劣らない傑作である。梅田先生、是非これを引っさげて東京公演も実現してください。もっと多くの人々に知ってもらうべきです。また大阪府・市は古代ロマン薫る「河内湖」の成果に対して「咲くやこの花賞」あるいは「大阪芸術賞」の贈与を検討すべきだ、とここで力説しておく。梅田先生は間違いなく本作で吹奏楽の新たな可能性を切り開き、大阪から発信する魅力的なコンテンツを生み出したのである。

生徒たちの奮闘も讃えたい。ここは合唱部か、はたまたミュージカル部か!?というくらい皆歌が上手く、独唱者も際立っていた。振付演技指導は日本舞踊「飛鳥流」家元・飛鳥左近が担当。衣装も素晴らしかった。

マーチングの「スタート・レック」はアレクサンダー・カレッジ作曲「宇宙大作戦」のテーマで開始され、途中からジェリー・ゴールドスミス作曲の映画版(1979年)テーマが絡んでくる構成。因みにJ・J・エイブラムスが監督した2009年「スター・トレック」のテーマはマイケル・ジアッキーノが担当しており、これも格好よくて僕は大好きだ。桐蔭のダイナミックなマーチングを堪能した。ドラムメジャー(バトン)の生徒も無茶苦茶上手い!

桐蔭は2014年吹奏楽コンクール全国大会に「キャンディード」で臨み、銀賞だった。僕は「どうしてが穫れなかったのか?」ということを考えながら聴いた。コンクール選抜メンバー55人による演奏。デュナーミク(強弱法)やアゴーギグ(緩急)がくっきりして、精度が高い。「死刑宣告」のホルンが荒いかなと感じたが、トランペットのソロは見事だった。「我らの庭を育てよう」のハーモニーは美しく、十分金賞に値する内容だった。「選曲の問題かな?」と想った。

吹奏楽コンクールデータベースを調べてみると1970年以降、全国大会で「キャンディード」を自由曲として演奏したのは桐蔭を含め10団体である。そして金賞は0。つまりコンクールでが獲れない曲なのだ。全国大会まで勝ち進むとその後は上手い下手は余り関係なくて、選曲で決まる。これは厳然たる事実である。かつて作曲家の西村朗氏が吹奏楽コンクールの審査員を務めた時、「どの学校も90~95点の仕上がり。選曲と細部の表現の繊細さが最後の勝負だった」と講評し、物議を醸した。「キャンディード」は最後がゆっくり静かに終わるので分が悪い。「宇宙の音楽」とか「華麗なる舞曲」「ダフニスとクロエ」みたいに〆がプレスト~アレグロになって超絶技巧をこれでもか!と見せつける方が審査員ウケするのである。

吹奏楽コンクールで勝てない音楽としてチャイコフスキーが有名だ。伊勢俊之/創価学会関西吹奏楽団や、あの「吹奏楽の神様」屋比久勲 先生ですらダメだった。2014年も金賞常連校の畠田貴生/東海大学付属高輪台高等学校が「白鳥の湖」を、石津谷治法/習志野市立習志野高等学校が「眠れる森の美女」で挑んだが、どちらも銀賞に終わった。畠田先生は周囲から散々「あの曲はやめとけ」と諌められたが、それでも押し切ったという。はっきり言って無謀である。閑話休題。

180人全員の演奏による「火の鳥」はド迫力のサウンドであった。

~3年間の歩み~のコーナーでは当初、中島みゆきの「麦の唄」を歌う予定だった。ところが「先生、あの曲イマイチ」という意見が出て、結局生徒の提案で「ベイマックス」になったそう。~卒業生(8期生)を送る歌~のコーナーも含め、桐蔭得意の映像を交えてのパフォーマンス。いやがうえにも盛り上がる。

今年の卒業生は3年間で約250回の本番をこなしたという。大体4日に1回のペースだ。また来年度は72人の新入生を迎える。特にフルートの希望者が多く、22人中合格したのは4人だけだったそう。

