クヮルテット・アヴォス(ピアノ四重奏団)とブラームスの謎
8月6日(火)大阪倶楽部へ。
クヮルテット・アヴォスの演奏会を聴く。このグループはローマのサンタ・チェチーリア国立音楽院を卒業した若手有志によって2007年に結成された。メンバーは山田美怜(ヴァイオリン)、マルコ・ニルタ(ヴィオラ)、アレッシオ・ピアネッリ(チェロ)、マリオ・モントーレ(ピアノ)。山田さんは爽やかな美人だった。
- マーラー/ピアノ四重奏曲 イ短調
- シューマン/ピアノ四重奏曲 変ホ長調
- ブラームス/ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調
- モーツァルト/ピアノ四重奏曲 第1番 第3楽章 ロンド (アンコール)
シューマンのピアノ四重奏曲は変ホ長調(1842年)以外に、ハ短調(1829年)がある。
交響曲:4曲、弦楽四重奏曲:3曲、ピアノ五重奏曲:1曲、ピアノ三重奏曲:3曲、ヴァイオリン・ソナタ:3曲、ピアノ・ソナタ:3曲。何の数字だかお分かりになるだろうか?実はシューマンとブラームスが生涯にそれぞれ作曲した曲数である。これだけの一致を単なる偶然と片付けることが出来るだろうか?僕はそう想わない。ここにブラームスの意志を感じる。実にミステリアスだ。
シューマンとブラームスの交響曲の調性に隠された意図については下記記事で詳しく語った。
今回演奏されたシューマン/ピアノ四重奏曲 変ホ長調(1843年初演)とブラームス/ピアノ四重奏曲 第1番(1861年初演)にはひとつの共通点がある。いずれもクララ・シューマンが初演でピアノを弾いていることである。クララがふたりの作曲家にインスピレーションを与えたことは間違いない。何というミューズだろう!そんなことを考えながら聴いた。
マーラーは繊細なppで開始された。「悲劇の季節」を感じさせる、決然とした演奏。
シューマンの第1楽章は背筋がピンとしてのびやか、かつ、しなやか。第2楽章スケルツォは超高速で緊密。第3楽章アンダンテには歌心があり、甘美な夢を描く。フィナーレのヴィヴァーチェは各奏者が雄弁で生命力に満ちていた。
ブラームスの第1・2楽章を支配する感情は詠嘆。憂愁の秋、抗えぬ宿命を描く。第3楽章はクララへの想い。中間部では仮初の愛の勝利を宣言するようなアンセム(Anthem)となる。そしてハンガリー舞曲(ロマの歌と踊り)である第4楽章は激しい情熱とスピード感に溢れ、華麗な音楽。
選曲も良かったし、達者な室内楽グループで猛暑の中、わざわざ足を運んだ甲斐があった。
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