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2014年5月 5日 (月)

なにわ《オーケストラル》ウィンズ 2014

5月4日(日)ザ・シンフォニーホールへ。

年に一回オーケストラ奏者が集う吹奏楽の祭典、なにわ《オーケストラル》ウィンズ(以下NOW)を聴いた。昨年はチケット発売日当日に朝10時から30分電話をかけ続け、繋がった時には完売で本当に悔しい想いをした。恨み辛みはこちらにぶちまけた。だが今年はチケット販売方法に抜本的な改革がなされた。まず、ザ・シンフォニーホールのチケットセンターのみの受付だったのが、ローソンチケットに変更となり、公演も昼夜2回に増えた。その結果即日完売することもなく、本当に聴きたかった(けれど今まで手に入らなかった)人々にチケットが行き渡ったようだ。金井信之NOW代表の英断に敬意を表したい。なお、チケットぴあは2006年にダブルブッキング事件を起こしており、NOWはぴあに拭えぬ不信感を持っているようである。

感想に入る前にProgram Notesに記載された「シンフォニック・ソング」の作曲家ロバート・ラッセル・ベネットについての間違いを指摘しておく(以下引用)。

1955年ミュージカル映画「オクラホマ!」でアカデミー作曲賞を受賞。

1956年3月21日に開催された1955年度(第28回)アカデミー賞で作曲賞を受賞したのは「慕情」のアルフレッド・ニューマン。ラッセル・ベネットが受賞したのはミュージカル映画音楽賞である。そもそもミュージカル「オクラホマ!」は作詞:オスカー・ハマースタインII、作曲:リチャード・ロジャースの名コンビによる最初の作品であり、ラッセル・ベネットは作曲に関与していない。彼が担当したのは映画化に際してのアレンジ/オーケストレーションである。つまりオスカーを受賞したのは編曲賞に該当する。6月に発売予定のライヴCDにおける解説では誤りが訂正されていることを期待する。

Now

今年の指揮者は淀川工科高等学校吹奏楽部名誉教諭(雑誌AERAによると定年後は無給で働いておられるそうだ!)丸谷明夫先生(丸)と岡山学芸館高等学校吹奏楽部の中川重則先生(中)。

  • グレイアム/サモン・ザ・ドラゴン (中)
  • グレインジャー/ガム・サッカーズ行進曲 (丸)
  • 合田佳代子/「斎太郎節」の主題による幻想
    (2014年吹奏楽コンクール 課題曲 III) (中)
  • 中西英介/最果ての城のゼビア
    (課題曲 I) (中)
  • スミス/ファンファーレ・バラード&ジュビリー (丸)
  • ベネット/シンフォニック・ソング (丸)
  • 小林武夫/コンサートマーチ「青葉の街で」
    (課題曲 IV) (丸)
  • 高橋宏樹/行進曲「勇気のトビラ」
    (課題曲 II) (丸)
  • スパーク/宇宙の音楽 (中)

アンコールは、

  • スーザ/行進曲「キング・コットン」 (中)
  • 星出尚志 編/ジャパニーズ・グラフティーXVII美空ひばりメドレー
     愛燦燦~リンゴ追分~お祭りマンボ~川の流れのように (丸)

グレイアムはトランペットのファンファーレが格好いい!ジョン・ウィリアムズの「スター・ウォーズ」や「ロサンゼルス・オリンピック・ファンファーレ」を彷彿とさせる。

グレインジャーの「Gumの木をSuckする(吸う)人」とは作曲家の生まれ故郷であるオーストラリアのヴィクトリア地方出身者に付けられたニックネームで、つまり自分自身のことを指している。鄙びた感じで懐かしいような、郷愁を誘う曲。僕は丸ちゃんが指揮する「リンカンシャーの花束」が大好きなのだが、それに通じる匂いがあった。