交響曲第1番「指輪物語」などの作曲で知られるヨハン・デ・メイは「ミス・サイゴン」「オペラ座の怪人」「エリザベート」など数多くのミュージカルを吹奏楽用に編曲しているが、「アニー」もあるのは知らなかった。非常に洗練された鮮やかな編曲。

「アナと雪の女王」のアレンジも○。特に「ありのままで」を女生徒全員で歌うのがいい。

アンコールの定番「銀河鉄道999」は今回珍しくロング・バージョン。照明が落とされてミラーボールが回転し、幻想的光景を会場に作り出す。ここまでは良かったが、この演出が曲の最後まで続いたのには閉口した。生徒たちのパフォーマンスも、表情も、暗すぎて見えない!客席の親御さんたちは自分の子供の晴れ姿を見に来ているんでしょ?曲の雰囲気作りなんかどうでもいいい。本来の趣旨を見失っている。序奏だけ暗くして主部に入ったら明るくすべき。来年は改善を望む。

最後に絶対に聴く(観る)べき、僕が推す桐蔭のベスト・パフォーマンスを列記しておく。

  1. 銀河鉄道999
  2. アナと雪の女王
  3. レ・ミゼラブル
  4. エリザベート
  5. マイ・フェア・レディ

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映画「さよなら歌舞伎町」

評価:A

映画公式サイトはこちら

グランド・ホテル形式というジャンルがある。1932年に公開され、第5回アカデミー作品賞を受賞した映画「グランド・ホテル」がその由来である(ちなみに僕はアカデミー作品賞受賞作を第1回から全作品観ている)。要するにある場所に集まった、様々な人生を生きてきた人々を俯瞰的に描く群像劇である。この手法は後年様々なバリエーションで応用された。その代表例が1970年代のパニック映画だろう。「大空港(エアポート・シリーズ)」「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」「大地震」などが該当する。ジェームズ・キャメロンが偉かったのはアカデミー作品賞・監督賞を受賞した「タイタニック」を敢えてグランド・ホテル形式にしなかった点である(トニー賞を受賞したミュージカル「タイタニック」はグランド・ホテル形式を踏襲している。因みにこれを作曲したモーリー・イェストンは「グランド・ホテル」のミュージカル版も手がけている)。閑話休題。

さて、「さよなら歌舞伎町」は完全にグランド・ホテル形式の映画だ。それを猥雑で欲望渦巻く新宿・歌舞伎町のラブホテルで展開したところが本作のユニークなところ。強烈な「グランド・ホテル」のパロディとも言えるし、秀逸なアイディアである。脚本は手練の荒井晴彦。「Wの悲劇」の大胆な脚色が鮮やかだったが、「赫い髪の女」「嗚呼!おんなたち 猥歌」など日活ロマンポルノを多く手がけ、「ひとひらの雪」など性愛を描かせたら彼の右に出るものはいない。

本作ではデリヘル嬢、AV女優、SM嬢、ホテトル嬢(古い!)、たちんぼ、枕営業などが次々に登場(警察官のカップルも!)。彼ら(彼女ら)が錯綜し、物語を紡いでいく光景は圧巻で、さながら性風俗の見本市の様相を呈している。

映画冒頭は前田敦子の歌声で始まるので意表を突かれる(そして最後も彼女の歌で〆られる)。意外と上手い(AKBにいた頃よりも格段に進歩している)。あっちゃんは3人組バンドのボーカルで、とあるプロデューサーからCDデビューの話を持ちかけられている。プロデューサーからは「後の2人はいらない」と言われているが、そのことを仲間には話せていないという設定。で結局、彼女は枕営業で件のラブホテルに入室するというわけ。ここでやはり観客としてはAKB48の公式ライバル乃木坂46の松村沙友理のスキャンダルを思い出さずにはいられない仕掛けになっているのだ。だから実に生々しくて映画館の暗闇でニヤニヤしてしまった。

東日本大震災の絡ませ方も実に巧みだ。さり気なく311号室だったりしてね。人生どん詰まり。でも最後は仄かな希望の光が垣間見られる。

これが3度目のタッグとなる荒井晴彦と廣木隆一監督は実に相性が良い。おぬしら、なかなかやるな。

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柚希礼音 主演/宝塚星組「黒豹の如く」「Dear DIAMOND !!」

