柳亭市馬・柳家喬太郎 二人会(2/16)
2月16日(日)、トリイホールへ。
- 桂二乗/癪の合薬
- 柳亭市馬/道灌
- 柳家喬太郎/名人長二 仏壇叩き
- 柳家喬太郎/草食系駅伝(喬太郎 作)
- 柳亭市馬/猫の災難
「癪の合薬(別名:薬缶なめ/茶瓶ねずり)」は林家(染丸)一門がよく演じる噺。米朝一門では初めて聴いた。元々上方のネタらしいのだが、どうしても違和感を感じるのは中盤から登場するお供を連れた武士の存在だ。上方落語は商家を舞台としたものが多く、武士が出てくることは殆ど無い。僅かな例外が「佐々木裁き」「次の御用日」「鹿政談」だが、これらは帯刀して往来を歩く武士ではなく、裁判官(お奉行さん)としての役割を担っている。よって「癪の合薬」のオジリナルは武士ではなく、その件は噺が江戸に移植された際に変えられたのではないか?というのが僕の仮説である。当ブログはプロの落語家さんも読まれているようなので、もしよかったらこの件に関してコメントを頂ければ幸いである。
市馬と喬太郎の一席目は枕なしでいきなり噺の世界へ。「道灌」は東京におけるいわゆる前座噺だが、市馬のようなベテランの手にかかると軽やかで味わい深いものになる。
喬太郎は三遊亭圓朝の「指物名人長二」発端を。職人気質、職人の心意気と、対する凡人の了見の狭さ、吝嗇家の愚かしさを描き、ある意味芸術論になっている。作家・圓朝の偉大さ、深遠さをまざまざと見せつけられた。「私の持ちネタの中でも3本の指に入る笑いのない噺でした」と喬太郎。でも十分聴き応えがあった。
仲入りを挟み後半の喬太郎はマクラで東京に記録的大雪が降り、羽田空港が閉鎖された前日15日に、大分に落語会へ行ったエピソードを披露。
駄目元で羽田に向かう途中に主催者から携帯電話に連絡があり、どうしても来て貰いたいので大阪まで新幹線で行き、伊丹空港から大分に飛んで欲しいと。会場の収容人数は100人で木戸銭が1000円だったとか。だったら主催者の収益は10万円しかないわけで、その中から喬太郎の出演料と往復の交通費を捻出出来たのだろうか!?と要らぬ心配をした。
新作「草食系駅伝」は山手線の駅名が次々に出てくる噺で、関西の人間には今ひとつイメージが沸かなかった。喬太郎もこれを選んで失敗したとぼそり。天才喬太郎でも、たまにはつまらないものを書くのだなと想った。
市馬の二席目も飄々とした軽いネタ。手堅くまとめた。
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