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2013年10月

堀米ゆず子/バッハ&ブラームス プロジェクト 《全6回シリーズ》

10月20日(日)兵庫県立芸術文化センターへ。

Hori

堀米ゆず子(ヴァイオリン)、山口裕之(第二ヴァイオリン)、小倉幸子(ヴィオラ)、辻本玲(チェロ)、リュック・ドゥヴォス(ピアノ)で、

  • ブラームス/ピアノ五重奏曲
  • ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ 第3番
  • J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番
  • J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番よりラルゴ
    (アンコール)

バッハ&ブラームス プロジェクトの第1回目。

ブラームスのクインテットは強く訴えかけてくる雄弁な演奏。特にチェロが素晴らしい。第3楽章なんか獰猛に挑みかかってくるような印象を受けた。第4楽章は音楽がうねる。ただヴィオラがおとなしかったのが残念。他の奏者が肉食系なのに対し、ヴィオラだけ草食系という感じ。

ブラームスのソナタは内省的。苦渋の表現をじっくりと味わった。

ヴィブラートを抑えたバッハもなかなか良かった。

日本の弦楽奏者は非常に優秀で、堀米さんをはじめ世界的にもトップ・クラスの人が多く、わざわざ高い料金を払って外国人演奏家を聴く必要がないのがありがたい。今回は3,000円也。このシリーズはこれからも足を運ぶつもり。

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劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語

評価:A-

Madomagi

公式サイトはこちら

オリジナルTVシリーズに対する僕の評価は下記に書いたがAAA(トリプル・エー)である。

新編について。斬新な映像や音楽は文句なしにA、しかしプロット・シナリオが弱いのでB、総合でA-B+と判断した。

オリジナルTVシリーズはパーフェクトな作品で綺麗に完結しており、結局どんな物語であろうと蛇足にしかなり得なかった。そういうことだ。

TVシリーズの第3話は衝撃的だった。震撼したと言い換えてもいい。世界の様相が一気に反転した。その驚きが「叛逆の物語」には欠けている。

(暁美)ほむらちゃんのコスチューム七変化とか、魔法少女5人のチーム・プレイとか、《萌え》ポイントは幾つもある。そもそも鹿目まどか、美樹さやか、巴マミらの活躍をもう一度見られるというだけで、ファンにとっては嬉しいだろう。

ただ一般観客の観点に立てば、例えば5人全員の変身シーンを立て続けに全部見せられたら冗長な感は否めないし、ハッキリ言うと緩い。つまり同人誌的ノリなんだよね。

しかしヴィジュアル面では申し分ない。特に劇団イヌカレーによる洗練された異空間設計デザインが圧倒的に素晴らしい。日本のアニメーションが到達した極北であり、その途轍もないクオリティは最早アートである。絵画のようにじっくり鑑賞する価値は十分ある。

以下プロットの問題点について考察する(ネタバレあり)。

 

  • ネタバレ注意!!

 

オリジナルTVシリーズは最後に「過去から未来までの少女たちの絶望を救済する」という壮大なスケールのテーマである。しかし新編「叛逆の物語」は「まどかが存在しない世界に耐えられないほむらが、まどかを取り戻す」物語になっている。LOVE!まどか♡ーつまりあくまで個人的問題であって、矮小化していると言わざるを得ない。

また新編の世界は魔女化寸前であったほむら自身(の観念)が作り上げたものだということが後半になって判明する。すると冒頭部、朝の場面のまどかの目覚め、家族との会話は完全に矛盾する。なぜならほむらはその場に居ないので、その情景を再現(再構成)出来る筈はないのだ。SF的に論理が破綻しており、無理がある。

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大阪交響楽団でドビュッシー三昧

10月8日(金)ザ・シンフォニーホールへ。

矢崎彦太郎/大阪交響楽団でオール・ドビュッシー・プログラムを聴いた。

  • 牧神の午後への前奏曲
  • ピアノと管弦楽のための幻想曲
    デュラン新全集版(クリティック・エディション)
  • バレエ音楽「遊戯」
    デュラン新全集版(クリティック・エディション)
  • 交響詩「海」
    デュラン新全集版(クリティック・エディション)

矢崎さんはフランス音楽のスペシャリスト。これまでも大阪交響楽団と組んでフランスものの卓越した解釈を聴かせてくれたが、今回も申し分なかった。トレビアン!

しばしば聴く機会のある「牧神」と「海」を最初と最後に持ってきて、珍しい「幻想曲」と「遊戯」を挟む構成。「幻想曲」が20歳代、「牧神」が30代、「海」が40代で「遊戯」が50代の作曲。作風の変遷がわかる趣向も面白い。

牧神の午後への前奏曲」はフルートの柔らかく円やかな音色が魅力。小林志穂さんの妙技が光る(関西では小林さんと日本センチュリー交響楽団のニコリンヌ・ピエルーがツートップだと想う)。ゆったりしたテンポで、押しては引くさざなみのような解釈。

幻想曲」のピアノ独奏は児玉麻里さん。オレンジ色の変なドレスで「何じゃそりゃ!?」と想ったが、演奏は達者。繊細で軽やか。第3楽章アレグロ・モルトはノリノリだった。

遊戯」には艶かしい色気と躍動感があった。

」は光と影が織りなす濃淡のグラデーションが魅力的。

フランス印象派と一括りにされるが、音色の濃淡が特徴的なドビュッシーに対し、ラヴェルは色彩感がカラフルである。この違いはラヴェルの性癖に由来するのではないかと僕は考えている。

一方、ドビュッシーがイメージした北斎の木版画「神奈川沖浪裏(富獄百景)」はそれほど多くの色を用いていない。

Sea

ドビュッシーの個展ともいうべき、小粋で素敵な演奏会だった。

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ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(古川雄大×城田優×フランク莉奈)