合田佳代子氏は大阪音大を卒業し、現在は同大学の演奏員を務めている。課題曲「斎太郎節」の主題による幻想はなんだか寂しい曲。ちょっとコーディル「吹奏楽のための民話」に近い感じ。メリハリが乏しく、これは「金賞を穫れない課題曲」だと想った。金賞受賞団体が殆ど取り上げなかった(1団体のみ!)2009年の課題曲「16世紀のシャンソンによる変奏曲」のことを想い出した。

課題曲「最果ての城ゼビア」はメロディアスで大河ドラマ風。冒頭部は霧の中から城が浮かび上がり(e.g.;黒澤明監督の映画「蜘蛛巣城」)、馬が駆ける描写が続く。

スミスの曲は緩徐部(バラード)の哀感がいい。グランドキャニオンに映える夕日を連想した。最後のジュビリーは超絶技巧で疾風の如し。吹奏楽コンクールでは支部大会でも1990年以降全く取り上げられておらず、全国大会に至っては1985年の阪急百貨店吹奏楽部が最初で最後(金賞受賞)という知られざる逸品である。これ最高!

ロバート・ラッセル・ベネットは先日、大阪桐蔭高等学校定期演奏会で聴いた「マイ・フェア・レディ」のアレンジも素晴らしかった。I. セレナードは都会的で洗練されている。II.(黒人)霊歌(Spiritual)は夜の音楽。ハーモニーが美しい。III.祝典は賑やかで調子外れのカーニバル。滅多に演奏されない古典的名作(1957年初演)を聴けて嬉しかった。

課題曲「青葉の街で」は爽やかなマーチ。ホルンがいい。マルちゃんの指揮はキビキビしている。ここで実験あり。「奏者が立つと、演奏に効果があるか?」また逆に主旋律を吹く奏者は座り、他全員が絶つパターンも。作曲家の小林武夫氏が来場しており、ステージへ。学生時代からアマチュアとしてファゴットを20年以上吹いており、その楽器に活躍する場を与えたかった。NOWは2007年の東京公演から何度か聴いており、このバンドで自分の曲を演奏してもらうのが夢だったと。また彼は震災のあった宮城県石巻市出身。先日地元の市民バンドが自分の曲を演奏してくれた。演奏するホールが津波で流され、団員も何人か亡くなってしまったけれど、それでも頑張ってやっていますと語った。何度も落選し、「(故郷のために)自分のできることは音楽しかない!」と挑戦し続けた朝日作曲賞。漸く彼はチャンスを掴んだのである。

続く課題曲「勇気のトビラ」はどうということのないふつーの行進曲だった。結局、課題曲V以外の4曲の中では「青葉の街で」がダントツに良かった。

僕は大阪市音楽団によるスパーク宇宙の音楽」の世界初演を生で聴いている。また精華女子高等学校が全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞した演奏も普門館で聴いた。だから想い入れの強い曲だ。

金井代表によると指揮者の中川先生は椎茸が嫌いだそうで、だから今回のプログラムの表紙は円を描く五線譜をきのこが廻っているデザインにしたと。「最初は『宇宙の音楽』にちなんで星の写真を使おうと思ったのですが、著作権の関係で断念しました。ちゃんと中川先生に配慮して椎茸は入れていないんですよ。毒キノコはありますが」冒頭のホルンがカッケー。そしてスケールがデカく、ロマン溢れる音楽が展開される。中川先生の指揮は良い意味でも悪い意味でも明快で曖昧さがなく、むしろ宇宙がテーマなので混沌があってもいいんじゃないかな?と想った。

今年は昼夜2回公演ということもあってか例年より短めで2時間50分とコンパクトに終了した。恒例だった開場直後のロビーコンサートや休憩時間のゲリラ・アンサンブル演奏も無し。ちょっと寂しい気もしたが、奏者の方たちも体力を温存しないといけないし、致し方無いだろう。それでも十分愉しかったし、中身が充実していた。

最後に、今後僕がNOWで聴きたい曲のリクエストを挙げておきたい。限りなく美しいハワード・ハンソン/ディエス・ナタリスと、カレル・フサ/プラハのための音楽1968である。ちなみに「プラハのための音楽」はジョージ・セルの依頼で作曲家自身が編曲したオーケストラ版もあるので、そちらも聴いてみたい。

