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2014年12月 6日 (土)

ヴォーチェ弦楽四重奏団 + 萩原麻未

12月3日(水)ザ・フェニックスホールへ。

ヴォーチェ弦楽四重奏団はパリ国立高等音楽院の卒業生により2004年に結成された。日本人として初めてジュネーヴ国際コンクールピアノ部門で優勝した萩原麻未もパリ国立高等音楽院を卒業(パリ在住)。気の知れた仲間の共演というわけ。

  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第4番
  • ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第2番「ないしょの手紙」
  • ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲 第2番 作品81
  • 山田耕筰:赤とんぼ(アンコール)

短調なのに柔らかく口当たりの良い、陽だまりのベートーヴェン。アルバン・ベルク弦楽四重奏団に代表されるような(冬の)厳しさとか鋭さとは対照的。何だか緩い。考えてみればフランスのオーケストラが演奏したベートーヴェンの交響曲の名演なんて皆無だし、フランス人によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲やピアノ・ソナタも然り。つまり彼らにベートーヴェンの音楽は理解不能なのじゃないだろうか?逆にドイツ人演奏家によるフランス印象派やフォーレの名演も数少ないわけで、両者は相容れない関係と言えるだろう。

ベートーヴェンを聴きながら、ここに来たことを後悔し始めていた。ところが!ヤナーチェクでは打って変わって大変な名演でびっくりした。ヴィオラが渋くて枯れた味わい。親密なひそひそ話を囁くよう。ヤナーチェクは63歳の時に25歳の人妻カミラ・シュテスロヴァーと出会い、不倫関係となった。彼女に送った恋文は722通に及び、1日3通書いたこともあるという。その想いが「ないしょの手紙」を生んだ。そう、これは「不倫音楽」なのだ。不倫は文化だ(by 石田純一)!

第1・第2ヴァイオリンがカミラの声を、ヴィオラ及びチェロが作曲家の肉声を代弁しているのではないか?と感じられた。艶めかしく濡れた感触。隠微なエロス。一転、民族舞曲的な終楽章は動的で狂気を孕む。

萩原が加わったドボルザークはピアノが華やかで雄弁。第2楽章ドゥムカは磨かれた音の一粒ゝが煌めく。第3楽章フリアントは透明感があり、繊細かつ流麗。パーフェクトな一体感だった。

終わり良ければ全て良し。ヴォーチェ弦楽四重奏団は現代物ほどいい。

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