10月24日(木)梅田芸術劇場へ。

フランス産ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」を観劇。

Rj1

前回(2011年)の感想は下記。

Rj2

とにかく小池修一郎(宝塚歌劇団所属)の演出が素晴らしい。古代ローマ遺跡の修復現場(現代;スマホも登場)にキャピュレット家とモンタギュー家の亡霊が立ち現れ闘争を繰り広げているという設定で、人と人(国家と国家)の諍いは古(いにしえ)から絶えることなく繰り返されているという物語の普遍性を表現している。また「死」のダンサーは上半身裸で長髪。これはモーリス・ベジャール振付の「ボレロ」を踊ったジョルジュ・ドンを彷彿とさせるし、十字架上のイエス・キリストも暗示している(「死」の背中には十字架が描かれている)。この戯曲はロミオとジュリエットの死で両家が和解に至るのだが、それはつまりイエスが自らの死をもって人類を救済することになぞらえている訳だ。読みが深い。

ロミオ:古川雄大の第一印象は「背が高っ!(181cm)」「顔が小さっ!」顔は松田翔太に似ているかな。優男でロミオに合っていると想ったが、ただ声の張りや声量がないのが残念だった。「君は石丸幹二か!?」と内心でツッコミを入れた。

ジュリエット:フランク莉奈は特にラストの霊廟の場面などフランス人形みたいに美しく可憐で、ため息が出た。もうそれだけで充分だ。

城田優(身長190cm)の「キレた」ティボルトは最高だった。観ていてニヤニヤした。立ち姿が決まっていて耽美。3年前に彼のロミオを観たときは歌に不満があったのだが、ボイス・トレーニングを積んだのか随分上手くなった。今回は文句なし!来年のファントムも愉しみだ。

キャピュレット卿:石川禅の歌は聴き応えあり、演技に味がある。

またアンサンブルのダンスが凄かったことも特筆しておきたい。

演出を含め日本演劇界のレベルの高さを見せつける傑出した作品である。思い返せば僕が舞台ミュージカルを初めて観たのは高校生の時、劇団四季の「ウエストサイド物語」@倉敷市民会館だった。今では考えられないことだが、あの頃はバックダンサーが転倒したりしていた。隔世の感がある。

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チェコの巨匠ラドミル・エリシュカのドヴォルザーク~大阪フィル 定期

10/21(月)ザ・シンフォニーホールへ。ラドミル・エリシュカ/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴いた。オール・ドヴォルザーク・プログラムで、

  • 序曲「謝肉祭」
  • 交響詩「野ばと」
  • 交響曲 第9番「新世界より」

エリシュカはチェコのズデーテン地方出身であり、今年6月までチェコ・ドヴォルザーク協会会長を務めていた。現在82歳。ヤクブ・フィルシャ(東京都交響楽団プリンシパル・ゲスト・コンダクター)は彼の教え子。

上記レビューで僕はエリシュカの「我が祖国」を”肉食系”と評した。それは今回のドヴォルザークでも当てはまる。

謝肉祭」はキキリと引き締まった演奏。と同時に繊細なアンサンブルを聴かせ、隅々まで指揮者の目が行き届いている。歌心があり、精悍で矍鑠(かくしゃく)たる解釈だった。

野ばと」は冒頭のアンダンテ、葬送行進曲から確固たるリズム感を有している。結婚式の場面に至ると生命力に満ち、パワフル。やがて野鳩の告発で夫を毒殺した未亡人は投身自殺する。音楽は運命の女神の過酷さを克明に描く。そしてエピローグには浄化された静寂感があった。

休憩を挟み「新世界より」。第1楽章提示部など繰り返しは一切なし。音尻は溜めずスッと減衰し、水捌けがよく潔い。テンポは遅めでたくましい大地、土の匂いを感じさせる。フルートとオーボエが黒人霊歌を彷彿とさせる第2主題を奏でた時、ヴァイオリンがノン・ヴィブラートで弾いたのでハッ!とさせられた。

第2楽章は荒野に吹きすさぶ風を連想させる。郷愁、寂寞とした孤独感。僕はこのシンフォニーを小学生の時から親しんでいるわけだが、今まで第2楽章後半に無音、ゲネラル・パウゼ(総休止)がある意味、その意図がよく分からなかった。しかし今回のエリシュカを聴いて初めて得心がいった。そうか、アメリカ大陸に単身渡った作曲家自身の心の空白だったのだ(その時家族はボヘミアにいた)。

第3楽章は狩猟の音楽。”肉食系指揮者”エリシュカの面目躍如である。狙った獲物は決して逃さない。

そして冒頭部で大陸横断鉄道の蒸気機関車が重々しく加速しながら出発する第4楽章(ドヴォルザークは鉄道マニアだった)。弦は粘っこくうねり、強烈なインパクトを聴衆に与える。自然が吠える!最早アメリカ大陸と作曲家の故郷ボヘミアのそれが渾然一体となり、見分けがつかない。強靭で筋肉質の音楽が展開され、ティンパニが強打し炸裂するフィナーレへなだれ込む。エリシュカの万感の想いが込められた空前絶後、圧巻のパフォーマンスであった。

耳タコの「新世界より」がこれほど新鮮に聴こえたことは未だ嘗てなかった。エリシュカ、恐るべき巨人である。

この演奏はNHKが収録しており、FMで放送される予定(日時不明)。

ただ残念なのは、「新世界より」第1楽章序奏の簡単な箇所でトランペットが音を外したこと。ラジオのリスナーの皆さん、ごめんなさい。大フィルの金管奏者は本当に下手くそなのです。はっきり言って淀川工科高等学校や大阪桐蔭高等学校など吹奏楽コンクール金賞校の生徒の方がよっぽど上手い。情けない。ツイッターである方が「オーケストラ奏者にも戦力外通告を出せる仕組みはできないものか」と嘆いておられたが、僕も切実にそう想います。

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シリーズ《映画音楽の巨匠たち》 第2回/ジェリー・ゴールドスミス 篇

前回から何と3年経過していた!

