キーワードは”ブロンド”!〜映画「ゴーン・ガール」
評価:B+
公式サイトはこちら。
キャメラがロザムンド・パイクのブロンド(金髪)を大写しにする映画冒頭部を観て、瞬時に「エッ、これってヒッチコックへのオマージュ?」と想った。そしてその後、僕の直感を裏付けるように「めまい」や「サイコ」を彷彿とさせるシーンが矢継ぎ早に登場した。
アルフレッド・ヒッチコックはブロンドの美女に固執する映画監督だった。それは偏執狂と言っても過言ではないものだった。「鳥」で主演女優ティッピ・ヘドレン(メラニー・グリフィスの母)を執拗に襲う鳥たちはヒッチコックの性的願望/衝動を具現化したものと解釈出来る。嘴(くちばし)が何を象徴しているかは火を見るよりも明らかだ。
「鳥」「マーニー」で一躍スターになったティッピにヒッチは性的関係を求めた。しかし彼女は拒絶した(「マーニー」に出演した翌年、ノエル・マーシャルと結婚)。ヒッチは「私の力を持ってすれば、君をハリウッドのスタジオから締め出すことなんか簡単なんだよ」と言ったという。その後ティッピはまともな役に恵まれず、消えていった(=ゴーン・ガール)。
注意!!以下、ネタバレあり。いや、そうしないと到底この映画は語れない。
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「ゴーン・ガール」と「サイコ」の共通点は以下の通り。
- ロザムンド・パイクが車を運転する場面は「サイコ」で会社の金を横領したジャネット・リーが車で逃走するそれを彷彿とさせる。
- 両者のヒロインは逃走中に宿泊したモーテルで予期せぬ犯罪に巻き込まれる。
- 殺人の凶器は刃物。
- 「ゴーン・ガール」にはそのものズバリのシャワー・シーンが登場し、ご丁寧にも排水口に血が流れる様子を大写しにするカットまである。
「ゴーン・ガール」と「めまい」のプロットの相似については、
- 死んだ筈のブロンド美女がふたたび男の前に現れる。
- 映画中盤で(女の回想として)事件の真相が明らかにされる構成。
- 髪の毛の色を変え、みすぼらしい服装をしたロザムンド・パイクに大富豪役のニール・パトリック・ハリスが洋服と染毛剤を渡し、「昔の君に戻ってくれ!」と言う場面は「めまい」でジェームズ・スチュワートがキム・ノヴァクに対してしたことと全く同じ。
「ゴーン・ガール」は確かに面白かったし、先の読めないストーリーで最後の大どんでん返しにも驚かされたけれど、ちょっとヒッチを意識し過ぎで手放しで賞賛は出来ない。デヴィッド・フィンチャー監督作品なら僕は「セブン」「ゾディアック」「ソーシャル・ネットワーク」「ドラゴン・タトゥーの女」の方が好きだな。
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