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2014年8月25日 (月)

STAND BY ME ドラえもん

評価:B+

Stand

最初「ドラえもん」を3DCGにすると聞いた時は「アホか!」と一蹴した。紙の上に書いた絵でしか、あの味は出せないと考えたからだ。しかし実際に完成した作品を観てみると意外と違和感がなく、すんなり受け入れられた。

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僕が「ドラえもん」に出会ったのは小学校2年生の時だった。同じクラスだったOくんが「この漫画面白いよ。読んでみる?」と貸してくれたのが発売されたばかりの〈てんとう虫コミックス〉第1巻だった。学校ではなく我が家に持ってきてくれた記憶があるので、多分僕の誕生日会か何かではなかったのだろうか。それから自分のお小遣いで新刊が発売されるたびに購入し、夢中になって読んだ。第6巻に収録された「台風のフー子」や「さようなら、ドラえもん」はポロポロ泣きながら読んだことを今でも鮮明に覚えている。しかし本の売れ域が好調だったために第7巻「帰ってきたドラえもん」に続くことになる。Oくんとは高校が別々になって以降疎遠になったが、彼のお父さんは開業医で、彼自身も国立大学医学部を卒業して医師になったと風の便りに聞いた。

ドラえもんは結局、小学校高学年くらいで読まなくなった。ドラえもん映画も一度も観たことがなくて、今回のSTAND BY MEが初体験となった。

3Dの立体感が素晴らしい。またタケコプターで空高く飛翔したり、未来都市で宙に浮いた車が疾走する場面などスピード感、臨場感があった。

共同監督と脚本を兼務した山崎貴は過去に「ALWAYS 三丁目の夕日」「BALLAD 名もなき恋のうた」「SPACE BATTLESHIP ヤマト」「friends もののけ島のナキ」などを監督している。だからSTAND BY MEという英語がくっついているわけだ。しかしこう並べてみてみると、マンガやアニメが原作の映画が多いね。次回作は「寄生獣」だし。

山崎の映画は「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズもそうだけれど、《泣かせ》に走り過ぎでウンザリ/ゲンナリするという批判の声も少なくない(「おぞましい」と酷評する人もいる)。確かにあざといのだが、僕はそれが嫌じゃなかった。同世代の共感とでも言うか彼が本作に込めた想い(ドラえもんへの愛情)が僕には理解出来るし、素直に涙を流すことが出来た。やっぱり幼少期にドラえもんと一緒に時間を過ごした想い出があるからで、世代や体験が異なると、この映画に対する印象もグッと違ってくるのかもしれない。それは致し方のないことだ。つまり僕はこの映画が大好きだし感動したけれど、貴方はそうじゃないかもしれない。普遍化することは無理。そういうことだ。映画館でも泣いている大人が多かったけれど(僕のすぐ横にひとり座リ観ていた40歳くらいの男性は後半ずっと嗚咽していたのでちょっと引いた……)、ある中学生の女の子は上映が終了し明るくなると「全然泣けなかった。期待したのと違っていた」と両親に訴えていた。

宮﨑駿監督「となりのトトロ」でサツキとメイがまっくろくろすけ(ススワタリ)が出たと大騒ぎしていると、引越を手伝いに来たカンタのおばあちゃんが「小ちぇー頃には、わしにも見えたが…そうか、あんたらにも見えたんけぇ。」と言う場面がある。

そうなのだ。小学生の頃、僕にはドラえもんが確かに見えたし、彼は大切な友達だった。でもいつしか成長してドラえもんにサヨナラを言い、やがて大人になった。そしてドラえもんが見えなくなってしまった。STAND BY MEを通して、僕はそのことを再確認した。

つい先日、「ドラえもんカラー作品集」〈てんとう虫コミックスペシャル〉をAmazon.co.jpで購入し、3歳の息子に読み聞かせた。彼は今、熱心にその本を眺めている。ドラえもんは親子2代にわたり友だちになってくれて、SFの楽しさ、奥深さを教えてくれている。

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