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2014年12月15日 (月)

キーワードは”ブロンド”!〜映画「ゴーン・ガール」

評価:B+

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キャメラがロザムンド・パイクのブロンド(金髪)を大写しにする映画冒頭部を観て、瞬時に「エッ、これってヒッチコックへのオマージュ?」と想った。そしてその後、僕の直感を裏付けるように「めまい」や「サイコ」を彷彿とさせるシーンが矢継ぎ早に登場した。

アルフレッド・ヒッチコックはブロンドの美女に固執する映画監督だった。それは偏執狂と言っても過言ではないものだった。「鳥」で主演女優ティッピ・ヘドレン(メラニー・グリフィスの母)を執拗に襲う鳥たちはヒッチコックの性的願望/衝動を具現化したものと解釈出来る。嘴(くちばし)が何を象徴しているかは火を見るよりも明らかだ。

Birds

「鳥」「マーニー」で一躍スターになったティッピにヒッチは性的関係を求めた。しかし彼女は拒絶した(「マーニー」に出演した翌年、ノエル・マーシャルと結婚)。ヒッチは「私の力を持ってすれば、君をハリウッドのスタジオから締め出すことなんか簡単なんだよ」と言ったという。その後ティッピはまともな役に恵まれず、消えていった(=ゴーン・ガール)。

注意!!以下、ネタバレあり。いや、そうしないと到底この映画は語れない。


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「ゴーン・ガール」と「サイコ」の共通点は以下の通り。

  • ロザムンド・パイクが車を運転する場面は「サイコ」で会社の金を横領したジャネット・リーが車で逃走するそれを彷彿とさせる。
  • 両者のヒロインは逃走中に宿泊したモーテルで予期せぬ犯罪に巻き込まれる。
  • 殺人の凶器は刃物。
  • 「ゴーン・ガール」にはそのものズバリのシャワー・シーンが登場し、ご丁寧にも排水口にが流れる様子を大写しにするカットまである。

「ゴーン・ガール」と「めまい」のプロットの相似については、

  • 死んだ筈のブロンド美女がふたたび男の前に現れる。
  • 映画中盤で(女の回想として)事件の真相が明らかにされる構成。
  • 髪の毛の色を変え、みすぼらしい服装をしたロザムンド・パイクに大富豪役のニール・パトリック・ハリスが洋服と染毛剤を渡し、「昔の君に戻ってくれ!」と言う場面は「めまい」でジェームズ・スチュワートがキム・ノヴァクに対してしたことと全く同じ。

Vertigo

「ゴーン・ガール」は確かに面白かったし、先の読めないストーリーで最後の大どんでん返しにも驚かされたけれど、ちょっとヒッチを意識し過ぎで手放しで賞賛は出来ない。デヴィッド・フィンチャー監督作品なら僕は「セブン」「ゾディアック」「ソーシャル・ネットワーク」「ドラゴン・タトゥーの女」の方が好きだな。

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受信: 2014年12月18日 (木) 11時58分

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