ミュージカル「エニシング・ゴーズ」とインディ・ジョーンズ
11月1日(金)シアターBRAVA!へ。ミュージカル「エニシング・ゴーズ」を観劇。
作詞・作曲はコール・ポーター。1934年ブロードウェイ初演。再演時にミュージカル「太平洋序曲」「アサシンズ」「ビッグ」の台本を書いたジョン・ワイドマンがリライトに参加している。
リヴァイヴァル版ではポーターが書いた他のミュージカル作品からの楽曲を使用したり、第1幕フィナーレを「エニシング・ゴーズ」で締めくくるなど(オリジナルは違っていた)、様々な改変が行われている。これも時代に合わせた工夫なのだろう。実際このタップ・ダンスによる群舞は圧巻で、「42nd Street」の第1幕フィナーレ”ララバイ・オブ・ブロードウェイ”や「ミー&マイガール」”ランベス・ウォーク”の興奮を想い出した。
実は楽曲「エニシング・ゴーズ」を初めて聴いたのは映画館でスティーヴン・スピルバーグ監督の「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」(1984)を観た時だった。映画の冒頭は1935年の上海。ナイトクラブ「オビ=ワン」でケイト・キャプショーがこれを歌うのだ(彼女は後にスピルバーグ夫人となる)。
「エニシング・ゴーズ」のブロードウェイ初演はエセル・マーマンが出演しており、1936年に彼女の主演で映画化もされている(お相手はビング・クロスビー)。しかし残念ながら僕は未見で、今回初めて物語の全容を知った。
「何でもあり」の無類な愉しさ!ギャングはスター扱いされ、価値観は反転する。殺人犯が最後にショー・ビジネスで成功するミュージカル「シカゴ」のことを想い出した。あと最後に3−4組の合同結婚式になるプロットは「ミー・アンド・マイガール」(1937年ロンドン初演)に踏襲されている。馬鹿馬鹿しいお話だが、そこがいい。
コール・ポーターのバラエティに富む楽曲に魅了された。ビッグバンド・スタイルによるタップ・ナンバーもあれば情熱的な"The Gypsy in Me"はラテンのノリ。"Blow, Gabriel, Blow"はゴスペル調で、「ガイズ&ドールズ」(1950年ブロードウェイ初演)の”座れ、舟がゆれるのはお前のせいだ”はこれに影響を受けているのではないかと想った。
瀬奈じゅんがすごく良かった。彼女のことは宝塚時代から知っているが正直「淡白な男役」という印象しかなく、特にタイトルロールを演じた「エリザベート」は酷かった。しかし今回の役は彼女のニン(任=役者の持つ芸風や性格/歌舞伎用語)に合っていたと想う。水兵服を着てタップを踊る場面はさながらエレノア・パウエルが主演するMGMミュージカルの如しであった。
鹿賀丈史、田代万里生、吉野圭吾、大澄賢也らも好演。
お嬢様役のすみれは長身の美人だった。調べてみると石田純一と松原千明の長女だとか。母方の祖母がタカラジェンヌだったらしい。歌もわりかしイケた。さすがサラブレッドだね。
久しぶりの保坂知寿。歌が少ないのが気の毒。彼女で「クレイジー・フォー・ユー」を観たことを想い出した。これを作曲したガーシュウィンは丁度コール・ポーターと活躍した時期が一緒だから、同じ「時代の匂い」を感じたんだ。
山田和の演出はソツがない。あと”踊る指揮者”塩田明弘率いるオーケストラがノリノリの演奏だったことは特筆に値するだろう。
また再演があれば是非もう一度観たい作品である。
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コメント
ほんとに保坂知寿さんはもったいなさすぎでしたね。
タップシーンは最高でした。
投稿: ディズニーラブ | 2013年11月 9日 (土) 11時03分
ディズニーラブさん、コメントありがとうございます。今のミュージカル界は劇団四季出身の男優(のみ)と宝塚歌劇男役出身者が幅を利かせていますから、四季出身の女優にはなかなかいい役のオファーがないのでしょうね。「エビータ」タイトル・ロールや「キャッツ」グリザベラで一世風靡した、あの久野綾希子さんですら退団後はパッとしませんから。
それとタップ・ダンスの群舞を観ていると否応なく興奮しますね。その極めつけが"42nd Street"だと想います。
投稿: 雅哉 | 2013年11月 9日 (土) 20時53分