2月8日(日)宝塚大劇場へ。

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星組公演「黒豹の如く」「Dear DIAMOND !!」を観劇。柚希礼音、夢咲ねねのサヨナラ公演である。柚木はトップを就任後6年の長きに渡り務めた。

チケットは本当に入手困難だった。宝塚友の会もチケットぴあやe+の先行もことごとく落選し、当日券に勝負をかけるしかなかった。大劇場近くの喫茶店でも「黒豹は全然チケットが手に入らない!漸く何とか平日B席が1枚だけ当たった」といった会話を耳にした。

観劇予定日の前日に11時開演の当日券(座席指定券)が70枚、15時開演は50枚出るとの情報を入手した。僕は気合を入れて朝4時40分に大劇場正門に到着。その時点で11時の並びが14人、15時が8人だった。当日券の枚数を考慮して11時の回に並ぶ。販売開始の9時半には両者合わせて軽く400人を超えていた。

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黒豹の如く」は作/柴田侑宏、演出・振付/謝 珠栄。過去にこのふたりが組んだ作品には「黒い瞳」「激情-ホセとカルメン-」「凱旋門」「ガラスの風景」がある。

舞台は1920年代のスペイン(バルセロナ→マドリード→カディス)。第一次世界大戦が終結し、フランコ軍事政権が台頭する前の束の間の平和な時代。スペインを舞台にした柴田作品には「情熱のバルセロナ」「激情-ホセとカルメン-」「誰がために鐘は鳴る」「哀しみのコルドバ」がある。自家薬籠中の物と言えるだろう。

主人公のアントニオは海軍大佐で海賊の末裔。無敵艦隊が名を馳せたスペイン栄光の時代はとうに過ぎ去り、主役は空軍に移ろうとしていた。そしてドイツやイタリアではファシズムの台頭。しかし海を愛するアントニオは船を捨てず、しっかりと帆を張り時代の風に流されることなく、自らの意志で進路を決める。……この物語がしっかり柚希退団とリンクしており、見事としか言いようがない。また柴田さんは本当に台詞が上手く、哀歓があって味わい深い。

柴田作品で僕が好きなのは「琥珀色の雨にぬれて」「花の業平」「仮面のロマネスク」「哀しみのコルドバ」だが、「黒豹の如く」はそれらに勝るとも劣らない傑作である。

謝 珠栄(宝塚歌劇団OG)の振付はダイナミックで見応えがある。彼女と劇団四季の加藤敬二が日本で最も優れた振付師だと僕は考えている。タンゴあり、フラメンコあり、そして最後はカルナバルの熱狂。まさにダンス・ダンス・ダンス!であった。

柚希礼音はバランスがとれた男役である。滑舌がよいとはいえないし美声でもないが、音程はしっかりしていて、ダンスよし、容姿よしで申し分ない。

敵役アラルコンを演じる紅ゆずるはビジュアル・歌唱・ダンス力全てにおいて柚希に劣る。雰囲気もちょっと暗い。悪役にはいいけれど……。

夢咲ねねは美人だし、とにかく抜群に踊れる娘役なので観ていて気持ちがいい。彼女の退団は惜しい。

ショー「Dear DIAMOND !!-101カラットの永遠の輝き-は作・演出/藤井大介。

Kuro3

藤井の演出は大劇場デビュー当初からいくつか観ているが、「どうしようもない奴」だと想っていた。ところが!久しぶりに彼のショーに接し、「見せ方」が格段に上手くなっているのでびっくりした。石の上にも三年である。

オープニングから華やかで、ピアソラの「リベルタンゴ」を使用するあたり、前半の芝居からの継続性が感じられてニヤリとさせられた。組子がみこしを担いでその上に柚希が乗る演出にもやられた!

途中、柚希が客席に降りてくる場面があり、僕が座っている席の5列前まで来たので ドキドキした。眩しかった。本当に彼女は太陽のように周囲を明るく照らすひとだ。

あとショパンのピアノ独奏曲「バラード第1番」が静かに流れ、主役二人がデュエット・ダンスのする場面もしみじみ感銘を受けた。客席のあちらこちらからすすり泣き、嗚咽の声が聞こえてきたのもむべなるかな。

今回は芝居もショーも大当たり、満塁ホームランである。必見。

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ネトウヨって何?

