ワディム・レーピンと仲間たち/室内楽の夕べ
12月1日(月)ザ・シンフォニーホールへ。
ロシア出身のワディム・レーピン(ヴァイオリン)、アレクサンドル・クニャーゼフ(チェロ)、アンドレイ・コロベイニコフ(ピアノ)で、
- ラフマニノフ:悲しみの三重奏曲 第1番
- チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ
(チェロとピアノ編) - ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
- ラヴェル:ツィガーヌ
- ポンセ:エストレリータ(第1部アンコール)
- チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」
- スクリャービン:エチュード OP.42-5
- バッハ:無伴奏チェロ組曲 第2番より「サラバンド」
- クライスラー:中国の太鼓(以上3曲、第2部アンコール)
なんとアンコールが前半・後半合わせて4曲。ピアノ独奏、チェロ独奏、ヴァイオリン&ピアノと、組み合わせも多岐にわたり、開演19時ー終演21時40分の長丁場!サービス精神旺盛な若者たちだ(レーピンは今年43歳だけれど)。
ラフマニノフでは誰もいないシベリアの大雪原に、風だけが吹き荒ぶ情景が頭に浮かんだ。茫洋とした寂寞感。最後は「偉大な芸術家の思い出に」を彷彿とさせる葬送行進曲の歩みとなる。
アンダンテ・カンタービレは耳が腐るくらい聴いてきたが、今回初めてロシア民謡「ヴォルガの舟歌」の木霊(エコー)が曲中に忍ばされていることを発見!そこで調べてみると案の定、チャイコフスキーはウクライナの労働歌を基に作曲したという。なお、トルストイがこれを聴いて号泣したという逸話も残っており、農民を愛した小説家らしいなと想った(ヴォルガの舟歌は舟曳き人夫たちが口ずさんでいた歌をバラキエフが採譜したもので、その多くは貧農小作人や放浪者たちであったという)。
ドビュッシーのソナタでレーピンはノン・ヴィブラートを多用。しかし艶っぽい雰囲気を巧みに醸し出す。ツィガーヌも妖艶。深く濃密な音で肩の力が抜けた柔らかい弾き方。
チャイコフスキーのピアノ・トリオはヴァイオリンが禁欲的で辛口。抑制が効いている。一方のチェロは感情が迸り、よく歌う。対照的な両者は相反するひとりの感情を表現しているのではないだろうか?ピアノが亡き友人ニコライ・ルビンシテインの幻の役割を担い(コロコロと指がよく転がり、達者な演奏)、チェロが作曲家の「躁(そう)」の部分、ヴァイオリンが「鬱(うつ)」の部分を担当、少なくとも今回の演奏はそういう解釈だと僕には感じられた。因みにチャイコフスキーが躁うつ病であったことは余りにも有名である。
豊かな実りのある演奏会であった。
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