ホルショフスキ・トリオ@兵庫芸文
2月16日(日)兵庫県立芸術文化センターへ。
ニューヨークを拠点に活躍するホルショフスキ・トリオは2011年に結成。名前の由来となったミチエスラフ・ホルショフスキはかの有名なカザルスのホワイトハウス・コンサートでも演奏しているピアニストである(メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲 第1番など)。トリオのメンバーはホルショフスキ、最後の弟子・相沢吏江子(ピアノ)と、ジェシー・ミルス(ヴァイオリン)、ラーマン・ラマクリシュナン(チェロ)。ラーマンの父はなんとノーベル化学賞受賞者で、彼自身ハーバード大学で物理を専攻し優秀賞を得て卒業。その後音楽に本格的に専念したという変わり種。
- ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲 第5番「幽霊」
- サン=サーンス/ピアノ三重奏曲 第1番
- ドヴォルザーク/ピアノ三重奏曲 第3番
- シューベルト/ピアノ三重奏曲 第2番 第3楽章 (アンコール)
冒頭のベートーヴェンから丁々発止のアンサンブルの妙に惹きつけられた。押しては引く波のような音楽に身を委ねる心地よさ。
サン=サーンスは溌剌とした瑞々しい演奏。相沢のピアノの上手さに舌を巻く。速いパッセージも軽やかに弾きこなす。第1楽章はしなやかに歌い、第3楽章は春の訪れを感じさせる。
僕はサン=サーンスやフォーレがその実力に比べ、過小評価されていると想っている。ドビュッシーやラヴェルらの「印象派」と違い、キャッチ・フレーズがないことがその一因かも知れない。時代的にはロマン派だけれど、フランス人だしそんな感じじゃないからね。言い表しにくい。ほら、「日本のベートーヴェン」の呼び名で一世風靡し、CDがバカ売れしてゴールドディスク認定まで受けた「自称」作曲家もいたでしょ?キャッチ・フレーズってセールスの上で重要だ。ハイドンの交響曲も売れているのはニックネームの付いたものだけ。閑話休題。クラシック・ファンのうちサン=サーンスの曲で聴いたことあるのは「動物の謝肉祭」と交響曲第3番「オルガン付き」だけの人が多いのではないだろうか?あとはせいぜいピアノ協奏曲くらい。しかし今回演奏されたピアノ・トリオとか、チェロ・ソナタなど彼には珠玉の室内楽がある。是非もっと多くに人々に知ってもらいたいものだ。
プログラム後半はドヴォルザーク。彼の室内楽における最高傑作は民族色豊かなピアノ三重奏曲 第4番「ドゥムキー」だと確信しているが、3番も名曲である。ホルショフスキ・トリオは雄弁な演奏だった。歌心に満ちており、一方で背筋を伸ばして毅然とした一面も見せる。
室内楽の愉しさを堪能した。
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