東京新聞は2014年11月27日に「首相はネトウヨだった!?」という記事を掲載した。「ヘイトに加担」という副題も。大学生が小4になりすましたサイトを安倍首相がフェイスブックで「最も卑劣な行為」と批判した件に関する記事である。また12月には衆議院議員選挙の結果を受け、同紙に「ネトウヨの星 次世代なぜ激減」という記事も載った(→こちら)。 ところで、「ネトウヨ(ネット右翼)」って、その実態は何?

右翼の定義として、辞書には「《フランス革命当時、議会で議長席から見て右方に穏和派のジロンド派が席を占めていたところから》保守的または国粋的な思想、立場の一派。また、その者」とある。

一方、左翼は「《フランス革命当時、議会で議長席から見て左方に急進派のジャコバン派がいたことから》社会主義・共産主義・無政府主義などの革新的な思想。また、そのような立場の人・団体」とある。

日本においては大雑把に次のように分類出来るだろう。

  • 右翼-天皇を崇拝し、天皇制を是とする人々(詳しくは産経新聞「国民の憲法」を参照のこと→こちら)。外国を排斥したい、日本は日本らしく(クール・ジャパン万歳!)という考え方。家父長主義、父権主義。憲法9条を改正し、日本は強い軍隊を持つべきだと主張。原発推進派。
  • 左翼ー社会主義・共産主義革命に共感する人々。当然、天皇制に対しては否定的。ゆえに「日の丸」「君が代」を憎む。憲法改正には断固反対。平和主義者。自らを「市民」と語りたがる(プロ市民)。反原発派。

奇妙なのは、本来「右」「左」とは無関係な筈の価値観、日本国憲法改正の是非とか原子力エネルギーの是非で両者の思想が真っ二つに分かれていることである。ここが世界から観た日本の右翼/左翼の特殊性である。つまり奇形・異端なのだ。

そもそも右翼は保守派であり、左翼は改革・革命を志しているのだから前者が憲法堅持、後者が改正論者であるべきだろう。この齟齬の原因は日本国憲法の成り立ちに端を発する。我が国の憲法はGHQ支配下のもと、連合国にとって都合のいい内容として書かれた。マッカーサー草案(GHQ草案)の原文は英語であり、それが日本語に翻訳されている。だから右の人たちは自主憲法制定を目指し、左派は軍国主義(治安維持法、特高警察)再現の悪夢を恐れ(当時共産党員は弾圧され、多くが命を落とした。例えば「蟹工船」の著者・小林多喜二)、憲法9条改正阻止に必死になっているわけだ。しかし考えてみれば彼らが大嫌いな筈のアメリカが草案を書いた我が国の憲法を、左翼が守ろうとしている姿は滑稽ですらある。正に日本独自の特殊事情、「ねじれ現象」である。

そもそも憲法改正=9条改正ではないし、仮に日本が正式な防衛軍を持ったとして、それは果たして「右翼化」なのだろうか?軍隊を有する国が右翼国家ならば、世界の99%がそうなってしまう。北朝鮮も中国も、そして韓国も。無茶苦茶な話だ。「軍隊を有すること」=「侵略戦争を再び起こすこと」を意味しない。スイスみたいに永世中立国として生きる道もある。

日本のマスメディアに関しては、全国紙(読売・朝日・毎日・産経・日経)のうち、最も右なのが産経新聞でその次が読売、逆に最も左なのが朝日新聞である(地方紙では東京新聞など)。朝日が左翼である根拠は以下のとおり。

  • 事実とは異なるいわるゆる「従軍慰安婦問題」を1991年以降繰り返し記事にし、その誤報について32年間訂正も謝罪もせず、日本の国益を損ない続けた。
  • 「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」(いわゆる「国旗国歌条例」)に反対する立場をとった。つまり「日の丸」「君が代」が大嫌い。条例案を推進した橋下徹知事憎しのあまり、系列会社の週刊朝日は暴走し「ハシシタ・奴の本性」という知事の出自に関する差別的記事を掲載。後に謝罪、社長は引責辞任に追い込まれた。
  • 日本国憲法改正に反対の立場を取る。
  • 原子力発電所の再稼働には反対である。

