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2013年10月 5日 (土)

これだけは観ておきたいジャパニメーション(日本のアニメ)10選~推奨年齢つき

10本に厳選したので、各アニメーション作家(監督)1人につき1作のみに絞った。だって無制限にすると宮崎アニメが過半数とかになりかねないから。それから名作「アルプスの少女ハイジ」(高畑勲 監督)を入れるかどうか相当迷ったが、場面設定・画面構成(レイアウト)が宮崎駿なのでこれも対象外とした。

日本のアニメとアメリカのアニメの決定的違いは、日本には大人を対象とした作品が沢山あるということである。これはアニメはあくまでも子どもたちのためのものと信じて疑わないアメリカ人には到底考えられないことである。故に今回、どのくらいの年齢ならその作品を理解出来るかということも明記した。ガイダンスとして参考にして頂きたい。

ベスト10は製作年代順に並べた。短編・長編、劇映画・TVシリーズが混在している。順位は付けない。

  • 人魚(手塚治虫、1964)
  • 天空の城ラピュタ(宮崎駿、1986)
  • 機動警察パトレイバー2 the Movie(押井守、1993)
  • クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦(原恵一、2002)
  • 時をかける少女(細田守、2006)
  • 秒速5センチメートル(新海誠、2007)
  • ヱヴァンゲリヲン新劇場版(庵野秀明、2007-)
  • 四畳半神話大系(湯浅政明、2010)
  • 魔法少女まどか☆マギカ(新房昭之、2011)
  • 宇宙戦艦ヤマト2199(出渕裕、2013)

人魚」(小学生以上 推奨) 改めて言うまでもないことだが手塚治虫は漫画の神様である。しかしアニメーション作家としての才能には疑問が残る。漫画家業の片手間にやっていたわけだし、毎週納品しないといけないテレビ・アニメの過酷な環境下で、虫プロは同じ絵を何回も繰り返し使用する手抜きの手法を考案し、作品の質を下げた。宮崎駿は手塚の漫画家としての才能を賞賛しつつ、同時にアニメーション作家としての手塚を全否定しているが、無理からぬ事である。その中で僕は実験アニメーションの短編「人魚」(上映時間:8分)が大好きだ。手塚らしいペシミズムが全体を貫き、ドビュッシー/牧神への午後への前奏曲がピッタリと絵に寄り添っている。何とも哀しい作品である。

天空の城ラピュタ」(小学生以上 推奨) いまさら作品について紹介するまでもなかろう。日本人なら誰だって知っている。観てない方が非常識、最低限の教養である。宮崎アニメなら「ルパン三世カリオストロの城」「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「紅の豚」「千と千尋の神隠し」「風立ちぬ」(社会人以上 推奨)と置換可。

機動警察パトレイバー2 the Movie」(中学生以上 推奨) 押井守が世界を驚かせたのは何と言っても「攻殻機動隊」であろう。「マトリックス」などの映画に多大な影響を与えた。僕が個人的に一番好きなのは「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」。しかし客観的に評価してお勧めしたいのはこれである。現代の東京を舞台に軍事クーデターのシュミレーションをするという発想が凄い。ロボット・アニメというジャンルの枠を大胆に超えたリアリティがある。

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」(小学生以上 推奨) 原恵一監督は「クレしん」を離れて製作したアニメ「河童のクゥと夏休み」や「カラフル」よりも、断然「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国」や「戦国大合戦」の方がいい。ただ「オトナ帝国」は大阪万博とその時代へのノスタルジーなので、子供が観てもチンプンカンプンかも。大人なら泣けるけどね。「戦国大合戦」はあまりにも出来が良かったので、後に草彅剛、新垣結衣主演で「BALLAD 名もなき恋のうた」という実写映画になっている。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞毎日映画コンクール・アニメーション映画賞受賞。

時をかける少女」(中学生以上 推奨) 当初「ハウルの動く城」の監督に抜擢されていた細田守監督が宮崎駿と折り合いがつかずスタジオ・ジブリと決別し、マッドハウスで製作したアニメ。大林宣彦監督「時をかける少女」の後日談という裏設定になっている(そんなこと知らなくても十分愉しめるからご心配なく)。細田守監督は大林映画の大ファンなのだ。J.S.バッハ/ゴルトベルク変奏曲(ピアノ版)が印象的。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞毎日映画コンクール・アニメーション映画賞受賞。あと細田監督の「おおかみこどもの雨と雪」(高校生以上 推奨)も傑作だが、「サマーウォーズ」はご都合主義のシナリオに問題あり。

