映画「ウォルト・ディズニーの約束」〜人は何故フィクションを求めるのか?
評価:B+
映画「メリー・ポピンズ」(1964)誕生秘話(ポスターの影に注目!)。公式サイトはこちら。
原題は"Saving Mr. Banks"。どちらかと言うとウォルトは脇役で、主役は原作者パメラ・トラバースである。ミスター・バンクスとは「メリー・ポピンズ」に登場する子どもたち=ジェーンとマイケルのお父さんで、厳格な銀行家。どうしてその彼を救済する必要があるのかということが、映画のテーマに関わってくるという仕組み。まぁ、邦題の方は興行的なことを考えて”ディズニー”を入れたかったんだね。
兎に角エマ・トンプソンが演じた原作者が気難しくて、とんだ食わせ者なのだ。ウォルトは彼女に対し20年間も粘り強く映画化の交渉をしていたというのだからすごい。脚本は細部まで一々チェックするし、話し合いは全てテープに録音することを求めるし、「赤色を使ってはダメ」「アニメは一切認めない」など要求のモンスターぶりが凄まじい。ウォルトや脚本家、作曲を担当するシャーマン兄弟たちが彼女に翻弄される姿が可笑しい。
映画は「メリー・ポピンズ」の製作過程とパメラ・トラバースの幼少期@オーストラリアが並行して描かれる。そして次第にメリー・ポピンズやミスター・バンクスのモデルが誰だったのかが浮き彫りにされてゆく。また知られざるウォルト・ディズニー少年時代のエピソードにも驚かされる。そして人は何故フィクションを求めるのか?という物語を創造することの意義、その本質が明らかにされる。脚本が素晴らしい。
映画冒頭と最後はシャーマン兄弟が作曲した「チム・チム・チェリー」がピアノで演奏される。これが鍵盤が沈む時の木の軋みまで聞こえてきて、実に味がある。さらにエンディング・クレジットで実際にテープに残されたパメラ・トラバースの肉声が流れ、感銘深かった。
アカデミー賞には作曲賞しかノミネートされなかったけれど、作品賞と主演女優賞もされてよかったのではないかと想った。少なくとも僕は「それでも夜は明ける」より断然好きだな。
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