まずジェリー・ゴールドスミスについて記事を書きたいと想った切っ掛けについて語ろう。

先日WOWOWで「ニュースルーム」を観た。映画「ソーシャル・ネットワーク」を書いたアーロン・ソーキン企画・脚本でケーブル・ニュースの舞台裏を描くテレビ・ドラマだ。福島原発事故も取り上げられている。その第5話「ジャーナリストの条件」の番組企画会議の場面で映画「ルディ/涙のウィニング・ラン」が話題となり、それが実は伏線でラストに絡んでくる展開となる。僕は「ルディ」の音楽が大好きでサントラCDを25年くらい前から所有している。しかし映画を観たことはなかったので、この機会にレンタルしてみた。でも感心しなかった。体と体がぶつかり合うアメフトはあくまで獰猛な狩猟民族のスポーツだなと想った。日本人のような穏やかな農耕民族にはどうも性が合わない。だから我が国では人気がない。でもやはりジェリーの音楽は最高だった(試聴は→こちら!)。

ジェリー・ゴールドスミス(1929-2004)は気の毒な作曲家だ。シンフォニックな映画音楽を得意としたが、ジョン・ウィリアムズ(1932- )と同時代に生きたため、目立たない「知る人ぞ知る」存在だった。ジョンが光ならジェリーは影。太陽と月のような関係だった。ジョージ・ルーカスやスティーヴン・スピルバーグとの美味しい仕事は全てジョンに持って行かれ、ジェリーが担当するのはどちらかと言えばB級作品。ジェリーの朋友というべき映画監督はフランクリン・J・シャフナー(「猿の惑星」「パットン大戦車軍団」)だが、やはりスピルバーグと比べると弱いよね。トランペット・ソロによる勇壮な「スター・トレック」(1979)のテーマなんか、プロデューサーから「『スター・ウォーズ』(1977)みたいな曲を書いてよ」と依頼されたことが透けて見えるし、ジョンが「スーパーマン」(1978)で大ヒットを飛ばし、その後塵を拝したジェリーは「スーパーガール」(1984)の音楽をひっそりと担当している。「エイリアン」エンド・クレジットの音楽は勝手にハワード・ハンソン/交響曲 第2番「ロマンティック」に差し替えられるし、「レジェンド/光と闇の伝説」の音楽はスタジオの要請でタンジェリン・ドリームに全てに差し替えられるし(アメリカ公開版)、散々である。ジョン・ウィリアムズがこんな扱いを受けてことは一度もない。ジョンがアカデミー賞を5回受賞しているのに対し、ジェリーは1回のみ。余りにも不当な過小評価であろう。

ベストテンを選ぼうと想ったが、収まり切らなかった。

  1. カプリコン・1(1978)
  2. オーメン(1976)
  3. いつか見た青い空(1965)
  4. トゥルーナイト(1995)
  5. エイリアン(1979)
  6. 海流のなかの島々(1977)
  7. アンダー・ファイア(1983)
  8. チャイナタウン(1974)
  9. ルディ/涙のウイニング・ラン(1993)
  10. パピヨン(1973)
  11. スター・トレック(1979)
  12. 氷の微笑(1992)
  13. 猿の惑星(1968)
  14. ブルー・マックス(1966)
  15. 風とライオン(1975)

主要な作品は抑えているつもりだ。多くのジェリー・ファンにも納得できるチョイスの筈だと自負している。「『トータル・リコール』(1990)がどうして入っていないんだ!?」という怒りの声が上がるかも知れない。いや、あれは確かに名曲だけど「カプリコン1」そっくりだから……。「L.A.コンフィデンシャル」(1997)も「チャイナタウン」と被るから入れなかった。

カプリコン・1」 中学生の時におそらく僕が初めて聴いたジェリーの音楽。様々な映画音楽を集めたコンピレーション・アルバム(LPレコード)に収録されていた。衝撃を受けた。打楽器を中心に繰り広げられる血沸き肉踊るドコドコ・サウンド。低音金管群のパンチが効いた先鋭なリズム。燃えるね。映画本編を観れたのはそれから10年後くらいだが、こちらも面白かった。まず間違いなくピーター・ハイアムズ監督の最高傑作だろう。僕はこれを当時所属していた吹奏楽部で演ろうと中学校に録音テープを持参し力説したが、あっさり却下された。今では懐かしい想い出だ。また上述したが「トータル・リコール」も同趣向の楽曲である。試聴は→こちら

オーメン」 アカデミー作曲賞受賞。後にも先にもジェリーがオスカーを獲ったのはこれだけである。悪魔の賛美歌が戦慄的!素晴らしい。試聴は→こちら

いつか見た青い空」 口笛のイントロがいい(虹の彼方に)。そして呟くように密やかに弾かれるピアノの旋律。寂しいけれど清々しい名曲。アカデミー作曲賞ノミネート。試聴は→こちら

トゥルーナイト」 5世紀のイギリス。アーサー王と円卓の騎士の物語。兎に角、音楽が高貴!匂い立つ気品。エルガーの「威風堂々」やウォルトンの「王冠(戴冠行進曲)」「宝玉と王の杖」を彷彿とさせる。だからといって決して真似ではなく、独自の個性を有している。試聴は→こちら