秒速5センチメートル」(社会人以上 推奨) 新海誠監督「雲のむこう、約束の場所」や「言の葉の庭」を観て、余りにもセンチメンタルで自己陶酔的な内容に「この人にはついて行けないわ」と閉口したものだが、「秒速5センチメートル」には見事にやられた!作品を貫く絶対的孤独感に打ちのめされたと言っても過言ではない。背景美術など作画も素晴らしい。3話からなる連作短編であり、最終話でヒロインが読んでいる本は村上春樹「蛍・納屋を焼く・その他の短編」やトルーマン・カポーティ「草の竪琴」(いずれも新潮文庫)なのだが、これが作品に密接にリンクしている。そして山崎まさよしの歌「One more time, One more chance」の使い方の上手さには舌を巻く。奇跡のコラボレーション。それぞれ好みがあろうが、僕が一番好きなエピソードは種子島が舞台となる第2話「コスモナウト」だ。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版」(中学生以上 推奨) 作品を理解するためには旧約・新約聖書の予備知識があった方がいい。ちなみにエヴァンゲリストとは福音を説く人のことであり、J.S.バッハ「マタイ受難曲」などにも登場する。あとイスラム教においてシト=使徒とは神の預言を託され、新たな律法を地上の民に伝える使命を負う者のことである。ムーサー(モーゼ)はユダヤ教徒への使徒であり、イーサー(イエス)はキリスト教徒への使徒、そしてムハンマド(モハメット)がイスラム教徒に遣わされた「最後の使徒」ということになる。貞本義行がキャラクターデザインする女の子は可愛いし、物語の前半は純粋にロボット・アニメとして愉しめる。ただTVシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」(1995-6)の後半、監督の庵野秀明が自意識の井戸をせっせと掘り始めて物語がグダグダになってしまった。いくら掘っても水が湧き出る筈もなく、空っぽなことを証明するだけなのに。毎週1話ずつテレビ局に納品するペースに製作が追いつかずスタッフも疲弊。最終話「世界の中心でアイを叫んだけもの」の作画は壊滅的で、作品の体(てい)をなしていない。そこで仕切り直し(リブート=再起動)となったのが新劇場版である。クオリティに磨きがかかり、初めは快調だった……。しかし第3作「Q」から次第に雲行きが怪しくなってきた。庵野はまた自意識の井戸を掘り始めたように見受けられる。再び我々観客は置き去りにされてしまうのだろうか?結論は第4作まで持ち越したい。

四畳半神話大系」(大学生/18歳以上 推奨) 森見登美彦は僕が大好きな作家で、特に彼の「夜は短し歩けよ乙女」は21世紀に書かれた最高のファンタジー小説だと信じて疑わない(アニメ化を切に希望!監督は押井守とか合いそう)。森見は京都大学農学部を卒業し京都在住。大半の作品が京都を舞台に設定されている。「四畳半神話大系」は大学生を主人公にしたパラレル・ワールド(平行世界)のお話だ。エンディング・アニメで象徴されるように四畳半がどんどん増殖していく。これは正直言って原作よりもアニメの方が出来がいいんじゃないだろうか?原作は4話構成だが、これをアニメ版は11話に再構成している。シリーズ構成・脚本は劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠(サマータイムマシーン・ブルース、曲がれ!スプーン)。卓越した仕事ぶりである。また実写も融合した湯浅政明の演出が素晴らしく、中村佑介(「夜は短し」表紙イラストを担当)のキャラクター原案も秀逸。特に僕は悪魔かメフィストフェレスみたいな”小津”が大好きだ。兎に角文句のつけようがない出来で、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門でテレビ作品として史上初の大賞を受賞した。なお湯浅監督の劇場アニメ「マインド・ゲーム」(社会人以上 推奨)も文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞し、同時に毎日映画コンクール大藤賞も攫っている。僕がアニメから真の狂気を感じたのは「マインド・ゲーム」だけだ。

魔法少女まどか☆マギカ」(中学生以上 推奨) 劇薬につき要注意。タイトルに騙されるな!決して小学生に観せてはいけない。特にテレビ版の第3話にはショックを受け、それが一生トラウマになるかも知れない。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞大賞受賞。日本SF大賞にもノミネートされ、宮部みゆきをして「よき企みがあるミステリー」と言わしめた。

なお、「まどマギ」劇場版地上波初放送とテレビ版再放送が10-11月にかけてあるのでお見逃しなく。詳しい情報は→こちら

宇宙戦艦ヤマト2199」(小学校高学年以上 推奨) テレビ・アニメとは俄に信じられない圧倒的クオリティ。放送1年前から4話ずつ先行劇場公開し、十分な準備期間を確保した成果である。1974年に放送された「宇宙戦艦ヤマト」のリメイクであり、その原典版で育ったアニメーターたちの熱い想い、畏敬の念がいっぱい詰まっている。「ヤマトってこんなに面白い話だったのか!」と驚かされる。特に反射衛星砲のアイディアには舌を巻いた。カッケー!新作オリジナル・エピソード第14話「魔女はささやく」も素晴らしい。21世紀でしかありえない内容である。また、敵であるガミラスの人々が魅力的に描かれているのがいいね。戦争に《正義の側》と《悪の側》なんてないんだ。ちなみに僕が好きなキャラクターは岬百合亜と次元潜航艦「UX-01」の艦長ヴォルフ・フラーケン。

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