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チェコの巨匠ラドミル・エリシュカのドヴォルザーク~大阪フィル 定期

10/21(月)ザ・シンフォニーホールへ。ラドミル・エリシュカ/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴いた。オール・ドヴォルザーク・プログラムで、

  • 序曲「謝肉祭」
  • 交響詩「野ばと」
  • 交響曲 第9番「新世界より」

エリシュカはチェコのズデーテン地方出身であり、今年6月までチェコ・ドヴォルザーク協会会長を務めていた。現在82歳。ヤクブ・フィルシャ(東京都交響楽団プリンシパル・ゲスト・コンダクター)は彼の教え子。

上記レビューで僕はエリシュカの「我が祖国」を”肉食系”と評した。それは今回のドヴォルザークでも当てはまる。

謝肉祭」はキキリと引き締まった演奏。と同時に繊細なアンサンブルを聴かせ、隅々まで指揮者の目が行き届いている。歌心があり、精悍で矍鑠(かくしゃく)たる解釈だった。

野ばと」は冒頭のアンダンテ、葬送行進曲から確固たるリズム感を有している。結婚式の場面に至ると生命力に満ち、パワフル。やがて野鳩の告発で夫を毒殺した未亡人は投身自殺する。音楽は運命の女神の過酷さを克明に描く。そしてエピローグには浄化された静寂感があった。

休憩を挟み「新世界より」。第1楽章提示部など繰り返しは一切なし。音尻は溜めずスッと減衰し、水捌けがよく潔い。テンポは遅めでたくましい大地、土の匂いを感じさせる。フルートとオーボエが黒人霊歌を彷彿とさせる第2主題を奏でた時、ヴァイオリンがノン・ヴィブラートで弾いたのでハッ!とさせられた。

第2楽章は荒野に吹きすさぶ風を連想させる。郷愁、寂寞とした孤独感。僕はこのシンフォニーを小学生の時から親しんでいるわけだが、今まで第2楽章後半に無音、ゲネラル・パウゼ(総休止)がある意味、その意図がよく分からなかった。しかし今回のエリシュカを聴いて初めて得心がいった。そうか、アメリカ大陸に単身渡った作曲家自身の心の空白だったのだ(その時家族はボヘミアにいた)。

第3楽章は狩猟の音楽。”肉食系指揮者”エリシュカの面目躍如である。狙った獲物は決して逃さない。

そして冒頭部で大陸横断鉄道の蒸気機関車が重々しく加速しながら出発する第4楽章(ドヴォルザークは鉄道マニアだった)。弦は粘っこくうねり、強烈なインパクトを聴衆に与える。自然が吠える!最早アメリカ大陸と作曲家の故郷ボヘミアのそれが渾然一体となり、見分けがつかない。強靭で筋肉質の音楽が展開され、ティンパニが強打し炸裂するフィナーレへなだれ込む。エリシュカの万感の想いが込められた空前絶後、圧巻のパフォーマンスであった。

耳タコの「新世界より」がこれほど新鮮に聴こえたことは未だ嘗てなかった。エリシュカ、恐るべき巨人である。

この演奏はNHKが収録しており、FMで放送される予定(日時不明)。

ただ残念なのは、「新世界より」第1楽章序奏の簡単な箇所でトランペットが音を外したこと。ラジオのリスナーの皆さん、ごめんなさい。大フィルの金管奏者は本当に下手くそなのです。はっきり言って淀川工科高等学校や大阪桐蔭高等学校など吹奏楽コンクール金賞校の生徒の方がよっぽど上手い。情けない。ツイッターである方が「オーケストラ奏者にも戦力外通告を出せる仕組みはできないものか」と嘆いておられたが、僕も切実にそう想います。

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コメント

こんばんは
素晴らしい演奏でした、あのパウゼは本当に印象的で明確なエリシュカさんの意志が感じ取れました。
終わって女性の演奏者の手を次々労って〜若さの秘訣かもですね!

2日目は2部 ホルントップに小さな傷がポロポロ(≧∇≦)
終楽章では決まってたけど・・・

投稿: jupiter_mimi | 2013年10月22日 (火) 22時42分

jupiterさん、コメントありがとうございます。

無音に語らせる−エリシュカの至芸ですね。

是非次はドヴォルザーク/交響曲 第7-8番あたりを彼のタクトで聴きたいものです。6番でもいいですが。

それにしてもトランペットとホルンは本当に大フィルのアキレス腱ですねぇ。やれやれ……。

投稿: 雅哉 | 2013年10月22日 (火) 23時19分

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