エイリアン」 調性音楽と無調の間を揺蕩うようなトランペット・ソロが描く虚空。その雰囲気はフランツ・シュミットの交響曲第4番 第1楽章冒頭を彷彿とさせる。試聴は→こちら

海流のなかの島々」 アーネスト・ヘミングウェイ原作。フランス印象派のスタイルでドビュッシー「海」を彷彿とさせる。試聴は→こちら

アンダー・ファイア」 アカデミー作曲賞ノミネート。舞台はニカラグア。ギターをフィーチャーしたラテン音楽のノリ。熱い試聴は→こちら

チャイナタウン」 これはJAZZ。ハードボイルドだね。全篇に漂う虚しさがいい。アカデミー作曲賞ノミネート。試聴は→こちら

ルディ/涙のウィニング・ラン」 フルートによるテーマがしみじみと美しく、アメフトのシーンの音楽はカッケー!!これも燃える。フジテレビ「ハンマープライス」等に使用されているので、皆さんも聴いたことが必ずある筈。「嗚呼、あれか!」と首肯するだろう。試聴は→こちら

パピヨン」 アコーディオンの哀愁漂うテーマ音楽が印象深い。「猿の惑星」とは真逆で、メロディメーカーとしてのジェリーの面目躍如である。アカデミー作曲賞ノミネート。試聴は→こちら

スター・トレック」 アカデミー作曲賞ノミネート。オーケストレーションを担当しているアレクサンダー・カレッジはTVシリーズ「宇宙大作戦」の作曲家としても有名。カレッジによるテーマ音楽はJ・J・エイブラムスが監督したリブート版「スター・トレック」で復活した。試聴は→こちら

氷の微笑」 ひんやりとした肌触りが魅力的。アカデミー作曲賞ノミネート。

猿の惑星」 打楽器と金管楽器の衝撃音が中心に構成されている。メロディらしいものは皆無で無調音楽の世界が展開される。アカデミー作曲賞ノミネート。

ブルー・マックス」 第一次世界大戦におけるドイツ空軍のパイロットを描く。勇壮で開放感のある音楽。試聴は→こちら

風とライオン」 ジェリー版「アラビアのロレンス」だ。ホルンが咆哮する。アカデミー作曲賞ノミネート。試聴は→こちら

こうして眺めていくと、ジェリー・ゴールドスミスの音楽は無調からメロディアスな作品まで実に多彩である。多くの方にもっと聴いてもらいたい作曲家であり、この記事がその契機になれば幸いである。

第3回はさすがに3年もお待たせしないつもりだ。どうなるかは反響次第かな。という訳で、ふるってコメントをお寄せ下さい。次回はフランスのモーリス・ジャール(「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」「刑事ジョン・ブック 目撃者」「ゴースト/ニューヨークの幻」「いまを生きる」)あたりを検討中。

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神尾真由子&ホーヴァル・ギムゼ@いずみホール

10月10日(木)いずみホールへ。

ヴァイオリン:神尾真由子、ピアノ:ホーヴァル・ギムゼ(ノルウェー出身)によるデュオ・リサイタルを聴いた。

  • ラフマニノフ/ヴォカリーズ(ハイフェッツ編)
  • プロコフィエフ/バレエ音楽「シンデレラ」より5つの小品(フィヒテンゴリツ編)
  • メトネル/「2つのおとぎ話」Op.20より第1番(ハイフェッツ編)
  • メトネル/ヴァイオリン・ソナタ 第1番
  • プロコフィエフ/5つのメロディ
  • プロコフィエフ/ヴァイオリン・ソナタ 第2番

今回のプログラムの特徴は2つ挙げられるだろう。

  1. 全てロシア(旧ソ連)の作曲家
  2. メトネルのソナタ以外は編曲もの

プロコフィエフ「5つのメロディ」の原曲は「5つの歌曲」(ヴォカリーズ=歌詞のない歌)であり、ヴァイオリン・ソナタ 第2番の原曲はフルート・ソナタ。これを聴いたオイストラッフの依頼で作曲家自身が編曲した。

神尾さんを生で聴くのはこれが6回目。チャイコフスキー国際コンクールで優勝した直後の彼女の演奏は攻撃的であり、魂の内面から燃え上がる炎が強烈だった。

最近結婚した彼女は落ち着いて柔らかい表情になり、演奏の方も角が取れてまろやかになった。白のドレスで登場。

ラフマニノフの「ヴォカリーズ」から成熟した音楽が展開された。従来からの特徴である野太い低音も健在。

シンデレラ」には艶めかしらすら感じられ、躍動感があった。

メトネルには粘っこく濃厚なロマンティシズムがあった。時に優美で、ここぞという時には何かに駆り立てられるよう。雄弁な解釈。

プロコフィエフの音楽には怜悧で研ぎ澄まされた知性、簡素で硬質なモダニズムがある。そのソナタを神尾さんは物凄い集中力で挑み、吹き出そうとするを見事にコントロールしながらエレガントに弾き切った。圧巻のパフォーマンスであった。

アンコールは、

  • ショスタコーヴィチ/映画「馬あぶ」よりロマンス
  • リムスキー=コルサコフ/熊蜂の飛行(ハイフェッツ編)
  • チャイコフスキー/「懐かしい土地の想い出」よりメロディ

ショスタコーヴィチは骨太、熊蜂は史上最速で軽やか、そしてチャイコフスキーは豊かな歌を聴かせてくれた。

終わってみれば21時15分。ロシア音楽を堪能した。

来年4月に井上道義/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会に登場することが決まっている神尾さん(現時点で演目未定)。是非関西でもコルンゴルトのコンチェルトを聴かせて下さい!ちなみにミッキーはコルンゴルトのオペラ「死の都」を演奏会形式で1996年に日本初演している(京都市交響楽団 定期)。

