カンヌ国際映画祭審査員賞受賞「そして父になる」
評価:A
既に海外230カ国での公開が決まっている。英題は"Like Father, Like Son"。公式サイトはこちら。
カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。審査委員長だったスティーヴン・スピルバーグが絶賛し、早速彼が率いる映画会社ドリームワークスがアメリカでのリメイク権を獲得した。契約書にサインするために渡米した是枝裕和監督とスピルバーグとの対談の様子は→こちら。
オリジナル・シナリオだが、沖縄で実際に起った事件を取材したルポルタージュ「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年」が参考書籍としてクレジットされている。
福山雅治という役者は生活感がなく、所帯持ちというイメージとは程遠かったので(実生活でも独身だし)父親役というのが不思議だったが、映画を観るとエリート風を吹かせる実に嫌な奴でピッタリだった。見事なキャスティングである。
赤ちゃん取り違いという事件を契機にそれまで全く接点がなかったふたつの家族が交わることになる。福山雅治はバリバリの企業戦士で「ホテルみたいな」高級タワーマンションで暮らしている。一方のリリー・フランキーは下町の見すぼらしい電気屋。この所得格差・生活格差のぶつかり合いでドラマが生まれる。シナリオが実に上手い。
親と子の絆とは「血のつながり」なのか?それとも「一緒に過ごした時間」なのか?奥深いテーマである。
グレン・グールドが演奏するJ.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」(テンポが遅い1981年版)が使用されている。グールドの唸り声までバッチリ聞こえた。
実は映画で「ゴルトベルク変奏曲」が用いられるのはよくあることで、「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターのお気に入りが「ゴルトベルク変奏曲」だし、細田守監督のアニメーション「時をかける少女」でも印象的に使われている。
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