仲道郁代/プレイエルとスタインウェイで聴くショパン
9月8日(日)兵庫県立芸術文化センターへ。
仲道郁代さんが2つの楽器を弾き分けるリサイタル。
- スタインウェイ D-274
88鍵 ピッチ442HZ 兵庫芸文所蔵 - プレイエル 1846年製 オリジナル楽器
85鍵 ピッチ430Hz ヤマモトコレクション所蔵
ショパンが亡くなる3年前に製作され、今回使用されたプレイエルを所蔵する山本宣夫さんと仲道さんのトークもあり。
オール・ショパン・プログラムで、
《スタインウェイ》
- 幻想即興曲
- ワルツ 第7番
- ワルツ 第6番「小犬」
《プレイエル》
- ワルツ 第6番「小犬」
- 12の練習曲 第1番 op.25-1 「エオリアン・ハープ」
- 12の練習曲 第12番 op.10-12 「革命」
- 12の練習曲 第3番 op.10-3 「別れの曲」
- バラード 第4番
- バラード 第1番
《スタインウェイ+プレイエル》交互に移動しながら
- ワルツ 第2番「華麗なる円舞曲」
《スタインウェイ》
- バラード 第3番
- 12の練習曲 第12番 op.10-12 「革命」
- ノクターン 第20番 遺作
- ポロネーズ 第6番「英雄」
仲道さんがプレイエルで弾くショパンを聴くのはこれが2回目。
プレイエルについての詳細、同時代のエラールとの違いは上記に詳しく書いているのでそちらをご覧あれ。この時使用されたのは1842年製だから、今回とは違う楽器ということになる。また仲道さんご自身も昨年、フランス貴族の邸宅から発見された1842年製のプレイエルを購入し自宅に所蔵されているとのこと。
ショパンは祖国ポーランドからパリに出てきて、そこでプレイエルと出会った。自分で音を作れるということで愛用したが、体調が悪いときは奏者の工夫が必要ないエラールを好んで弾いたという。
プレイエルはモダン・ピアノと比較し、弦の張力が弱く(半分以下)、ピッチが低い。また鍵盤の幅が狭く、押さえる深さ(モダン10mm、プレイエル6mm)や重さも異なる。さらにプレイエルの弦は全て平行に張られているが、モダン楽器は低音弦が交差している。これは音量(パワー)を出すことを求めた結果だという。だからプレイエルの方がすっきりクリアな響きがして、旋律(右手)を浮き立たす特徴があるそう。
仲道さんによると全体で20トンにも及ぶ張力がかかっているピアノは完全な「打楽器」であり、対するプレイエルは竪琴のように「かき鳴らす」感覚だと。
またモーツァルト時代のフォルテピアノは革に覆われたハンマーだったが、プレイエルはそれがフェルトになったそう。
ワルツ 第7番は歯切れよく軽やか、第6番「小犬」は瞬発力があり加速が小気味いい。
「エオリアン・ハープ」は優美で気品がある。プレイエルはセピア色の音色。
また「革命」は音が濁らない。「別れの曲」は呟くように。
バラード 第4番は作曲家の心の襞に触れ、優しく撫でるような演奏。
ノクターン 第20番は繊細な弱音が魅力的であった。
やっぱり弾き比べって面白い。オリジナル楽器(作曲家が耳にした音)を聴かないと、分からないニュアンスは確かにある。
アンコールはエルガー/愛の挨拶だった。
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