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2014年8月10日 (日)

映画「Godzilla ゴジラ」あるいは、伊福部昭とスピルバーグへのオマージュ。

評価:A

Godzilla__2014

ハリウッド版「ゴジラ」は一度、1998年にローランド・エメリッヒ監督で映画化された。ゴールデンラズベリー賞で最低作品賞、最低監督賞など5部門にノミネートされ、最低リメイク賞、最低助演女優賞に輝いた。主演したマシュー・ブロデリックは2001年のトニー賞で共同司会を務めたネイサン・レインからゴジラに出演したことをネタにされ、散々バカにされた(その年はふたりが主演したミュージカル「プロデューサーズ」が賞を総なめにした)。ぼくはこれを封切り時に観たが、脱力と落胆で映画館の座席で深々と嘆息した記憶が鮮明に残っている。

今回のリブート(再起動)版で監督を務めたのは1975年イギリス生まれのギャレス・エドワーズ。未だ30代の若さである。初の長編映画「モンスターズ/地球外生命体」(2010)が高く評価され、いきなり第2作目にして超大作「Godzilla ゴジラ」を任された。次回作は「スター・ウォーズ」のスピンオフ(2016年12月公開予定)の監督が決まっている。さらに「ゴジラ」の世界的大ヒットで続編製作も決まり、そちらも彼がメガフォンを取る。このハリウッド・ドリームは斬新な形式の映画「メメント」がプロデューサーの目に止まり、「バットマン・ビギンズ」に大抜擢されたクリストファー・ノーランのことを思い出させる。

ギャレスは東宝で製作されたゴジラ・シリーズのDVDを全作購入し観たというマニアで、本作は1954年の第1作に対する敬意に満ちている。例えば渡辺謙演じる芹沢猪四郎の名前は第1作に登場する芹沢博士と本多猪四郎監督をミックスさせたもの。54年版はビキニ環礁で水爆実験の犠牲になった第五福竜丸事件に衝撃を受けて製作され、核兵器に対する警鐘と、東京大空襲の悪夢の記憶が刻印されている(映画が撮影されたのは敗戦からたった9年しか経過していない)。今回のハリウッド版は日本での原子力発電所事故から始まり、街が津波に襲われる場面もあったりして明らかに3・11を意識して撮られている。また芹沢の父親は広島で被曝したという設定だ。そしてオリジナル版同様にゴジラ(Godzilla)=怒れる神(God)の化身としての役割をしっかり果たしている。「ゴジラ」の魂(spirit)は見事に継承されたのだ。また新怪獣ムートーはガメラ・シリーズに登場するギャオスを彷彿とさせる。平成ガメラ・シリーズを手がけた金子修介監督はキネマ旬報の記事で次のようにコメントしている。「当然ガメラ見たろ、ギャレス……いいんだけどね。」

本作を観て感心するのはギャレスの映像センスである。ゴジラの全体像を見せるまでの焦らし方、怪獣を捉えるカメラのアングルにただならぬ才気を感じさせる。

あと可笑しかったのは本作で彼はスティーヴン・スピルバーグへのオマージュもちゃっかり捧げているのである。例えば映画の冒頭、芹沢がフィリピンの炭鉱をヘリコプターで訪れる俯瞰ショットは「レイダーズ/失われたアーク《聖櫃》」におけるエジプトの発掘現場の場面を想起させる。また「Godzilla ゴジラ」の主人公が父と原発事故後の《放射能汚染エリア》に潜入するが、実はそれはフェイクと分かり防護マスクを外した直後に軍に拘束され、基地に連行される一連の場面は「未知との遭遇」そっくりである。ゴジラ登場までの焦らし方は「ジョーズ」みたいだしね。

さらにアレクサンドル・デスプラ(フランスの作曲家)による音楽には驚かされた。短い旋律の執拗な繰り返し=オスティナート技法。これは明らかに伊福部昭の音楽へのリスペクトである。だからといって決して模倣に終わらず、オリジナリティーを兼ね備えているのが凄い。興奮した。

フルCGで造形したと感じさせない、新生ゴジラのクオリティも高い。着ぐるみ同様の重量感がある。歩いた時に足がブルルンと震える質感も見事に再現されている。

ただ本作を観てムートーとの格闘でゴジラは彼の必殺技、青白い「放射熱線」をどうして最初から使わないのか?と疑問の声が上がるかも知れない。まぁそれは怪獣映画のお約束、「放射熱線」を使用した瞬間に試合終了なのだから野暮なことは言いなさんなと申し上げたい。それでも納得がいかないという御仁には、こう論理的な説明(へ理屈?)をしておこう。ゴジラにとって放射熱線を口から放出するのは射精みたいな行為なんだね。だから怒り(興奮)が頂点に達さないと放出出来ない。連射も出来ない。ギャレスは明らかにそのつもりで描いている。最後にメスのムートーを倒す場面も何のメタファーなのか歴然としているしね。ビロウな話で恐縮です。

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コメント

ムートー(ギャオス+チャバネゴキブリ)の名前はなんなんですかね?感覚的に怪獣の名前では無いですが。グレートムタ(武藤敬治)からでしょうか?

投稿: 熊吉 | 2014年8月13日 (水) 17時50分

すいません。M.U.T.O.(Massive Unidentified Terrestrial Organism: 未確認大型陸生生命体)だそうです。ちゃんと名前つけろよ。

投稿: 熊吉 | 2014年8月13日 (水) 18時11分

熊吉さん、

まぁ、UFO(Unidentified Flying Object:未確認飛行物体)とか、E.T.(The Extra-Terrestrial:地球外生命体)みたいな命名ですよね。いいんじゃないでしょうか?

投稿: 雅哉 | 2014年8月13日 (水) 20時15分

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