フランツ・シュミット祭り!/大阪交響楽団 定期
2月28日(金)ザ・シンフォニーホールへ。
寺岡清高/大阪交響楽団の定期演奏会を聴く。スロヴァキアの首都ブラティスラヴァで生まれ、ウィーンで活躍した作曲家フランツ・シュミット(1874-1939)特集。ちなみにウィーンからブラティスラヴァまで列車や高速バスで1時間〜1時間30分程度の距離だそうだ。シュミットはアルノルト・シェーンベルクと同年に生まれたが、12音技法へ向かったシェーンベルクに対し、あくまで調性音楽に留まった。
シュミットはウィーン・フィルでチェロ奏者を務めていたが、音楽監督のマーラーとはウマが合わなかった。ウィーン・フィルのコンサートマスターでマーラーの妹と結婚したアルノルト・ロゼとも仲違いしていたそう。マーラーはシュミットの歌劇「ノートル・ダム」のウィーン宮廷歌劇場における初演を拒否している。
ロゼについては下記記事でも触れた。
なお、フローラン・シュミットというフランスの作曲家もいるので、ややこしい。F. シュミットと略してもどちらのことか分からないからフル・ネームを表記する必要がある。
集客は1階席が8割、2階席が4割の入り。
今回の曲目は
- 歌劇「ノートル・ダム」より
1.前奏曲 2.間奏曲 3.謝肉祭の音楽 - ベートーヴェンの主題による協奏的変奏曲
(ピアノ独奏:クリストファー・ヒンターフーバー) - 交響曲 第3番
歌劇「ノートル・ダム」の前奏曲は調性音楽ではあるが、時に不協和音が忍び込み聴き手を不安な気持ちにさせる。カラヤン/ベルリン・フィルもレコーディングした間奏曲は得も言われぬハーモニーの美しさ!天国的で、ロマ(ジプシー)の節回しも紛れ込んでいる。謝肉祭の音楽は華やかだった。
「ベートーヴェンの主題による協奏的変奏曲」は第一次世界大戦で右腕を失ったピアニスト、パウル・ウィトゲンシュタインからの依頼で作曲された。ヴィトゲンシュタインの委嘱により他にラヴェル/左手のための協奏曲、コルンゴルト/ピアノ協奏曲(左手のための)、フランツ・シュミット/2つのピアノ五重奏曲、ブリテン/主題と変奏(左手のピアノと管弦楽)、プロコフィエフ/ピアノ協奏曲 第4番などが作曲されている。主題はヴァイオリン・ソナタ第5番「春」第3楽章から。ヒンターフーバーは両手で弾いた。どうも弟子が改訂した両手バージョンがあるらしい。割と単調で、途中で眠くなったが教会コラール(賛美歌)風でオルガンの響きを連想させる変奏が印象的だった。ちなみにフランツ・シュミットはオルガン作品を多数作曲している。
上記記事にも書いたが、交響曲第3番はコロンビア・レコードの企画により1928年に開催された国際シューベルト作曲コンクールで第2位となった。第1楽章は冒頭から魔術的オーケストレーションで聴衆を陶酔的境地へと誘う。第2主題は寂しく、孤独で、宇宙に漂っている感じ。アルフォンソ・キュアロン監督の映画「ゼロ・グラビティ」を連想した。第2楽章アダージョは不気味で不安の影が忍び寄る。第3楽章はブルックナーを彷彿とさせるスケルツォだが、ブルックナーよりドロドロしていて魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する印象。そして第4楽章の序奏(レント)はやはりコラール風。ブルックナーのそれが立派な大聖堂だとするとフランツ・シュミットの場合は人影もなく朽ちて崩れかけた廃墟という感じだろうか。
寺岡は本当に楽しそうに指揮しており、フランツ・シュミットが好きで好きで仕方がないというのが伝わってくる。僕は彼のベートーヴェンやブラームスの解釈は凡庸で退屈だと想っているが、シュミットになると突然音楽が生き生きとしてきて、まるで別人みたいだ。寺岡には是非、次の企画としてエーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトを取り上げてほしいと切望する。やはりウィーンで活躍し、忘れられた作曲家だからね。
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