アカデミー作品賞・監督賞最有力候補/映画「6才のボクが、大人になるまで。」
評価:A
映画公式サイトはこちら。非常に分かりやすい(説明的な)邦題だが、原題はシンプルにBoyhood(少年時代)。
リチャード・リンクレイター監督にはBefore Sunrise(1995), Before Sunset(2004), Before Midnight(2013)という3部作があり、イーサン・ホークとジュリー・デルピー演じる男女の18年をリアル・タイムで描いている。Boyhoodはその手法を発展させた形で4人の役者が12年を費やして一つの家族を演じ切った。このクレイジーな(前代未聞の)企画にもイーサン・ホークが参加している。
あと僕が感じたのは、フランソワ・トリュフォー監督の「大人は判ってくれない」(1959)から始まるアントワーヌ・ドワネルの冒険 五部作(「二十歳の恋(アントワーヌとコレット)」'62、「夜霧の恋人たち」'68、「家庭」'70、「逃げ去る恋」'79 ←全てジャン=ピエール・レオが演じた)を映画一本で試みた作品とも言えるだろう。
確かな手応えのある味わい深い映画だ。上映時間2時間45分の長尺だが、一瞬たりとも飽きることはなかった。悠久の時の流れ、生きることの重さをしっかり堪能した。
スピルバーグの「E.T.」(1982)では母親が娘(ドリュー・バリモア)の就寝前に「ピーター・パン」を読み聞かせる(ティンカーベルが生き返る)場面があった。本作で少年がベッドで母親に読んでもらうのは「ハリー・ポッター」(女子トイレで嘆きのマートルが登場する場面)。時代の移り変わりを感じた。
ただ今年のベストワンか?と問われたら答えは否である。僕がアカデミー会員なら(多分)これには投票しない。「ゼロ・グラビティ」を観た時のような、脳天にガツン!と来る衝撃がなかったということだ。
本作以外にも本年度アカデミー賞の呼び声が高いクリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」やデヴィッド・フィンチャー監督「ゴーン・ガール」などがこれから矢継ぎ早に公開されるので、今から愉しみだ。有力候補が軒並み授賞式前に日本で観られるなんて希なことだからね、嬉しい。
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