「国旗国歌条例」や憲法改正、原発再稼働に反対という点で、毎日新聞社も左寄りだと言えるだろう。

では右翼はどうして原発推進派なのか?その理由は福島原発事故で白日の下に晒された。3・11の後、読売新聞は社説で原発をなくしてはいけない理由として「プルトニウム保持」の必要性を掲げた。万が一他国に戦争を仕掛けられた場合、速やかに核兵器を作れるようプルトニウムを我が国は持っていないといけない。だから安全保障のために原発は必要であり、「プルトニウムは潜在的な核抑止力」だというのだ。しかし考えてみれば全く非現実的な話である。非核三原則・憲法9条を無視して、そんなに直ぐに原爆・水爆を作れる筈がないではないか?ナンセンスとしか言いようがない。

では朝日新聞グループが目の敵にしている橋下徹・大阪府知事は果たして右翼なのだろうか?僕は全く違うと考えている。橋下氏が左翼や日教組が嫌いなのはその言動から明らかだ。しかし、だからといってアンチ左翼=右翼ではない。「国旗国歌条例」は教育現場から日教組を排除するための、いわば踏絵として導入されたというのが僕の見解である。橋下氏にとって天皇制は関心事ではなく、彼が天皇について語っているのは聞いたこともない。それに彼は”原発フェード・アウト”を唱える脱原発派である。右であろう筈がない。その点を多くの人々は誤解している。そもそも公務員は公僕である。国旗や国歌に対して敬意を払うのはあたりまえのこと。それをしなくていいと考える人がいること自体が異常だ。嫌なら公務員を辞めて民間で働きなさい。

現在の日本では「愛国心」を語ると、即座に「右翼」のレッテルを貼られてしまう。ある意味タブーになっていると言ってもいい。それは左翼ジャーナリズムが国旗と国歌(そしてそれらが象徴するもの)を憎んでいるからだ(ネガティヴ・キャンペーン)。しかし故郷を、祖国を愛するというのは人間性の基本中の基本ではないだろうか?例えば貴方はアメリカ合衆国のパレードで星条旗を振っている人たちを指さして「この右翼めが!」と罵りますか?馬鹿げている。

2015年1月現在、日本共産党と社会民主党(社民党)の政党支持率は合わせて3.6%である。つまり日本の左翼支持者は4%程度と考えられる。では左翼運動が最も華やかだった日米安保闘争から学生運動の最盛期に至る1960年-1970年代前半はどうだったかというと、日本共産党と社会党の支持率は 合わせて20-30%で推移していた(資料は→こちら)。その後、連合赤軍による浅間山荘事件が1972年にあり、それを契機に日本人の左翼に対する幻影・夢想が一気に冷めた。さらに1991年にソビエト連邦が崩壊、2002年に北朝鮮が日本人拉致を公式に認め被害者たちが帰国。こうして日本の左翼支持者は急速に減っていった。

左翼が4%しかいないマイナーな存在、絶滅危惧種となった今、右翼も多く見積もって10%未満に収まるよう定義付けするべきだろう。もし非左翼=右翼とするなら、日本国民の90%以上が右翼になってしまい、バランスが取れない。そんな乱暴な分け方は無意味である。つまり右翼も左翼もごく少数であり、大半は中道、穏健派であるというのが僕の考えだ。米ソ冷戦時代ならともかく、右か左で世界を語れる時代はとうの昔に終わったのである。

さて、「ネトウヨ」「ネット右翼」とはなんだろう?Wikipediaには「インターネットの電子掲示板上などで、右翼的、保守的、国粋主義的な意見を発表する人たちを意味する」とある。しかし論者によって意味するところが異なり、定義は極めて曖昧である

