フィンランドの森の妖精たち~大阪交響楽団 定期 (+シベリウス論)
11月28日(木)ザ・シンフォニーホールへ。
高関健/大阪交響楽団でオール・シベリウス・プログラム。
- 舞踏間奏曲「パンとエコー」
- 交響曲 第4番
- 交響曲 第7番
- 交響詩「タピオラ」
シベリウスの交響曲中、コンサートで圧倒的に取り上げられる機会が多いのは第2番だろう。次に第1番。僕は今まで第1・2・5・7番を実演で聴いたことがあるが、第4番はこれが初めて。すごく嬉しかった。「タピオラ」も演奏時間が18分掛かるので、耳にする機会は少ないんじゃないかな?結構レアなプログラムである。
ちなみに大阪フィルハーモニー交響楽団のアーカイブで調べてみると、大フィル定期でシベリウスの交響曲第4番が取り上げられたのは今から60年以上前、関西交響楽団時代のみ。第3・6・7番や「タピオラ」に至っては皆無であった(交響曲第2番は関響時代を併せて計12回)。何と保守的、有名曲偏重主義なんだ!!呆れた。
交響曲 第4番と7番は僕が大好きな作家・福永武彦の遺作「死の島」に登場し、小説中でシベリウス論が展開されるので昔から愛聴していた。第1・2番の時代はチャイコフスキーの影響が色濃く、「シベリウスの真髄」が味わえるのは第4番以降だと僕は確信している。作曲家・吉松隆氏も後期交響曲を偏愛しておられるようだ。
若い頃のシベリウスは酒・葉巻・ギャンブルに溺れ、放蕩三昧、借金まみれの暮らしをしていた。しかしやがて改心し、心機一転ヘルシンキ郊外の田舎ヤンヴェンパーに引っ込む(その自宅の名前が「アイノラ」)。そこで生み出されたのが交響曲第3番以降の作品群であり、やがて彼の音楽はフィンランドの自然と一体化していくのである。
さて演奏の方は、まずヴァイオリンが古典的対向配置だったので驚いた。
「パンとエコー」は初めて聴いたが、妖精が飛び回るような活気ある曲。ただ短くて(5分)、唐突に終わる。
交響曲 第4番は仄暗さを保ちつつ、高関の指揮は明晰。第1・2楽章/第3・4楽章はアタッカで演奏され、あたかも2部構成のようであった。これはやがて第7番で単一楽章に収斂されて行くことを考えると、納得のいく方法論であった。第2楽章は跳ねる感じで始まり、陰影のある中間部では鋭さが加味された。第3楽章ではフィンランドの雄大な自然ー森・湖・霧の風景が浮かび上がる。そして第4楽章には弾けた表現力があった。
シベリウスの最高傑作、交響曲第7番には悠久の自然の営みが感じられた。
最後の大作「タピオラ」はまるで森林浴をしているような気持ちよさ、愉しさがあった。ちなみにタピオとは森の神であり、タピオラはその領土を示す。
高関健のシベリウス、意外といける(失礼!)と想った一夜だった。
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