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2014年2月16日 (日)

スノーピアサー

評価:A

Snowpiercer_poster_1_3

アメリカ合衆国、韓国、フランスの合作。アメリカではワインスタイン・カンパニーが配給するが、現時点では未公開。ポン・ジュノ監督初の英語作品である。公式サイトはこちら

地球温暖化を食い止めるべく空中散布された化学薬品のため世界が雪と氷で覆い尽くされ、わずかに生き残った人類は永久機関によって動き続ける列車「スノーピアーサー」の中で暮らしているという設定。

殆どの人類が滅亡したという設定は冷戦時代に流行った、核戦争後の地球を彷彿とさせる。その代表例が「猿の惑星」(1968)であろう。あと「渚にて」(1959)とか「リチャード・レスターの不思議な世界」(1969)とか。

2004年5月に映画「殺人の追憶」を観た時、僕はポン・ジュノのことを”韓国の黒澤明”と評した(記事はこちら)。日本で最も早かったと自負している。そしてこの呼称は今や完全に定着した(こちら)。

これってポン・ジュノ版「暴走機関車」だよね?というのが「スノーピアサー」を観ての率直な感想。「暴走機関車」は1966年に黒澤明がハリウッドで撮る予定だったカラー/70mm大作で黒澤明・菊島隆三・小国英雄がシナリオを書いた。しかしアメリカ側プロデューサーとの意見の食い違いで実現しなかった。

列車「スノーピアサー」というのはそれ自体が人間社会のメタファーとなっている。厳然とした階級制があり、反乱が繰り返される所も。奥が深い。

ティルダ・スウィントン(「フィクサー」でアカデミー助演女優賞受賞)の怪演が愉しい。韓国を代表する名優ソン・ガンホが翻訳機を使用し、決して英語を喋ろうとしないのも傑作だ。


(以下ネタバレあり)


あと映画終盤でエド・ハリスが登場し、彼が影の支配者だったと判明するのは、まんま「トルーマン・ショー」(1998)だよなと想った。いやもうそっくり!……というわけで過去の様々な映画へのオマージュがふんだんに盛り込まれている。

最後は列車が雪崩で脱線し、新世紀のアダムとイヴだけが生き残る。宮﨑駿「崖の上のポニョ」を彷彿とさせる(僕のレビューはこちら)。しかしそのふたりが白人ではなく、有色人種というのが痛快だ。さすがポン・ジュノ、やるね!

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