「ビザンチウム」と「血とバラ」〜ドラキュラ映画論
評価:B+
映画公式(→こちら)で大林宣彦監督がこの映画を絶賛していたので、無条件で観る気になった。大林監督は僕にとって人生の"Master"なので、師の宣(のたま)う言葉は絶対なのだ。
女吸血鬼の話である。放浪するふたりの女性のうち年上のクララが途中、「カミラ」という偽名を使うが、貴方がドラキュラ・ファンならここでニヤリとすることだろう。何故ならアイルランド人作家シェリダン・レ・ファニュが1872年に書いた小説が「女吸血鬼カーミラ」であり、これを映画化したのがロジェ・ヴァディム監督「血とバラ」(1961)だからである。そしてその「血とバラ」にオマージュを捧げた16mm個人映画が大林宣彦監督の「EMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ」(1967)であった。ちなみに赤川次郎も「血とバラ」が大好きで、「血とバラ 懐かしの名画ミステリー」という小説を書いている。赤川と大林監督が「ふたり」「あした」「三毛猫ホームズ」などでタッグを組んでいるのはご承知の通り。「ビザンチウム」のニール・ジョーダン監督はアイルランド出身であり、本作が「血とバラ」を意識しているのは間違いない。彼は1994年に「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」を撮っており、余程ヴァンパイアものが好きなんだね。
僕は「ドラキュラ映画の3原則」として以下を提言したい。
- ドラキュラ映画は耽美でなければならない。
- ドラキュラ映画は切なくなくてはならない。
- ドラキュラ映画の登場人物たちは病弱でなければならない。
そして「ビザンチウム」はその条件を全て満たしている。Good job ! また「パンズ・ラビリンス」でアカデミー作曲賞にノミネートされたハビエル・ナバレテの音楽も美しく印象深かった。
ただ近年のヴァンパイア映画の中ではスウェーデン映画「ぼくのエリ 200歳の少女」をハリウッド・リメイクした「モールス」(LET ME IN)が一番の僕のお気に入りであり、それを超えることは出来なかった。余談だが吸血鬼をテーマにした萩尾望都の「ポーの一族」も大好きなマンガだ。耽美だねぇ〜。
ヒロインを演じたシアーシャ・ローナン(現在19歳)の可愛さの絶頂期は映画「つぐない」(2007)の頃だったと想う。「ラブリーボーン」(2009)になるとちょっと微妙。「つぐない」と比べると旬を過ぎた「ビザンチウム」のシアーシャは見る影もないが、比較さえしなければまぁ悪くもなかった。
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