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映画「地獄でなぜ悪い」

評価:B

Hell

公式サイトはこちら

テーマは《映画愛》。だからフランソワ・トリュフォー監督「アメリカの夜」とか、ピーター・ボグダノビッチ「ニッケルオデオン」、原田眞人「さらば映画の友よ」、大林宣彦「麗猫伝説」、ジョゼッペ・トルナトーレ「ニュー・シネマ・パラダイス」などに連なる系譜と言えるだろう。しかし本作がユニークなのは、その映画賛歌にクエンティン・タランティーノの血しぶきドバッ!!というテイストを加味したところにある。冒頭で「仁義なき戦い」のテーマをそのまま使っているのもタランティーノぽい。エンニオ・モリコーネそっくりの音楽(「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」デボラのテーマ)も流れるしね。

冒頭から夥しい血の量だ。身も蓋もない言い方をすれば悪趣味である。しかし既に「キル・ビル」とか「ジャンゴ 繋がれざる者」を体験済みなので、感覚が麻痺しているのか余り気にならなかった。

タランティーノと一線を画するのは登場人物全員が狂っている、つまりイッちゃっているところかな。

僕はそれなりに愉しめた。しかし一方、本作はあくまで映画マニアのためにのみ存在意義があるという気もする。例えば年に一回しか映画館に足を運ばない人にとっては無縁の作品だろう。決してお薦めしない。

二階堂ふみを初めて観たのは同じ園子温監督「ヒミズ」だった。その第一印象は「顔が宮崎あおいにそっくり!」実際、最初はあおいちゃんが出演しているのかと勘違いしたくらいだ。彼女をちょっと下品にした感じ。どうやら本人も似ていることを気にしているらしく、なんとか違いを鮮明に打ち出そうと必死に藻掻いている印象を受ける。「地獄でなぜ悪い」の二階堂は格好よかった。あおいちゃんには出来ない(演らない)役だ。この調子で突っ走れ!応援しているゼ。

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これだけは観ておきたいジャパニメーション(日本のアニメ)10選~推奨年齢つき

10本に厳選したので、各アニメーション作家(監督)1人につき1作のみに絞った。だって無制限にすると宮崎アニメが過半数とかになりかねないから。それから名作「アルプスの少女ハイジ」(高畑勲 監督)を入れるかどうか相当迷ったが、場面設定・画面構成(レイアウト)が宮崎駿なのでこれも対象外とした。

日本のアニメとアメリカのアニメの決定的違いは、日本には大人を対象とした作品が沢山あるということである。これはアニメはあくまでも子どもたちのためのものと信じて疑わないアメリカ人には到底考えられないことである。故に今回、どのくらいの年齢ならその作品を理解出来るかということも明記した。ガイダンスとして参考にして頂きたい。

ベスト10は製作年代順に並べた。短編・長編、劇映画・TVシリーズが混在している。順位は付けない。

  • 人魚(手塚治虫、1964)
  • 天空の城ラピュタ(宮崎駿、1986)
  • 機動警察パトレイバー2 the Movie(押井守、1993)
  • クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦(原恵一、2002)
  • 時をかける少女(細田守、2006)
  • 秒速5センチメートル(新海誠、2007)
  • ヱヴァンゲリヲン新劇場版(庵野秀明、2007-)
  • 四畳半神話大系(湯浅政明、2010)
  • 魔法少女まどか☆マギカ(新房昭之、2011)
  • 宇宙戦艦ヤマト2199(出渕裕、2013)

人魚」(小学生以上 推奨) 改めて言うまでもないことだが手塚治虫は漫画の神様である。しかしアニメーション作家としての才能には疑問が残る。漫画家業の片手間にやっていたわけだし、毎週納品しないといけないテレビ・アニメの過酷な環境下で、虫プロは同じ絵を何回も繰り返し使用する手抜きの手法を考案し、作品の質を下げた。宮崎駿は手塚の漫画家としての才能を賞賛しつつ、同時にアニメーション作家としての手塚を全否定しているが、無理からぬ事である。その中で僕は実験アニメーションの短編「人魚」(上映時間:8分)が大好きだ。手塚らしいペシミズムが全体を貫き、ドビュッシー/牧神への午後への前奏曲がピッタリと絵に寄り添っている。何とも哀しい作品である。

天空の城ラピュタ」(小学生以上 推奨) いまさら作品について紹介するまでもなかろう。日本人なら誰だって知っている。観てない方が非常識、最低限の教養である。宮崎アニメなら「ルパン三世カリオストロの城」「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「紅の豚」「千と千尋の神隠し」「風立ちぬ」(社会人以上 推奨)と置換可。

機動警察パトレイバー2 the Movie」(中学生以上 推奨) 押井守が世界を驚かせたのは何と言っても「攻殻機動隊」であろう。「マトリックス」などの映画に多大な影響を与えた。僕が個人的に一番好きなのは「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」。しかし客観的に評価してお勧めしたいのはこれである。現代の東京を舞台に軍事クーデターのシュミレーションをするという発想が凄い。ロボット・アニメというジャンルの枠を大胆に超えたリアリティがある。

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」(小学生以上 推奨) 原恵一監督は「クレしん」を離れて製作したアニメ「河童のクゥと夏休み」や「カラフル」よりも、断然「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国」や「戦国大合戦」の方がいい。ただ「オトナ帝国」は大阪万博とその時代へのノスタルジーなので、子供が観てもチンプンカンプンかも。大人なら泣けるけどね。「戦国大合戦」はあまりにも出来が良かったので、後に草彅剛、新垣結衣主演で「BALLAD 名もなき恋のうた」という実写映画になっている。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞毎日映画コンクール・アニメーション映画賞受賞。

