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2014年8月20日 (水)

「ミュージック・サプリ」田代万里生 篇

8月1日いずみホールへ。

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田代万里生(テノール)のコンサートを聴く。1984年生まれ。東京芸術大学音楽部声楽科を卒業し、24歳の時「マルグリット」でミュージカル・デビューを果たした。ミュージカルは基本的にマイクを使用するので、生歌でのリサイタルは今回が初めてだそう。ピアノは、テノール歌手だった田代の父の伴奏も務めていたという御邊典一。ちなみに”万里生”はマリオ・デル・モナコから名前をとったそう。

田代が出演した舞台を観劇した感想は下記に書いた。

さて今回のプログラムは、

一部  日本歌曲 日本の花・恋・心

  • 紫陽花【わがうた】より(作詞:北山冬一郎 作曲:團伊玖磨)
  • くちなし【ひとりの対話】より(作詞:高田三郎 作曲:高野喜久雄)
  • サルビア(作詞:堀内幸枝 作曲:中田喜直)
  • 砂山の(作詞:石川啄木 作曲:中村太郎)
  • 初恋(作詞:石川啄木 作曲:越谷達之助)
  • お六娘(作詞:林柳波  作曲:橋本國彦)
  • ひぐらし【わがうた】より(作詞:北山冬一郎 作曲:團伊玖磨)
  • さとうきび畑(作詞 & 作曲:寺島尚彦)
  • 歌曲『あんこまパン』(作詞:林望 作曲:伊藤康英)

     第一楽章  信じてくれないだろうなぁ、
     第二楽章  【材料】
     第三楽章  サンドイッチ用のパンに・・・

第二部  西洋歌曲・カンツォーネ・オペラ・オペレッタ・ミュージカル

  • 妖精の瞳(作曲:ルイージ・デンツァ)
  • 恋する兵士(作曲:エンリコ・カンニオ)
  • カタリ・カタリ(作曲:サルヴァトーレ・カルディッロ)
  • 私のお父さん  オペラ『ジャンニ・スキッキ』より 
    (作曲:ジャコモ・プッチーニ)  
  • ヴィリアの歌    オペレッタ『メリー・ウィドウ』より
    (作曲:フランツ・レハール)
  • メリー・ウィドウ~ピアノメドレー(作曲:フランツ・レハール)
  • Piano (「Memory」Italian ver.)ミュージカル『キャッツ』より 
    (作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー)
  • 音楽に寄せて(作曲:フランツ・シューベルト)    
  • グラナダ(作曲:アウグスティン・ララ)

アンコールは、                        

  • Simpatia (作曲:田代万里生)
  • アメージング・グレイス
    (作詞:ジョン・ニュートン & 岩谷時子 作曲:不明)

客席の9割以上が女性。いずみホールが初めてという人が多いようで、「綺麗なホールねぇ」という感嘆の声をあちらこちらで聞いた。今までにない雰囲気で、男性トイレが空いていたこと!

田代が浴衣姿で登場すると、僕の隣に座っていた女性が連れの友達に「な、可愛いやろ!」と耳打ちしていた。なお彼は「アナと雪の女王」でブレイクした神田沙也加とミュージカル「ファンタスティックス」で共演し、一時期彼女との交際が報道されたこともある。

さすが本格的声楽の勉強をした人だけに声量豊かで張りがあった。また発音がはっきりしていて、ヴィブラートが過剰なクラシック界の歌手と違い、歌詞が聴き取りやすい。言葉を大切にしているな、と感じられた。

「サルビア」の歌詞は

サルビアは赤い花だわ
その花は血の色だわ

という風に女性言葉なのだが、田代が昔聴いた男性歌手は

サルビアは赤い花だぜ

と歌詞を変えていて、すごく違和感があったという(場内爆笑)。彼はそのまま歌った。

「初恋」と「砂山の」は石川啄木の同じ詩を使用した異曲。聴き比べが愉しい。

「お六娘」は浄瑠璃風。村の若い衆が娘にちょっかいをかけるが、振られるというおもろい曲。

團伊玖磨は「ぞうさん」の作曲家だという紹介も。「ひぐらし」は初めて聴いたが、いい曲だね。ちなみに「蜩(ひぐらし)」って秋の季語なんだって。僕はあの物悲しい鳴き声が好きだ。

田代はアンドレ・プレヴィン作曲のオペラ「欲望という名の電車」日本初演でオペラ歌手デビューしたが、その時共演したテノール歌手・経種廉彦(いだねやすひこ)の想い出も語った。彼が経種と初めて出会ったのは父の留学先イタリアを訪ねた8歳の時。スポーツカーに乗って颯爽と現れて、格好良かったという。経種がリサイタルでよく歌っていたのが「さとうきび畑」。そのアレンジが好きで楽譜を探したが見つからなかった。するとなんと今回伴奏を務めた御邊が経種とも仕事をしたことがあって、楽譜を持っているという。それは手書きで未出版だったことが判明した。「ざわわ ざわわ ざわわ」という歌詞がまるで波のように耳に心地よく、自然と涙が流れた。感動的アレンジだった。

「あんこまパン」はサンドイッチ用のパンにバターとあんこ(こしあんに限る)を塗り、マヨネーズ(キューピーに限る)をかけるというレシピを延々と9分間、3楽章に分け歌う、なんともユーモラスな曲。爆笑に次ぐ爆笑の連続技でお腹が痛くなった。これ最高!

「妖精の瞳」のルイージ・デンツァは「フニクリ・フニクラ」の作曲家。「カタリ・カタリ」は稀代のテノール歌手エンリコ・カルーソーのために書かれた。

「私のお父さん」を男性歌手が歌うのは初体験だったが、甘い声に魅了された。

Pianoはサラ・ブライトマンがアルバムにイタリア語で収録したもので、ミュージカル「キャッツ」〜メモリーの歌詞を別の内容に完全に変えたもの。日本語では「静けさ」という意味。

田代が出演したオペレッタ「シューベルトの青春」から「音楽に寄せて」。こちらは日本語で。

自作のピアノ独奏曲Simpatia(共鳴)は久石譲風。久石さんの完成度と比べると聴き劣りするけれど、ピアノの腕前は久石さんより上だった!(ちなみに僕は久石譲コンサートには5回以上足を運んだ)

アメージング・グレイスはピアノ抜きのアカペラで。こちらもさすがに上手かった。

なお田代は9月に開催されるメルビッシュ湖上音楽祭ガラ・コンサートで司会を務めることが決まっているという。

僕は今までアンジェラ・ゲオルギューや森麻季など(美人)女性歌手のリサイタルは聴きに行っていたが、考えてみると男性歌手はフィッシャー=ディースカウ以来かも(25年ぶり!?)。

軽妙な語り口や田代くんの気さくな人柄に魅了されたし、何より凝った選曲が卓越していた。また行きたい。ただ次回はもっともっと、ミュージカルのナンバーを歌って欲しいな。特に貴君が歌う「ファンタスティックス」のTRY TO REMEMBERを是非もう一度聴きたいんだ。

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