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コメント

雅哉さん、こんにちは。

NOW、私も行きました。
桐蔭が金沢帰りだったのと、「アンティフォナーレ」が聴きたかったので、18時の回を観ました。

チケット、今年は取れて良かったですね。
気合いを入れて販売開始と同時に繋いだら、スッと取れて拍子抜けでした。

昼と夜ではプログラムが違ったので、雅哉さんの記事、楽しく拝見しました。
「青葉の街」での実験演奏聴きたかったですね~

夜は課題曲5の「君は林檎の樹を植える」でプレゼントをあげるとボールを投げ、当たった高専生にいきなり指揮をさせるとういう実験プログラムでした。
(指揮といっても、メトロノーム通り振っているだけで、金井先生が肝心なところは指示を出しておられましたが…)

休憩時間のゲリラ・アンサンブルは有りましたよ。
曲名はわかりませんが、木5良かったです。

NOWは一人ひとりの音が凄いです。曲によってソロも色んな方が吹いておられましたが、それぞれ個性があり、面白かったです。
リハーサルの回数が少ないせいか無難な演奏で、細かいミスはありましたが、そんなこと打ち消す位、素晴らしい演奏会でした。
曲の詳細については雅哉さん程わからないので、これくらいに…

来年も是非行きたいです。

投稿: *pino* | 2014年5月 7日 (水) 18時26分

*pino* さん、コメントありがとうございます。休憩時間のゲリラ演奏、夜の部はあったのですか!なんだか悔しいな。多分、昼の部は夜の部に備えて、奏者の方たちが体力を温存されたのでしょうね。

聴けなかった曲は、ライヴCDで愉しみたいと想います。さて、ベネットのシンフォニック・ソングの解説は正しい内容に改訂されているでしょうか??

投稿: 雅哉 | 2014年5月 7日 (水) 22時04分

お久しぶりです。
今回は東京公演に乗れないためメンバーに入らず、団友として関係者席で聴いていました。大阪の昼夜、二回共です。今年も良い演奏会でしたね。

夜の部のゲリラ演奏は木管五重奏。ファルカシュの「17世紀の古いハンガリー舞曲集」から、第一楽章と最終楽章が演奏されていました。メンバーは榎田さん、金井ボス、久永さん、岩佐さん、オーボエは・・だれだっけ?w
大島君だったかな・・・・、なんか記憶から飛んでます。

昼の部でやった曲は、夜の部では更に精度が上がっていました。この辺は一回通すだけで一段レベルが上がるこの団体らしいところです。東京はさらに・・・?
宇宙の音楽のホルンソロは、群響の若手、濱地君でした。昼の部での力強いあの音楽と、夜の部は別人かと思うほどニュアンスのまた違うアプローチを聴かせてくれて。それぞれに美しかったです。
なにわは、まだまだ続きますね。ネリベルの解説であんなことを書いてますから。w

投稿: ふーじー | 2014年5月 8日 (木) 10時32分

ふーじーさん、コメントありがとうございます。課題曲「青葉の街で」で作曲者の小林武夫さんが「ファゴットに活躍する場を設けたかった」と語った時、ふーじーさんが一番大きな拍手を送られていましたね。

なにわ《オーケストラル》ウィンズ、来年も(チケットが無事手に入れば)是非行きたいです。

ところで大阪交響楽団はエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトを定期演奏会で取り上げて下さらないでしょうか?今年はオペラ「死の都」が東京とびわ湖で同時期に上演され(5/11日曜日深夜24時にNHK-BSプレミアムで放送)、東京ではヴァイオリン協奏曲がしばしば演奏されていますが、大阪では皆無。残念でなりません。僕は大響のおかげでフランツ・シュミットの魅力に開眼しました(特に交響曲第4番が大好きです)。通俗な名曲路線に固執する大フィルには全く期待出来ませんし、やはりコルンゴルトを取り上げてくれるとしたら大響しかないと思うのです。

投稿: 雅哉 | 2014年5月 8日 (木) 20時08分

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