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シリーズ《音楽史探訪》没後100年・マニャールを知っていますか?

この記事はシリーズ《音楽史探訪》音楽家の死様と併せてお読み下さい。

僕はある日、通勤中にナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)でヴィア・ノヴァ四重奏団の演奏するショーソンやルーセルの弦楽四重奏曲を聴いていた。すると突如として激しく情熱的な音楽が始まったのでびっくりした。電撃的啓示を受けたと言ってもいい。収録リストを見てみるとマニャールと書いてある。全く知らない作曲家だ。名前の語感からしてスペイン人??興味を持ったので調べてみた。

アルベリク・マニャール(1865-1914)はフランスの作曲家。今年没後100年だが非常にマイナーな人なので演奏会で取り上げられるという話はとんと聞かない。コラールが用いられていることから「フランスのブルックナー」と呼ばれることもあるが、作風は全く異なり見当違いも甚だしい。

兵役を経験し法学校で学んだ後、ヴァンサン・ダンディに師事する。ダンディはセザール・フランクの弟子であり(フランクのことを「お父さん」と呼び、評伝も書いた)、マニャールはフランクの門下生と考えて良いだろう。

第一次世界大戦が勃発するとマニャールは妻と2人の娘を疎開地に避難させ、自分自身はバロンにある邸宅を守るため居残った。そこへドイツ兵が侵入、彼は銃を持って抵抗し、発砲してひとりを射殺。ドイツ兵は反撃し、マニャール邸に火を放った。後日屋敷の焼け跡から黒焦げの遺体が発見された。またこの際、歌劇「ゲルクール」の総譜や新作の歌曲が焼失した。しかし友人のロパルツが記憶を頼りに「ゲルクール」のスコアを再現し、1931年に蘇演された。

鮮烈かつ壮絶な最後である。その内的な攻撃本能(衝動)が彼の音楽の中にも垣間見られる。

4曲ある交響曲のうち第1番はフランクが得意とした循環主題の手法が用いられているが、後期の作品ではすっかり影を潜め、独自の路線を打ち出している。傑出しているのは第4番。第1楽章は激しく、第2楽章スケルツォで民族音楽風の箇所が登場するのが面白い。第3楽章レントは祈りのように清浄で、第4楽章のフーガも格好いい。トーマス・ザンデルリンク/マルメ交響楽団のCDでどうぞ。

マニャールのヴァイオリン・ソナタは名ヴァイオリニストで作曲家のウジェーヌ・イザイに献呈されており、1902年にイザイの手で初演された。ちなみにフランス系ヴァイオリン・ソナタの最高傑作と呼ばれるフランクのソナタもイザイの結婚祝いとして贈られている。チェロ・ソナタと共にメラメラと燃える激情を有した傑作。またピアノが単なる伴奏にとどまらず、ヴァイオリン(あるいはチェロ)と対等に主張するのも特徴的。デュメイ&コラールのCDを推す。また半音階的にたゆたうように始まるチェロ・ソナタは第1楽章からいきなりフーガが登場するので意表を突かれる。

叙情的に歌うフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットとピアノのための五重奏曲もいい。

ピアノ三重奏曲も魅力的な楽曲らしく、これからマニャールを知ったという方がいらっしゃるのだが、残念ながら現在NMLには登録されていないようだ。近いうちに聴ける機会が巡ってくることを心から願っている。

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