« 映画「アデル、ブルーは熱い色」 | トップページ | なにわ《オーケストラル》ウィンズ 2014 »

2014年5月 2日 (金)

熱狂の日!ラ・フォル・ジュルネ びわ湖 2014 最終日

4月29日(火・祝)、びわ湖ホールへ。

ラ・フォル・ジュルネは1995年よりフランスのナントで開催されている音楽祭。2005年から東京でラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンが始まり、2008年から金沢、2010年から新潟と大津(びわ湖)、2011年から佐賀の鳥栖(とす)でも開催されている。「一流の演奏を低料金で提供し、明日のクラシック音楽の新しい聴衆を開拓する」というコンセプトに基づき、総合プロデューサーのルネ・マルタンが本国フランス同様、演奏家の選出や演奏会の選曲を行っている。基本的に1公演45〜60分でアンコールなし。入場料は1,500〜2,000円程度に抑えられている(東京では3,000円の公演もあるようだ。飽食の街=東京でこの音楽祭を開催することに果たして意義があるのか、甚だ疑問ではある)。

La2

今年のテーマは「ウィーンとプラハ」。ウィーンは特にブラームスに焦点が当てられた(モーツァルトやベートーヴェン、シューベルトは過去にテーマで取り上げられており、今回は除外)。僕はこの日、有料3,無料5(メインロビー)の計8公演を聴いた。まずは有料公演から。

29-M-1@中ホール。イリーナ・メジューエワのピアノで、

  • シューマン/アラベスク op.18
  • シューマン/3つの幻想的小品 op.111
  • ブラームス/6つのピアノ小品 op.118より
     1.間奏曲 イ短調
     2.間奏曲 イ長調
  • ブラームス/7つの幻想曲 op.116より
     3.奇想曲 ト短調
     4.間奏曲 ホ長調
  • ブラームス/4つの小品 op.119より
     4.狂詩曲 変ホ長調

イリーナはいつもながらの黒服で登場。禁欲的な尼僧を連想させる。彼女は優しいタッチでありながら、同時に切れがある。

「アラベスク」はストイックなロマンティシズムを感じさせる。「3つの幻想的小品」第1曲には激しさ、情熱、怜悧な知性があり、第2曲は慰め、第3曲は決然たる意思がある。

続くブラームスは手が届かぬ者(=クララ・シューマン)へのあこがれ。奇想曲はシューマンのノヴェレッテ第1番を彷彿とさせる。最後の狂詩曲は力強いが、決して力任せにならないところがイリーナの卓越した技術である。

29-M-2@中ホール。成田達輝(たつき)のヴァイオリン、萩原麻未のピアノで、

  • ヤナーチェク/ヴァイオリン・ソナタ
  • ドヴォルザーク/4つのロマンティックな小品 op.75より第1曲
  • ドヴォルザーク/ヴァイオリン・ソナチネ op.100

成田はフランスで学んでいるヴァイオリニストらしく、細かいヴィブラートをたっぷり掛ける。同じくパリ国立高等音楽院で研鑽を積んだ萩原はペダルを使い過ぎかなというのが些か気になる。音と音が繋がって幻想的になるのでこのテクニックはドビュッシーなどフランス印象派には向いているが、逆に言えば「切れ」がなくなる。彼女のモーツァルトを実演で聴いたが、これはいただけなかった。しかし今回のプログラムは彼女の資質に合っていた。柔らかいタッチだが、同時に小指が強靭で、キラキラとした音色が美しい。

ヤナーチェクは波のうねりのように始まる。緩徐楽章は繊細で、風のささやきのよう。

ドヴォルザークの4つのロマンティックな小品はメロディーメーカーの面目躍如。

ヴァイオリン・ソナチネ op.100は交響曲「新世界より」の作品番号が95、弦楽四重奏曲「アメリカ」が96なので、それより後の作品ということになる。第2楽章には明らかに黒人霊歌の節回しが刻印されていて印象深い。演奏の方は音楽の緊張とその緩和のコントラストが鮮やかで素晴らしかった。

