たちきれ/桂よね吉独演会
10月31日(木)天満天神繁昌亭へ。
- 桂鯛蔵/二人癖
- 桂よね吉/ちりとてちん
- 桂阿か枝/厩火事
- 桂よね吉/たちきれ
繁昌亭では初めてとなる桂よね吉独演会。彼が語る所によると、繁昌亭昼席で時間オーヴァーしてしくじり、一年間干されていたこともあったそう。
上方落語界きっての男前だけに会場の7割は女性客。仲入りで男子トイレが空いていたこと!
高座返しはアフロ・ヘアの桂二葉。「彼女のぎこちない動きがロボットみたいでしょう?そこが気に入っていてよく頼むんです」とよね吉。二葉は退場時に拍手を貰っていた。
鯛蔵については「目つきがテロリストみたいでしょう?」「でも喋りが流暢だから最近を彼に前座お願いすることが多い」と仕事で2月の豪雪時に富山に一緒に出かけた時のエピソードを語る。鯛蔵は運転免許書を持っていないので全行程をよね吉が運転し、チェーンの着脱も一人でやった。その間、鯛蔵は車の中でコーヒーを飲んでいたと。
さらに阪急阪神ホテル・グループの食材偽装問題について「新阪急ホテルはまだ許せると思うんです。値段がそれなりですから僕もよく利用していますし。しかしリッツ・カールトンは駄目でしょ!以前あそこでお茶した時、伝票見てしばいたろかと思いました」と会場爆笑。そして「ちりとてちん」へ。考えてみればこのネタも料理を偽装する話だからマクラがピッタリ合っている。上手い!以前のよね吉は芝居噺など所作が素晴らしいのだが、マクラが詰まらないのが弱点だった。
ただ、このような滑稽噺は彼のニンに合っていない気がした。腐った豆腐を食べさせられた時の変顔にも違和感がある。心地よいリズム感で聴かせるタイプの噺家ではないだけに、むしろその「間」がダレる。NHK朝ドラ「ちりとてちん」でも共演した兄弟子・桂吉弥の方が面白い。
「ちりとてちん」には「ものよろこび」する男が登場するのだが、この件から考えると桂南光からの口伝の可能性が高い(吉弥も南光から教わったという)。ちなみに茶碗蒸しのエピソードを噺に組み入れたのは南光の工夫だそうだ。
仲入りを挟み2年ぶりに高座に掛けるという「立ち切れ線香」へ。江戸時代における勘当・廃嫡の意味を解説。また米朝師匠に祇園の茶屋遊びや、芸妓がいて能舞台があった頃の料理店「大和屋」@大阪ミナミに(勉強のために)連れて行ってもらった想い出などを語った。
このネタも吉弥で聴いたことがあるが、断然よね吉の方が良かった。迫真の演技力で、涙を流しながらの口演。しっとりと、滲みだす抒情。
噺の中で小糸の母は若旦那が百日間、店の蔵に閉じ込められていたと聞き「子供みたい」と言う。そして「船場は怖いとこでんな」と続ける。この言葉に込められた、怨嗟・哀感・諦念といった諸々の想いにゾクゾクっとした。お見事!
DVDで鑑賞した桂米朝の高座を含めて、僕が今まで観た「たちきれ」のベスト・パフォーマンスであった。このネタはまた彼で是非聴きたい。
そうそう、甘いモノが好きで太りやすい体質のよね吉だが、しっかり減量して臨んでいたことも追記しておきたい。「たちきれ」にはそれに相応しい体型というものがあるからね。
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