映画「ジャージー・ボーイズ」
評価:B+
トニー賞で作品賞を受賞した(いわゆるジュークボックス・)ミュージカルの映画化である。公式サイトはこちら。
ニュージャージーの貧しい若者たちが結成した実在のグループ ”ザ・フォー・シーズンズ” の栄光と挫折。その光と影を描く。伝説的リード・ボーカル、フランキー・ヴァリを演じるのは同役でトニー賞を受賞したジョン・ロイド・ヤング。その他にも舞台で演じた役者たちが何人か映画版に起用されている。脚本も舞台版と同じコンビが執筆。監督はクリント・イーストウッド。御年84歳である。
イーストウッドがブロードウェイ・ミュージカル!?と意外な印象を覚えるが、考えてみれば彼は熱心なジャズ・ファンで自分で作曲もするし、稀代のサックス奏者チャーリー・パーカーの伝記映画「バード」も撮っている。80歳を過ぎても製作意欲が衰えず、どんどん新しいことに挑戦する姿勢には頭が下がる。登場人物たちが突然、カメラに向かって(つまり観客に直接)喋り出す手法も彼の映画では初めてではないだろうか?
2012年、イーストウッドはビヨンセ主演でミュージカル映画「スター誕生」のリメイクを準備していた。しかし撮影直前になりビヨンセの妊娠が発覚、企画は頓挫した。「ジャージー・ボーイズ」はその遺恨を晴らす意味もあったのだろう。
観ていて既視感を覚えた。仲間割れして崩壊していくプロセスはミュージカル「ドリームガールズ」との共通点が多い。「ドリームガールズ」はダイアナ・ロスらがメンバーだった女性ボーカル・グループ ”ザ・スプリームス” をモデルにしている。ザ・ビートルズもそうだが、欧米のこうしたグループは多かれ少なかれ似たような軌跡をたどるのだなと感じた。我が国で少ないのは和を尊ぶ民族だからだろうか?
しかし最後まで観ると「ドリームガールズ」とは異なる後味がある。それはこの4人が、まるで兄弟のように描かれているからである。駄目なお兄ちゃんにしっかり者の弟。諍いは絶えないがそれでも見捨てられない腐れ縁。そう、ある意味ルキノ・ヴィスコンティ監督のイタリア映画「若者のすべて(原題は『ロッコとその兄弟』)」に近い。ザ・フォー・シーズンズはイタリア系だしね。マフィアも登場するし(クリストファー・ウォーケンの存在感が素晴らしい)彼らは”ファミリー”なのだ。「ゴッドファーザー」的とも言えるだろう。
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