映画「寄生獣」
評価:A
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金城武主演、山崎貴監督の「リターナー」(2002年)は映画館で観て頭を抱えた。酷すぎる。とにかくCG技術がお粗末。とても日本の特撮は見れたもんじゃないと絶望した。しかし「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)には瞠目した。そこには昭和33年の東京が見事に再現されていたのだ。今年公開された「STAND BY ME ドラえもん」には「日本のCGアニメはここまで来たか!これならハリウッド(ピクサー&ディズニー)と互角に戦える」と感動すら覚えた。
そこで「寄生獣」である。いや、大したものだ。ヌメッとした湿気(←コンピューターでこれを醸しだすのは難しい)といい、CGの質感は申し分ない。そもそもこの漫画は「ロード・オブ・ザ・リング」の製作で名高いハリウッドのニュー・ライン・シネマが2005年に映画化権を獲得、「呪怨」の清水崇監督と交渉を進めていた。ところが2008年にこの会社はワーナー・ブラザースに吸収合併され、権利が日本に戻ってきたのである。以前から「寄生獣」を撮りたいと狙っていた山崎監督の意欲は凄まじく、すこぶる面白い作品に仕上がった。
以前から山崎監督作品は「泣かせ」に走り過ぎだという批判が根強い。「ALWAYS 三丁目の夕日」だって「STAND BY ME ドラえもん」もそう。本作も情に流されてウェットな側面は確かにある。ただ母性は「寄生獣」の重要なテーマだし、下町情緒溢れる風景が「三丁目の夕日」に繋がり(つまり昭和を感じさせ)、僕は悪くないと想った。だってここは紛れもなく日本であり、僕たちは日本人なのだから。
それにしても自己のアイデンティティを探し求めて彷徨う寄生獣たちの姿は、どことなく映画「ブレードランナー」のレプリカントを彷彿とさせる。ある意味、哲学的/思索的作品と言えるだろう。
あと特筆すべきは佐藤直紀の音楽がすごく良かった。「ALWAYS 三丁目の夕日」の音楽はジェリー・ゴールドスミス作曲「ルディ/涙のウイニング・ラン」のパクリとしか想えず、閉口したのだけれど。
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