時をかける少女」(中学生以上 推奨) 当初「ハウルの動く城」の監督に抜擢されていた細田守監督が宮崎駿と折り合いがつかずスタジオ・ジブリと決別し、マッドハウスで製作したアニメ。大林宣彦監督「時をかける少女」の後日談という裏設定になっている(そんなこと知らなくても十分愉しめるからご心配なく)。細田守監督は大林映画の大ファンなのだ。J.S.バッハ/ゴルトベルク変奏曲(ピアノ版)が印象的。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞毎日映画コンクール・アニメーション映画賞受賞。あと細田監督の「おおかみこどもの雨と雪」(高校生以上 推奨)も傑作だが、「サマーウォーズ」はご都合主義のシナリオに問題あり。

秒速5センチメートル」(社会人以上 推奨) 新海誠監督「雲のむこう、約束の場所」や「言の葉の庭」を観て、余りにもセンチメンタルで自己陶酔的な内容に「この人にはついて行けないわ」と閉口したものだが、「秒速5センチメートル」には見事にやられた!作品を貫く絶対的孤独感に打ちのめされたと言っても過言ではない。背景美術など作画も素晴らしい。3話からなる連作短編であり、最終話でヒロインが読んでいる本は村上春樹「蛍・納屋を焼く・その他の短編」やトルーマン・カポーティ「草の竪琴」(いずれも新潮文庫)なのだが、これが作品に密接にリンクしている。そして山崎まさよしの歌「One more time, One more chance」の使い方の上手さには舌を巻く。奇跡のコラボレーション。それぞれ好みがあろうが、僕が一番好きなエピソードは種子島が舞台となる第2話「コスモナウト」だ。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版」(中学生以上 推奨) 作品を理解するためには旧約・新約聖書の予備知識があった方がいい。ちなみにエヴァンゲリストとは福音を説く人のことであり、J.S.バッハ「マタイ受難曲」などにも登場する。あとイスラム教においてシト=使徒とは神の預言を託され、新たな律法を地上の民に伝える使命を負う者のことである。ムーサー(モーゼ)はユダヤ教徒への使徒であり、イーサー(イエス)はキリスト教徒への使徒、そしてムハンマド(モハメット)がイスラム教徒に遣わされた「最後の使徒」ということになる。貞本義行がキャラクターデザインする女の子は可愛いし、物語の前半は純粋にロボット・アニメとして愉しめる。ただTVシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」(1995-6)の後半、監督の庵野秀明が自意識の井戸をせっせと掘り始めて物語がグダグダになってしまった。いくら掘っても水が湧き出る筈もなく、空っぽなことを証明するだけなのに。毎週1話ずつテレビ局に納品するペースに製作が追いつかずスタッフも疲弊。最終話「世界の中心でアイを叫んだけもの」の作画は壊滅的で、作品の体(てい)をなしていない。そこで仕切り直し(リブート=再起動)となったのが新劇場版である。クオリティに磨きがかかり、初めは快調だった……。しかし第3作「Q」から次第に雲行きが怪しくなってきた。庵野はまた自意識の井戸を掘り始めたように見受けられる。再び我々観客は置き去りにされてしまうのだろうか?結論は第4作まで持ち越したい。

四畳半神話大系」(大学生/18歳以上 推奨) 森見登美彦は僕が大好きな作家で、特に彼の「夜は短し歩けよ乙女」は21世紀に書かれた最高のファンタジー小説だと信じて疑わない(アニメ化を切に希望!監督は押井守とか合いそう)。森見は京都大学農学部を卒業し京都在住。大半の作品が京都を舞台に設定されている。「四畳半神話大系」は大学生を主人公にしたパラレル・ワールド(平行世界)のお話だ。エンディング・アニメで象徴されるように四畳半がどんどん増殖していく。これは正直言って原作よりもアニメの方が出来がいいんじゃないだろうか?原作は4話構成だが、これをアニメ版は11話に再構成している。シリーズ構成・脚本は劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠(サマータイムマシーン・ブルース、曲がれ!スプーン)。卓越した仕事ぶりである。また実写も融合した湯浅政明の演出が素晴らしく、中村佑介(「夜は短し」表紙イラストを担当)のキャラクター原案も秀逸。特に僕は悪魔かメフィストフェレスみたいな”小津”が大好きだ。兎に角文句のつけようがない出来で、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門でテレビ作品として史上初の大賞を受賞した。なお湯浅監督の劇場アニメ「マインド・ゲーム」(社会人以上 推奨)も文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞し、同時に毎日映画コンクール大藤賞も攫っている。僕がアニメから真の狂気を感じたのは「マインド・ゲーム」だけだ。

魔法少女まどか☆マギカ」(中学生以上 推奨) 劇薬につき要注意。タイトルに騙されるな!決して小学生に観せてはいけない。特にテレビ版の第3話にはショックを受け、それが一生トラウマになるかも知れない。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞大賞受賞。日本SF大賞にもノミネートされ、宮部みゆきをして「よき企みがあるミステリー」と言わしめた。

