”モンスター・マスター”レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ/映画「パシフィック・リム」
「パシフィック・リム」はエンドロールの最後に「この映画をモンスター・マスター、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」というギレルモ・デル・トロ監督の献辞が登場する。
レイ・ハリーハウゼンはコマ撮りによるストップ・モーション・アニメーションの技法を用いて「シンドバット七回目の冒険」「アルゴ探検隊の大冒険」「タイタンの戦い」等を撮った人で、ジョージ・ルーカスはその訃報を聞き、「僕達のほとんどが子供の頃から彼(ハリーハウゼン)の影響を受けてきた。その存在なくして『スター・ウォーズ』は生まれなかった」とコメントしている。
一方、本多猪四郎は言うまでもなく「ゴジラ」「空の大怪獣ラドン」「フランケンシュタイン対地底怪獣」「マタンゴ」「美女と液体人間」の監督であり、「影武者」以降は演出補佐として黒澤明監督を支えた。大林宣彦監督によると黒澤映画「夢」に出演するため来日したマーティン・スコセッシ監督は撮影前のメイクの間中「ミスター・ホンダはどこにいる?」と尋ね、本多との対面を熱望したという(大林監督は「夢」のメイキングを撮った)。
ギレルモ・デル・トロはメキシコに生まれ、幼少時から日本のアニメや怪獣映画を観て育った。筋金入りの「オタク」である。例えば「パンズ・ラビリンス」撮影中に彼は主演の女の子に「風の谷のナウシカ」のコミック本をプレゼントし、また「パシフィック・リム」の撮影が佳境に入り疲労困憊していた菊地凛子を励ますために「となりのトトロ」を歌ってあげたという(これが英語だったのか日本語だったのか知りたいところだ)。
「パシフィック・リム」にはそういった日本のアニメーション/怪獣映画への愛が溢れている。公式サイトはこちら。
評価:A
いや~もう、無茶苦茶面白かった!ワクワクした。大阪のTOHOシネマズでは梅田・なんばを含め「2D字幕版」か「3D吹替版」の選択肢しかなくて随分迷った。しかし見世物小屋的怪獣映画だし、ここは3Dしかないでしょ!と選んだのだが大正解。違和感はなかった。笑ったのが菊地凛子が本人の声じゃなかったこと。何と林原めぐみ(「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイ)だった!これがまたすごく良かったんだ。
環太平洋防衛軍の司令官がカッケー!痺れた。またオタクの科学者コンビが可笑しい。そしてカイジュウの臓器密売業者ハンニバル・チャウ役でロン・パールマンが登場した時は拍手喝采した。「ヘルボーイ」「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」で既にデル・トロと組んでいる怪優である。
ロボットに乗り込むパイロットがいて(2人というのが新機軸)脳をシンクロ(映画では”ドリフト”と呼ばれる)させる点、次々と襲ってくる怪獣が人間の反撃手法を学習し進化していく点、ロボットの手から剣が現れて怪獣を引き裂く場面など「ヱヴァ」を彷彿とさせた。
兎に角、この映画が素晴らしいのはロボットと怪獣の質感、重量感である。最新鋭のVFXと音響効果が際立っている。3Dの立体感も抜群だった。必見。
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