新演出版ミュージカル「レ・ミゼラブル」@大阪フェスティバルホール(オリジナル版との相違について)
9月12日(木)フェスティバルホールへ。
リニューアルされたミュージカル「レ・ミゼラブル」を観劇。
オリジナル・プロダクションの演出はジョン・ケアードとトレバー・ナンだったが、今回は演出にローレンス・コナーとジェームズ・パウエルを迎え、美術・衣装なども一新された。ローレンス・コナーは「ミス・サイゴン」の新演出も担当している。
新演出版「レ・ミゼ」の特徴はツアー公演を可能にするための装置の簡略化である。見せ場だったバリケードはしょぼくなり、盆(回転・廻り舞台)もなくなった。
しかしだからといって物足りないかというと、不思議とそんなことはなかった。結局、このミュージカルは作品自体に力があるからスペクタクルな仕掛け、こけおどしの趣向など必要ないということだ。
僕が一番注目したのは第2幕バリケードでの戦い。まず舞台が回転しないから戦死者から銃弾を集めるガブローシュ少年が狙撃される瞬間を観客に見せることが出来ない。そしてアンジョルラスの死体がバリケードで逆さ吊りになっている有名な場面をどう処理するのか?ということだった。
ガブローシュが撃たれる場面は音と照明効果で観客の想像に委ねる演出となった。これがイマジネーションを掻き立てられ、意外にもオリジナルより良かった。そしてアンジョルラスの死も、見事な解決方法が示された。ローレンス・コナーの上手さに舌を巻いた。
背景はターナーの絵を彷彿とさせ、要所でそれが動く(アニメーション)。またジャベール警部が投身自殺を図る場面はワイヤーが効果的に用いられており、感心することしきり。
エポニーヌが「On My Own」を歌う場面は外灯がひとつだけ点っていて、オリジナル・プロダクションと比べると「なんだか寂しいな」と想ったが、考えてみればこれは孤独を歌う詞だから、むしろ相応しいのかも知れない。
人物の顔の判別も難しい暗い照明とか、バルジャンが幼いコゼットと初めて合った時にグルグル振り回す演出とか、登場人物が死んだ時に照明が白色光に変わるとか、旧版を踏襲している場面もいくつかあった。
ジャン・バルジャンを演じるキム・ジュンヒョン(旧芸名:金田俊秀)は韓国出身。2005年劇団四季のオーディションに合格し「ライオン・キング」のムファサや「ジーザス・クライスト=スーパースター」のジーザス、「アイーダ」のラダメス役などを演じた。兎に角、声量が豊かで歌が素晴らしい。感動した!僕が今まで生で観た舞台の中でベスト・バルジャンかも知れない。
エポニーヌ役の昆夏美とマリウス役の山崎育三郎を観ながら、そういえばこの二人は「ロミオ&ジュリエット」のコンビだなと想い出した。
昆ちゃんは本当に声が綺麗で、情感を歌に込めることが出来る稀有な才能を持っている。島田歌穂のエポニーヌと遜色ないと断言しよう。是非彼女でキム@ミス・サイゴンが観たい!
コゼット:青山郁代、エポニーヌ:知念里奈、ジャベール:川口竜也は可も無く不可も無し。そこそこ。
テナルディエ:萬谷法英、マダム・テナルディエ:浦嶋りんこはもっとユーモアが欲しい。暗い物語の中で唯一笑いを取る役柄なのだから。歌にイッパイイッパイで余裕がない感じだった。
余談だが、新フェスティバルホールのこけら落とし公演フェニーチェ歌劇場「オテロ」のレビューでウォッシュレットがないことの苦情を書いたが、今回チェックすると設置されていたので感心した。
近々、別キャストで「レ・ミゼラブル」を観劇する予定。
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