なお、「まどマギ」劇場版地上波初放送とテレビ版再放送が10-11月にかけてあるのでお見逃しなく。詳しい情報は→こちら

宇宙戦艦ヤマト2199」(小学校高学年以上 推奨) テレビ・アニメとは俄に信じられない圧倒的クオリティ。放送1年前から4話ずつ先行劇場公開し、十分な準備期間を確保した成果である。1974年に放送された「宇宙戦艦ヤマト」のリメイクであり、その原典版で育ったアニメーターたちの熱い想い、畏敬の念がいっぱい詰まっている。「ヤマトってこんなに面白い話だったのか!」と驚かされる。特に反射衛星砲のアイディアには舌を巻いた。カッケー!新作オリジナル・エピソード第14話「魔女はささやく」も素晴らしい。21世紀でしかありえない内容である。また、敵であるガミラスの人々が魅力的に描かれているのがいいね。戦争に《正義の側》と《悪の側》なんてないんだ。ちなみに僕が好きなキャラクターは岬百合亜と次元潜航艦「UX-01」の艦長ヴォルフ・フラーケン。

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カンヌ国際映画祭審査員賞受賞「そして父になる」

評価:A

Like_father_like_son

既に海外230カ国での公開が決まっている。英題は"Like Father, Like Son"。公式サイトはこちら

カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。審査委員長だったスティーヴン・スピルバーグが絶賛し、早速彼が率いる映画会社ドリームワークスがアメリカでのリメイク権を獲得した。契約書にサインするために渡米した是枝裕和監督とスピルバーグとの対談の様子は→こちら

オリジナル・シナリオだが、沖縄で実際に起った事件を取材したルポルタージュ「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年」が参考書籍としてクレジットされている。

福山雅治という役者は生活感がなく、所帯持ちというイメージとは程遠かったので(実生活でも独身だし)父親役というのが不思議だったが、映画を観るとエリート風を吹かせる実に嫌な奴でピッタリだった。見事なキャスティングである。

赤ちゃん取り違いという事件を契機にそれまで全く接点がなかったふたつの家族が交わることになる。福山雅治はバリバリの企業戦士で「ホテルみたいな」高級タワーマンションで暮らしている。一方のリリー・フランキーは下町の見すぼらしい電気屋。この所得格差・生活格差のぶつかり合いでドラマが生まれる。シナリオが実に上手い。

親と子の絆とは「血のつながり」なのか?それとも「一緒に過ごした時間」なのか?奥深いテーマである。

グレン・グールドが演奏するJ.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」(テンポが遅い1981年版)が使用されている。グールドの唸り声までバッチリ聞こえた。

実は映画で「ゴルトベルク変奏曲」が用いられるのはよくあることで、「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターのお気に入りが「ゴルトベルク変奏曲」だし、細田守監督のアニメーション「時をかける少女」でも印象的に使われている。

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日本のテレビ・ドラマ(オールタイム)ベスト 10選~「岸辺のアルバム」から「あまちゃん」まで

映画は監督で選ぶ/テレビ・ドラマは脚本家で選ぶ。これは常識である。

歴代のテレビ・ドラマの中で印象深いものを厳選した。基本的に連続もので、単発ドラマは除外した(こちらは後述する)。また一作家一作に絞った。

  1. 向田邦子/阿修羅のごとく(昭和54-55年、1979-80)
  2. 山田太一/岸辺のアルバム(昭和52年、1977)
  3. 宮藤官九郎/あまちゃん(平成25年、2013)
  4. 三谷幸喜/王様のレストラン(平成7年、1995)
  5. 市川森一/黄金の日日(昭和53年、1978)
  6. 遊川和彦/女王の教室(平成17年、2005)
  7. 倉本聰/昨日、悲別で(昭和59年、1984)
  8. 大根仁(原作:久保ミツロウ)/モテキ(平成22年、2010)
  9. 田渕久美子(原作:宮尾登美子)/篤姫(平成20年、2008)
  10. 藤本有紀/ちりとてちん(平成19-20年、2007-8)

単発作品では順不同で

  • 市川森一/明日-1945年8月8日・長崎(昭和63年、1988)
  • 佐々木守(脚本)実相寺昭雄(監督)/「怪奇大作戦
     ~第25話「京都買います」(昭和44年、1969)
  • 桂千穂(脚本)大林宣彦(監督)/麗猫伝説(昭和58年、1983)
  • 岩井俊二(脚本・監督)/TVドラマシリーズ「If もしも」より
     「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
     (平成5年、1993)
  • 山田太一/今朝の秋(昭和62年、1987)

阿修羅のごとく」向田邦子は人間の性(さが)をえぐり出す。ドロドロと渦巻く人間の嫌な面が白日のもとに曝け出される。自伝的な「あ・うん」も名作だが、DVD化されていないのが残念。向田は台湾に旅行中、飛行機墜落事故で死去。享年51歳。本当に惜しい人をなくした。「阿修羅のごとく」映画版は別人が脚色しているので、ドラマ版を断固推す。

岸辺のアルバム」つい最近、漸くDVDが発売された。家族の崩壊をシビアに描く。物語が実際に多摩川であった水害(堤防が決壊し、家屋が崩壊・流出)とリンクしている。昭和の作品にしてはキワドイ表現もあり、安易なホームドラマではなく、かなり踏み込んだ内容になっている。山田太一は四流大学生たちの青春群像を描く「ふぞろいの林檎たち」もお勧め。ただしIIIはゴミ。

あまちゃん」は宮藤官九郎(クドカン)による見事なアイドル論である。東京一極集中から地方の時代へ(ジモドルの台頭)という現在進行形の潮流を取り入れ、3・11東日本大震災の絡め方も上手い。とにかく能年玲奈、橋本愛、有村架純ら登場する女の子たちが可愛い!観ていて元気になれる作品だ。

クドカンは江戸落語をテーマにした「タイガー&ドラゴン」や向田邦子賞を受賞した「うぬぼれ刑事」(←無茶苦茶可笑しい!)、そして風変わりなホームコメディ「11人もいる!」もお勧め。あと東野圭吾の推理小説を脚色した「流星の絆」は、はっきり言って原作よりドラマの方が面白い。

