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ミュージカル「レディ・ベス」世界初演!

7月30日(水)梅田芸術劇場へ。

Bess

エリザベス1世(ベス)を主人公にしたミュージカル。実はイギリスの歴史の中で彼女が生きた時代が最も劇的で面白い。だから繰り返し小説や映画の題材になっている。

例えばマーク・トウェインはエリザベスの弟エドワード6世を主人公に小説「王子と乞食」を書いており、エロール・フリンやマーク・レスター主演などで何度も映画化されている。宮廷生活に嫌気をさした王子が平民の格好をして外を歩いたというエピソードは本作でも言及されている。

ベスの父ヘンリー8世が姦通の濡れ衣を着せ、斬首の刑に処した母アン・ブーリンに関しては「1000日のアン」という映画になっている。

エリザベス1世もケイト・ブランシェット主演で映画「エリザベス」(アカデミー賞で作品賞や主演女優賞など7部門にノミネート、メイクアップ賞受賞)やその続編「エリザベス:ゴールデン・エイジ」という物語になっているし、ヘレン・ミレンが主演した「エリザベス1世 〜愛と陰謀の王宮〜」(エミー賞 主演女優賞受賞)も出来が良かった。また即位後300人に及ぶプロテスタントを処刑した姉のメアリーはブラディー・メアリーというカクテル(レシピ:ウォッカ45ml+カット・レモン1/6個+トマト・ジュース適量)になっている。

本公演はダブル・キャストで、僕が観た配役はレディ・ベス:花總まり、ロビン・ブレイク:山崎育三郎、メアリー・チューダー:吉沢梨絵、フェリペ:古川雄大、ロジャー・アスカム(エリザベスの家庭教師):石丸幹二。他に石川 禅、吉野圭吾、和音美桜、涼風真世らが出演。

脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェと作曲:シルヴェスター・リーヴァイは「エリザベート」「モーツァルト!」「レベッカ」「マリー・アントワネット」のコンビ。演出・訳詞は宝塚歌劇団のエース・小池修一郎。

吟遊詩人ロビン・ブレイクは架空の人物。「ロミオとジュリエット」のバルコニー・シーンを彷彿とさせる場面もあり、シェイクスピアのイメージも投影されているようだ。ちなみに映画「恋におちたシェイクスピア」でもエリザベス1世が登場する(演じたジュディ・デンチはアカデミー助演女優賞を受賞)。つまり同時代の人なのだ。

とにかく物語が波瀾万丈なのでワクワク興奮しながら観た。ただし、平民のロビンとやがて女王となるベスが恋に落ちるという設定はいくらなんでも無理がある。ケイト・ブランシェット版「エリザベス」でもベスは王位につくために恋を諦めるのだが、相手は貴族。やっぱりそっちの方がリアリティがあって説得力がある。この点に関してはミュージカル台本に改訂の余地があると想う。しかし「エリザベート」のコンビだから当然音楽のレベルは高いし、八百屋仕立て(傾斜舞台)の盆を回転させて展開される演出はスピーディーで観応えのある作品に仕上がっている。冒頭で中央に宇宙儀(地球を中心に他天体の位置を示すもの)が置かれ、舞台に十二星座の縁取りがあったりするのも面白い。あと死んだアン・ブーリンの亡霊を出すのは名案だし(歌の内容が「モーツァルト!」でヴァルトシュテッテン男爵夫人が歌う「星から降る金」を彷彿とさせた)、メアリーがベスをいじめる場面はまるで「エリザベート」のゾフィー大公妃みたいで可笑しかった(心の中で「もっとやれ、メアリー!」と声援を送った)。

出演者について。僕は常々、日本でコスチューム・プレイを演じさせたら花總まりの右に出る者はいないと書き続けてきたが、今回の花ちゃんも圧巻だった。特に最後の戴冠式の場面では彼女の眩いばかりの神々しさ、威厳に息を呑んだ。僕が初めて彼女を観たのは1998年の宝塚宙組「エリザベート」。あれから16年が経過したが、舞台上の彼女は全く「老い」を感じさせない。驚異である。来年あたり、東宝「エリザベート」の出演を切に希望する。

山崎育三郎吉沢梨絵はさすがの歌の上手さに安心して観ることが出来た。フェリペ役の古川雄大はミュージカル「テニスの王子様」に出演していた過去があり、王子様役がハマり過ぎで感心することしきり。彼の見栄えの良さに女子のハートは鷲掴みにされたことだろう。それから山崎と古川の会話するシーンを観ながら「ロミオがふたりいる!なんてゴージャスなんだろう」と想った。

ミュージカル「エリザベート」は世紀の大傑作だが、未だにロンドンやブロードウェイでの上演は実現していない(英語版も創られているのにもかかわらず)。やはり題材の問題もあるのだろう(どうも英語圏の観客はハプスブルク家に興味がないみたい)。だからこそ今回の「レディ・ベス」なのだろう。作品の内容としては十分そのレベルに達していると想う。さすがに「エリザベート」には敵わないけれど、少なくとも陰惨なだけの「マリー・アントワネット」よりは遥かに上、「モーツァルト!」に匹敵するというのが僕の判断だ(僕は「モーツァルト!」より好き)。再演があれば是非また観たい。そしてキャストとしては花總まりと古川雄大は絶対に外せない。

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コメント

雅哉 様

レディベス。ご覧になったのですね。私はキャストを変え2回観に行きました。

大好きなクンツェ&リーヴァイの作品であることに加え、ミュージカル界を代表する豪華なキャストに、とても期待していました。

初演ということで、作品としてまだまだこなれていない部分はありましたが、曲が素晴らしく、ストーリーも解りやすく、キャラクターが魅力的でそれぞれの見せ場もあり、とても楽しめました。

CDも購入しましたが、ず~っと何れかの曲が頭の中で再生されています。


ベスの花總まりさんは流石でしたね。
平野綾さんは最初は可愛いらしくて歌もいいのですが、最後女王として生きていく決意→戴冠式へのシーンは、まりさんは圧巻でした。

ロビンの山崎育三郎クンは安心して観られました。加藤和樹クンは下手ではないけどこのメンバーに入ると、ちょっと弱いかな。

アスカムは全然違う役作り。個人的に石丸幹二さんのアスカムが良かったです。山口祐一郎さんはアスカムいうよりトートでした(笑)。

フェリペはどちらも良かった。古川雄大クン安定感増しましたね。

メアリーは未来さんかな。どちらも個性がありましたが、未来さんのメアリーは、もうゾフィーでした。

個人的には石川禅さんと吉野圭吾さんの『ベスを消せ』がお気に入り。2人の騙し騙されの歌・台詞のやりとりが最高。小池先生の細かい演出も面白かったです。

時代としても大好きなので、再演に期待します。
何度も再演される作品になるといいですね。

長々と失礼しました。


投稿: *pino* | 2014年8月12日 (火) 15時36分

*pino* さんコメントありがとうございます。

とにかく「レディ・ベス」は楽曲が魅力的ですね。僕は「モーツァルト!」を超えたと想っています。

山口祐一郎の方は観ていないのですが、「やまゆう」は金太郎飴みたいな役者ですよね。何を演じても「やまゆう」でしかない。

再演期待しています。そして今度こそ、ロンドンに上陸できますように!

投稿: 雅哉 | 2014年8月13日 (水) 19時15分

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