鈴木秀美/OLCのモーツァルト(グラン・パルティータ&ミサ曲ハ短調)
1月17日(土)鈴木秀美/オーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)をいずみホールで聴いた。このコンビが関西にやって来るのは実に7年半ぶりである!
- 初披露!オーケストラ・リベラ・クラシカのベートーヴェン(2007年)
鈴木雅明・秀美兄弟は神戸市出身だが現在は東京を中心に音楽活動をしており、もう少し関西音楽文化の成熟に貢献してほしいとここで苦言を呈しておく(バッハ・コレギウム・ジャパンの定期演奏会@神戸松蔭女子学院大学チャペルだけでは物足りない)。
今回はオール・モーツァルト・プログラムで、
- セレナード 第10番「グラン・パルティータ」
- ミサ曲 ハ短調 K.427
合唱は今回新たにプロの声楽家で結成されたコーロ・リベロ・クラシコ。OLCも同様だが、バッハ・コレギウム・ジャパンと兼任している人が多いように見受けられた。
「グラン・パルティータ」は13管楽器(うちコントラバス1)のためのセレナードであるが、古楽器ということもあり途中でお折れ曲がったバセットホルン(クラリネット属の木管楽器)や、ホルンもピストンのないナチュラル管が使用された。以前同曲をモダン楽器で聴いたことがあるが、古楽器は高いアンサンブル精度を保つのが難しい印象を受けた。
日本は「弦の国」と言われ弦楽奏者の質が高いが、管楽器では欧米諸国の後塵を拝している。OLCも弦楽奏者は日本人のみだが管楽器はその多くを外国人に頼っている。「グラン・パルティータ」は4人が外国人で、ホルンパートの2人の日本女性は音に芯がなく頼りなかった。クラリネット・トップはNHK交響楽団や、なにわ《オーケストラル》ウィンズで活躍する山根孝司。さすがの名手・山根氏も手強い相手に悪戦苦闘していた。
古楽器の鄙びた音色は心が落ち着いて大好きだが、テクニック的には些か残念な演奏だった。
ミサ曲はハ短調という調性だが、例えばト短調の交響曲(25,40番)のような悲劇性はなく、2曲目グローリアからハ長調に転じ、どちらかというとむしろ明るい。本作はコンスタンツェとの婚礼の記念として作曲され、初演のソプラノは新妻が歌ったという。そういう沸き立つ歓び、幸福感溢れる作品であった。
鈴木の指揮は冒頭キリエから鋭く開始され、清新な演奏。合唱には透明感があり、特に弱音の美しさは筆舌に尽くしがたい。改めて人の声は世界でもっとも美しい楽器だなぁと想った。心洗われる体験であった。
1月17日は阪神淡路大震災から丁度20年という特別な日であり、鈴木秀美はきっとアンコールをするだろうし、それならこの曲しかない!と確信していたモーツァルトの最高傑作、アヴェ・ヴェルム・コルプスが最後に歌われた。
鈴木&オーケストラ・リベラ・クラシカのみなさん、次は7年も間を空けず近いうちにまた来てくださいね。そしてプログラムは十八番のC.P.E.バッハ&ハイドンで是非。
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