映画「プリズナーズ」
評価:B
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ヒュー・ジャックマンは敬虔なクリスチャンで冒頭で祈祷文を唱えるし、ジェイク・ギレンホール演じるロキ刑事はフリーメイソンの指輪をしている。そもそもロキという名前は北欧神話に登場するいたずら好き(狡知)の神であり、彼が異教徒であることを示している。また本作には蛇(キリスト教では悪魔の化身であり、イヴを誘惑した者)や豚の血(例えばバリ島では宗教儀式の際に生贄として用いられる)が出てきたりと意味深である。クリスチャンと異教徒との軋轢、神と悪魔との戦い。それらが複合的・立体的に絡みあいながら物語は進行する。
娘と友達の少女の二人が行方不明になり容疑者が拘束されるが、証拠不十分で釈放となる。しかし彼が犯人だと信じて疑わないジャックマンは容疑者を拘束し、隠れ家で(神の名のもとに)激しい拷問にかける。主人公の行動は明らかに常軌を逸しており、そもそもこの映画の登場人物の殆どが精神異常者と言えるだろう。一番まともなのがロキ刑事なのだが、彼の問題行動が終盤に取り返しのつかない事態を招いたりもする。果たしてprisoners=囚われ人たちとは一体誰のことなのか?タイトルを表面上の意味に受け取ってはいけない。
上映時間153分の間、観客は出口の見えない悪夢の中に投げ込まれる。僕はデヴィッド・フィンチャー監督の「セブン」や「ゾディアック」(これもギレンホール主演だった)、あるいはクリント・イーストウッド監督「チェンジリング」のことを想い出した。
気持ちのいい映画では決してないが、確かに面白い。しかし本作に登場する警察はあまりにも間抜けだ。そういう意味で脚本に疵がある。
アカデミー撮影賞にノミネートされたロジャー・ディーキンスによる寒色系の映像が素晴らしい。しとしと降る雨、うら寂しい木立が印象的で尾を引く。またアイスランド出身のヨハン・ヨハンソンが作曲した音楽は静謐で、あたかも教会コラール(賛美歌)のように響く。
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