インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌
評価:A
スピルバーグが審査委員長を務めたカンヌ国際映画祭でグランプリ(次点)を受賞。カンヌの最高賞はパルムドールだが、そちらを受賞した「アデル、ブルーは熱い色」より断然本作の方が良かった。映画公式サイトはこちら。
そもそも僕はコーエン兄弟の映画が好きじゃない。代表作「ファーゴ」もアカデミー作品賞・監督賞を受賞した「ノーカントリー」もちっとも面白くなかった。だけど本作で初めていいと想った。
実話かフィクションかも知らずに観に行ったのだが、ボブ・ディランが憧れた実在のフォーク・シンガー、デイヴ・ヴァン・ロンクの回想録にインスパイアされてシナリオが書かれているそうだ。主人公を演じるオスカー・アイザックは一切吹き替えなしでギターを弾き、歌っているという。大したものだ。ある意味ミュージカル映画とも言えるだろう。
コーエン兄弟作品の撮影監督といえばロジャー・ディーキンスと相場が決まっていたが、今回は「アメリ」「ロング・エンゲージメント」のブリュノ・デルボネル。寒色系の硬質な映像が魅力的だった。特に猫の目線で走る地下鉄の車窓からの光景を捉えたショットはお見事!
演出については猫の扱い方が上手い。ふらっと放浪の旅に出るあたり、主人公の人生と重なりメタファー(暗喩)としての役割を果たしている。映画の後半からロード・ムービーになる構成もユニークだし、彼が出会う人々が奇妙に個性的で心に残る。また最後が円環構造になっているのも洒落ている。必見。
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