王様のレストラン」三谷幸喜はこの作品で向田邦子賞を打診されたが、「未だ僕には早い」と辞退している。馬鹿なことをしたもんだ。彼はその後本作を超える作品を書いていないし、未来永劫無理だろう。映画「がんばれベアーズ」を下敷きにしており、チーム・プレーがテーマという意味では「トイ・ストーリー」など一連のピクサー・アニメーション・スタジオ作品に通じるものがある。なお最終話のエピローグで三谷幸喜がカメオ出演しているが、彼の扮装はビリー・ワイルダー監督「あなただけ今晩は」のジャック・レモンへのオマージュである(三谷はビリー・ワイルダーに会うために渡米したくらい私淑している)。

市川森一の「黄金の日日」は三谷幸喜が一番好きな大河ドラマだそうだ。だから主演の松本幸四郎を「王様のレストラン」に迎えた。また「王様」で向田邦子賞を打診された時に辞退したのは、第1回受賞作が市川の「寂しいのはお前だけじゃない」であり、未だ自分はそのレベルに達していないと感じたからだそうである。港町・堺を舞台にしているのがいい。

遊川和彦は高視聴率を稼ぎ話題になった「家政婦のミタ」も傑作なので迷うところだが、ここは向田邦子賞を受賞した「女王の教室」を選んだ。小学校を舞台にいじめ問題を真正面から取り上げた姿勢を高く評価したい。映画「二十四の瞳」と見比べると興味深い事実が浮かび上がってくる。遊川は《人の悪意》を描くことが実に上手い。逆に彼が起用されたNHK朝ドラ「純と愛」はタイトルと裏腹に徹頭徹尾悪意に満ちた作品で、これは悲惨な失敗作であった。朝は「あまちゃん」みたいに爽やかでないとね。暗い気持ちで出勤したくないじゃない。

いや、皆さんが思っていることは分かるよ。倉本聰なら断然「北の国から」だろ!って言いたいんでしょ?「北の国から」が彼の代表作であることに異論はない。でもさぁ、誰もが認め、知っている作品を選んでも意味ないじゃない?だから僕はここで敢えて、余り見た人がいない「昨日、悲別で」を選んだ。この名作が幻になっている理由は再放送やビデオ・DVD化が一切されていないからだ。タップ・ダンサーになることを夢見て、北海道から上京してきた若者(天宮良)の物語。実はこの作品、「メモリー」などアンドリュー・ロイド=ウエバーのミュージカル「キャッツ」の音楽がふんだんに盛り込まれており、楽曲の二次使用が認められなかったのではないか?と考えている。あの時代はビデオ化まで考えて製作していなかったからね。あと「昨日、悲別で」のエンディングにフォークデュオ「風」の『22歳の別れ』が流れるのが心に残った。

モテキ」はフリーターの若者を主人公にした瑞々しい青春ドラマ。演出のテンポが良く、軽やか。これぞ平成の作品!という気がする。僕が一番お気に入りのエピソードは森山未來が満島ひかるに誘われて岩井俊二監督の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」のロケ地巡りをする回。これは爆笑ものだった。僕も大林宣彦監督の尾道三部作を観てロケ地巡りをしたクチなので、身に覚えがある。なお映画「モテキ」はテレビの続きだが、独立した作品として愉しめる。

篤姫」は激動の幕末をお姫様の視点から観た作品で、そこがユニーク。宮崎あおいや堺雅人など役者もいい。女性視聴者にも支持される大河ドラマとなった。

ちりとてちん」のお陰で大阪は数年間、空前の上方落語ブームに沸いた(同時期に江戸落語はクドカンの「タイガー&ドラゴン」で湧いた)。古典落語とプロットの結びつけが上手いし、上方落語の歴史・現状がよく分かる。ただラストの主人公の決意に、僕は未だ納得していない。

こうして10本を見てくると、向田邦子・山田太一・倉本聰・市川森一らが大活躍した昭和50年代こそがテレビ・ドラマの黄金期であったことがよく分かるであろう。

次に単発ドラマに移ろう。

市川森一の「明日」は長崎に原爆が投下される瞬間までの市井の人々のささやかなる一日の生活が描かれる。命の愛おしさ。市川は長崎出身である。原作は井上光晴。「明日」は映画版もあるが、僕はドラマ版の方が好き。

京都買います」は古都の美しさと醜さを赤裸々に描き秀逸。夢のようなラストシーンには唸った。あとフェルナンド・ソルが作曲したギター独奏曲「魔笛の主題による変奏曲」の使い方が素晴らしい。

麗猫伝説」は”化け猫映画”で一世を風靡した入江たか子と、その娘・若葉の共演作。プロットはビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」を下敷きにしている。

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」小学校・夏休み・花火・プール。奥菜恵の絶頂期が映像の中に永遠に封じ込められた。岩井俊二監督は少女の一瞬の輝きを捉える天才である。「LOVE LETTER」の酒井美紀や「花とアリス」の蒼井優もそうだよね。

今朝の秋」余命3ヶ月を宣告された息子(杉浦直樹)に対し父(笠智衆)は当初どう接すればいいか戸惑う。これは家族の物語である。残された人生をどう過ごすか、ターミナル・ケアについても問いかける不朽の名作。音楽は武満徹。

ちなみに2011年に週刊現代が「決定!懐かしのテレビドラマ ベスト100」を特集している。選者は中野翠(コラムニスト)、中森明夫(エッセイスト)、黒田昭彦(All Aboutドラマガイド)ら識者20人+編集部で構成される「ベストドラマ選定委員会」。その結果は、

  1. 山田太一/岸辺のアルバム
  2. 倉本聰/北の国から
  3. 山田太一/早春スケッチブック

となった。

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