29-S-3@小ホール。マリナ・シシュ(ヴァイオリン)、アンリ・ドマルケット(チェロ)、エマニュエル・シュトロッセ(ピアノ)で、

  • ブラームス/ピアノ三重奏曲 第1番
  • ドヴォルザーク/ピアノ三重奏曲 第4番「ドゥムキー」

これは早々に前売りが完売した公演で、ぼくはなんとか早朝に当日券に並び確保出来た。頑張った甲斐があった。

兎に角アンリ・ドマルケットのチェロが雄弁で瞠目した。よく鳴る!彼はパリ国立音楽院にてジャンドロン、フルニエ、トルトゥリエに、米国でシュタルケルに師事という経歴の持ち主。マリナ・シュシュのヴァイオリンは激しく、熱い。

ブラームスにはやはり憧れの感情があり、軽快さも兼ね備えている。

「ドゥムキー」とはウクライナ起源のバラード風民謡「ドゥムカ」の複数形。6楽章形式でソナタ形式を全く含まないという、スラヴ民族色が濃厚な名曲である。燃焼度が高く、火の玉のように駆け抜ける演奏。CDでもこれだけのレベルのものを聴いたことがないくらい。

無料公演(ロビーコンサート)は①Ensemble les Couleurs(アンサンブル・レ・クルール)でフェルステル/木管五重奏曲、②合唱団「輝らりキッズ」でブラームス/子守唄、日曜日、眠りの精、スメタナ/モルダウの流れ、③びわ湖声楽アンサンブルで「ウィーン、我が夢の街」、「メリー・ウィドウ」〜ワルツ、「こうもり」〜チャールダッシュ、乾杯の歌、④西川茉利奈(ヴァイオリン)、塩見亮(ピアノ)でスーク/4つの小品、⑤和谷泰扶(わたにやすお、ハーモニカ)、和谷麻里子(ピアノ)でブラームス/ハンガリー舞曲 第5番、子守唄、ドヴォルザーク/ユーモレスク、ジェームズ・ムーディー/スペイン風幻想曲トレドを聴いた。

特に印象に残ったのが長閑(のどか)で牧歌的なフェルステル(1859-1951、チェコにこんな作曲家がいたなんて知らなかった)の木管五重奏曲とスークの小品。ヨゼフ・スークはスーク・トリオで有名な同名ヴァイオリニストの祖父で、ドヴォルザークに師事し、その娘と結婚した。近代性と民族性の絶妙なバランス(さじ加減)が耳に心地よい。

La1

お昼はびわ湖ホール館内にある「レストラン・オペラ」で近江牛のステーキ御膳3,500円を食べた。先日、コルンゴルトのオペラ「死の都」を観に来た時は予約で満席で入ることが出来なかったのだが、今回は12テーブルあるうちお客は僕を含め3組のみで拍子抜けだった。多分、1万円以上出してオペラを聴きに来る人々と低料金のラ・フォル・ジュルネでは客層が違うのだろう。有料公演の客席も普段の演奏会と比べるとザワザワしていた。

また途中一服しに行った三井寺力餅が柔らかくて、すごく美味しかったことも付け加えておく。

ラ・フォル・ジュルネ びわ湖は「大阪クラシック」ほど混雑しておらず、びわ湖ホール内で完結しているので会場の移動の苦労もなく、とても楽しい一日を過ごすことが出来た。また来年も是非来たい。

|
|

« 映画「アデル、ブルーは熱い色」 | トップページ | なにわ《オーケストラル》ウィンズ 2014 »

クラシックの悦楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/212850/59556529

この記事へのトラックバック一覧です: 熱狂の日!ラ・フォル・ジュルネ びわ湖 2014 最終日:

« 映画「アデル、ブルーは熱い色」 | トップページ | なにわ《オーケストラル》ウィンズ 2014 »