テーマは「港」〜波止場から宇宙戦艦ヤマトまで/大阪市音楽団 定期
10月28日(火)フェスティバルホールへ。
宮川彬良/大阪市音楽団の定期演奏会。
- ルグラン(宮川彬良編):映画「ロシュフォールの恋人たち」
から”キャラバンの到着とマクサンスの歌” - L.バーンスタイン(J.ボコック編):映画「波止場」からの交響組曲
- 宮川泰/宮川彬良:「宇宙戦艦ヤマト2199」からの音楽(全14曲)
- 宮川彬良:開眼序曲
- 宮川彬良:生業(ナリワイ)III. 易(Fortune-telling)〜生業(アンコール)
大阪市から見捨てられた市音は長らく本拠地としていた大阪城公園を追われ、南港に居を構えた。給料がガクッと減って何人かが去り(楽器を置き大阪市の職員として残った者もいた)、9名の新入団員を迎えた。大阪市に属した最後の6−7年は人件費の問題でオーディションが一切行われなかった。僕は高齢化に伴う実力の低下を懸念していた。しかし新生市音を聴くとアンサンブルが引き締まり、グッと上手くなった。民営化が功を奏した側面だろう。
今回はそうした経緯もあり、「港」を題材にした音楽がプログラムを彩った。
「ロシュフォールの恋人たち」(1967)はミシェル・ルグランの作品中、僕が一番好きな音楽だ。ロシュフォールは港町で、同じジャック・ドゥミ監督の「シェルブールの雨傘」(1964)も「ローラ」(1961)も港町が舞台となる。港町三部作と名付けることも出来るだろう。ちなみに長編処女作「ローラ」で描かれるナントはドゥミの生まれ故郷である。
これぞルグラン・ジャズ!リズムはノリノリ、ハープとフルート2本の箇所も素敵で彬良のアレンジ最高。幸せな気持ちになった。特に転調を繰り返す終盤は快感で陶酔の境地に至った。
レナード・バーンスタインが書いた唯一の映画音楽「波止場」(「ウエストサイド物語」は元々ブロードウェイ作品)を初めて聴いたのはいつだったろう?とコンサート中に考えて、ふと想い出した。そう、あれはスタンリー・ブラック指揮/ロンドン・フェスティバルO.の演奏による「フィルム・スペクタキュラー Vol.2 」というLPレコードだったから僕が中学生か高校生の時である。一連の「フィルム・スペクタキュラー」は録音もよく、名演揃いで随分お世話になった。エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトの「シー・ホーク」と出会い、脳天をぶち抜かれるような衝撃を受けたのもこのシリーズだった。閑話休題。
パンチの効いた演奏で厚みのあるブラスの響きが何とも魅力的。そしてホルン・ソロが心に滲みる。
このコンビで「宇宙戦艦ヤマト」を聴くのは5回目くらいなのだけれど、今までで一番曲数が多いことと、今回は初めてヴォーカル付き(男声5人、女声1人)というのが白眉。特に彬良が新たに作曲した「ガミラス国家」がカッケー!痺れた。ただソプラノ(田上知穂)のヴィブラートが掛かり過ぎで萎えた。エンニオ・モリコーネの音楽におけるエッダ・デッロッソを彷彿とさせるスキャット(ヴォーカリーズ)は澄んだノン・ヴィブラートこそ相応しい。マツケンサンバを彷彿とさせる「コスモタイガー(ワンダバ・ヴァージョン)」とか、ミクロス・ローザ作曲「ベン・ハー」序曲そっくりのコード進行を持つ「艦隊集結(ベン・ハー・ヤマト)」とか、何度聴いても愉しい。
「開眼序曲」は日本臨床眼科学会からの委嘱という異色作(オーケストラ版は2001年京都初演)。清浄でイノセントな響き。ちょっとコープランド風で美しい楽曲。
アンコール1曲めはパーカッションがノリノリ。そして「歌手は帰りました」と彬良が告げて観客が「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌を大合唱してお開き。大いに盛り上がった夜だった。
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