萩原麻未ピアノリサイタル
6月19日(木)いずみホールへ。
日本人として初めてジュネーヴ国際コンクール〈ピアノ部門〉で優勝した(年によって1位を出さないこのコンクールでの8年ぶりの優勝)萩原麻未を聴いた。
- フォーレ/ノクターン 第1番
- フォーレ/ノクターン 第4番
- ドビュッシー/ベルガマスク組曲
1.前奏曲 2.メヌエット 3.月の光 4.パスピエ - ラヴェル/高貴で感傷的なワルツ
- ラヴェル/ラ・ヴァルス
- ジェフスキー/ウィンズボロ・コットン・ミル・ブルース
- ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女(アンコール)
萩原はパリ国立高等音楽院で学び、現在もパリを拠点に活躍している。またコンクールのファイナルではラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調を弾いた。つまりフランス音楽のスペシャリストである。今回のプログラムもフランスものが主体で、最後だけアメリカの現役作曲家が取り上げられた。
フォーレは優しく繊細。「たゆたう」感じが心地よい。
「ベルガマスク」組曲はppの美しさが際立っていた。2.メヌエットは敏捷。3.月の光は目の前に幻夢の世界が立ち現れゾクゾクした。間のとり方、テンポ・ルバート(揺らし方)が絶妙。
「喜びの島」はダイナミクスに幅があった。幻想的でありながら力強さとキレ、情熱や艶がある。完璧なテクニックで聴衆を圧倒した。
「ラ・ヴァルス」は流麗で躍動感があった。この曲には2台のピアノ版もあり、独奏するには極めて難曲だがミス・タッチは皆無。人間技とは思えなかった。
フレデリック・ジェフスキーはマルクス(共産)主義者である。ウィンズボロ・コットン・ミル・ブルースは非人間的な工場の機械音が鳴り響き、それが次第にブルースのリズムへと変化していく。そもそも原曲のブルースは紡績工場の労働者の悲哀を歌ったものだという。ピアノの最低音から始まり最高音で終わるこの曲は鍵盤の隅から隅まで駆使、手のひらを使って鍵盤を押さえるクラスター奏法も取り入れられたりと、見ていてすこぶる面白かった。
現役の日本のピアニストでフランスものを弾かせたら彼女の右に出るものはいないと確信した夜だった。いや、世界的に見ても10指に入る存在であることは間違いない。
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