保科洋も登場!~吹奏楽 meets オーケストラ(下野/大フィル)
奏者の知り合いばかりが優遇され、一般客にはチケット入手困難な、なにわ《オーケストラル》ウィンズ(大阪公演)の閉鎖性に心底頭にきて、しばらく吹奏楽から距離を置いていた。
代表の金井信之さん、2014年以降の販売方法の改善を期待します。
さて、11月29日(金)ザ・シンフォニーホールへ。
司会:丸谷明夫、下野竜也/大阪フィルハーモニー交響楽団で吹奏楽とオーケストラの融和を図る企画。
- 保科洋/風紋(管弦楽版)
- ワーグナー/歌劇「ローエングリン」第2幕より
”エルザの大聖堂への行列” - A. リード(長生淳 編)/「オセロ」(管弦楽版)
- シェイクスピアに基づく5つの場面による交響的描写 - イベール/フルート協奏曲
- J.S.バッハ(ストコフスキー編)/アリア(弦楽合奏版)
- R.シュトラウス/楽劇「サロメ」より”7つのベールの踊り”
- ヴォーン・ウィリアムズ/イギリス民謡組曲よりマーチ
(丸谷明夫指揮、アンコール)
”エルザの大聖堂への行列”はプログラムの表記通りだが、考えてみると日本語として変だ。エルザは単数、でも一人では行列出来ない。故に”エルザの大聖堂への入場”の方がいいかも。
「風紋」は吹奏楽コンクール課題曲だが、これを作曲家自らオーケストラ版に編曲した2009年夏の初演を僕は岡山市で聴いている。
下野/大フィルは柔らかい響きで、たおやかで夢見るような楽想を奏でる。まるで印象派のようだ。前半は極上の弦の音色を堪能。後半は巧みなタクトでメリハリがあった。保科洋氏が来場されており(事務局から連絡が届かず、ご自分でチケットを購入されたとか!?)、曲が終わると丸ちゃんの招きでステージへ。「作曲家にとって作品は子供みたいなもので、御存知の通り子供は親の言うことを聞きません(会場笑い)。だから演奏家の方々に育てていただいていると思っています。今日はまた私の知らない新しい顔を見せてもらいました」と。
ワーグナー「エルザの大聖堂への入場」は日本アカデミー賞も受賞した大傑作「桐島、部活やめるってよ」で重要な役割を果たした。劇中で高校の吹奏楽部が合奏する。
今回の演奏は堂々として、大河の流れを連想させた。
リードの「オセロ」を編曲したのは吹奏楽にも数多くの楽曲を提供している長生淳。僕は「吹奏楽 meets オーケストラ」シリーズに皆勤しているが、正直今までのオーケストラ・アレンジ(by 中原達彦)はイマイチだった。しかしさすが真打ち登場!弦楽器と管楽器の対話を主体とする方法論で鮮やかな仕上がり。第1楽章「前奏曲」はド迫力、第2楽章「朝の音楽」は軽やかに舞い、第3楽章「オセロとデズデモナ」は甘美な夢を描く。第4楽章「廷臣たちの入場」は華やかなファンファーレで第5楽章「デズデモナの死、終曲」は悲劇的で抗えない運命を感じさせた。
イベール/フルート協奏曲の独奏は瀬尾和紀。これは感心しなかった。音の粒は揃っているがベタッとした吹き方で軽やかさ、優雅さに欠ける。日本人なら僕は工藤重典(1980年ジャン=ピエール・ランパル国際フルート・
下野の指揮もちょっと生真面目過ぎて、フランス音楽なのだからもっと遊び心とかエスプリが欲しかった。
ストコフスキー編曲のアリアは冒頭の旋律を意表を突いてチェロが弾くのが良かった。前世紀のロマンティックなバッハも悪くない。
「サロメ」はR.シュトラウスの依頼で開発された楽器ヘッケルフォーン(バリトンオーボエ)の紹介が興味深かった。演奏はエキゾチックで、ベールがまとわり付くような不気味さを感じさせた。そしてクライマックスでは音の塊が飛んで来る迫力があった。
アンコールで丸ちゃんが指揮した「イギリス民謡組曲」はキビキビ溌剌とした演奏だった。
イベールのコンチェルトは残念な出来だったが、総じて満足度の高い演奏会だった。是非次はカレル・フサ/プラハ1968年の音楽をお願いしたい。頼みまっせ!
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