大阪大学准教授の辻大介がネットユーザー998人を対象におこなった調査では、以下の項目全てに該当する者を「ネット右翼」と定義した。

  • 「韓国」「中国」いずれにも親しみを感じない
  • 靖国公式参拝・憲法改正等に賛成
  • 政治・社会問題についてネット上で書きこみや議論をした

国粋・排他主義者を「右翼」とするのは分かる。中国は共産主義国家だから当然親しみを感じないだろう。しかし韓国を名指しするのは何故?だって同じ民主主義国家じゃないか。「韓国」を入れるのなら当然「アメリカ」や他のアジア諸国も含まれるべきであろう。ここにも日本の特殊事情が垣間見られる。

戦後70年が経過した。しかし未だに中国は「南京大虐殺」を、韓国は「従軍慰安婦」を言い募り、延々と日本に対して謝罪を求めてくる。彼らは決して許さない。これは外交で常に優位に立とうとする政治的駆け引きであり、ナショナリズムの発露である。日本の左翼ジャーナリズムもそれに同調し、「南京大虐殺」や「従軍慰安婦」で日本は反省するべきだと主張し続けてきた(自虐史観)。いや、むしろ外国を煽ってきた彼らこそ元凶であるとも言える。そういったやり口に日本人の多くは嫌悪感を抱いている。でもその感情って右翼なの??変だと思いませんか。つまり中国や韓国に対して悪いイメージを持つことに対し、「右翼」「ヘイト・スピーチ」という負のレッテルを貼るのは左翼ジャーナリズムの常套手段、プロパガンダなのである。そんな手口に安易に乗るべきではない。

ネトウヨとは定義が曖昧で実態のない、左翼ジャーナリズムが創りだした幻影である。本物の「右翼」は「左翼」同様、ごく少数派なのである。

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中国ノワール「薄氷の殺人」

評価:B+

Haku

ベルリン国際映画祭で「グランド・ブタペスト・ホテル」(審査員特別賞)や「6才のボクが、大人になるまで。」(監督賞)を抑え、金熊賞(グランプリ)&銀熊賞(主演男優賞)を受賞。中国/香港の合作。映画公式サイトはこちら

いわゆるフィルム・ノワール(虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画)である。韓国にはポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」という大傑作があり、香港ノワールには後にハリウッドでリメイクされアカデミー作品賞・監督賞まで受賞した「無間道(インファナル・アフェア→ハリウッド版「ディパーテッド」)がある。しかし僕が知るかぎり、中国ノワールって初めてじゃないだろうか?

ファム・ファタールが登場し、プロット自体はレイモンド・チャンドラー時代からのパターン(「さらば愛しき女よ」など)を踏襲しているので、驚きは全くない。

しかし本作の主眼は物語にはない。夜の野外スケート場とかダンス・ホールの場面(ベルナルド・ベルトルッチ監督の「暗殺の森」や「ラスト・タンゴ・イン・パリ」を彷彿とさせる!)、ラストシーンの花火など映像が魅惑的。

グイ・ルンメイは影のある薄幸の女という雰囲気を巧みに醸し出している。監督/脚本のディアオ・イーナンは新人だが、大した力量だ。今後に期待したい。

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映画「ビッグ・アイズ」

評価:A

公式サイトはこちら

Big_eyes

驚くべき実話である。事実は小説よりも奇なり。これ、ティム・バートン監督の最高傑作じゃなかろうか?

主人公はドナルド&マーガレット・キーン夫妻。夫が画家として一世風靡するが、実際に書いていたのは妻だったというゴースト物語。どうしても佐村河内守と新垣隆氏の共犯関係を思い出さずにはいられない。両者はよく似ている。才能はあるが寡黙で自分を売り出すことが苦手な芸術家と、中身は空っぽだけれど口八丁でプロモーションが得意な輩。人種は違えど、詐欺師の性格というのは世界共通なんだなと得心が行った。

タランティーノの映画で2度アカデミー賞を受賞しているクリストフ・ヴァルツと5回ノミネートされたことがあるエイミー・アダムスが夫婦を演じる。さすがふたりとも名優なので申し分ない。

ティム・バートンの盟友ダニー・エルフマンの音楽は今回フツーだった。

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