宝塚雪組「若き日の唄は忘れじ」「ナルシス・ノアール II」(テレビ/映画版「蝉しぐれ」も絡めて)
8月25日(日)、梅田芸術劇場へ。宝塚雪組の全ツ(全国ツアー)大阪公演を観劇。
「若き日の唄は忘れじ」の原作は藤沢周平「蝉しぐれ」。1994年、紫苑ゆう、白城あやかを中心とした宝塚星組で初演された。その時の台本・演出は座付きの大関弘政。大関はこの作品をもって退団、現在は劇団わらび座の作・演出家として活躍している。今回の再演で演出を担当したのは和物で評価の高い大野拓史。
僕は「蝉しぐれ」の物語が好きだ。黒土三男が脚色したNHK金曜時代劇(公式サイト→こちら)は出色の出来だった。文四郎を演じる内野聖陽がはまり役だったし、典型的”悪代官”役の平幹二朗も本当に憎たらしくて最高だった。後に黒土三男は自ら脚本・監督し映画「蝉しぐれ」(公式サイト→こちら)を撮ったが、こちらは残念な出来というか、はっきり言って駄作だった。市川染五郎と木村佳乃もミス・キャスト。黒田は演出家として全くセンスがないし、役者の選択眼も節穴である。
さて宝塚版についてだ。兎に角、大関弘政の台本が素晴らしい。1時間35分という短い上演時間によくぞ原作をエッセンスを凝縮し、過不足ない作品に仕上げたなとほとほと感心する。音楽もいい。ただひとつだけミュージカルとしての難点を指摘するなら、最後に文四郎とお福が再会する場面に一切唄がないことかな?しかし劇伴に尺八や琴、鼓など和楽器を取り入れている所が気に入っているし、僕が知る範囲で宝塚歌劇団の和物の中で最高傑作ではないだろうか。月や笹薮など日本の美を強調した大野の演出もお見事。僕は初演の星組版をNHK-BSで観ているが、やっぱり生で鑑賞すると感動の度合いが違う。
「蝉しぐれ」の主題はストイックな愛だが、それに「秘剣村雨」というミステリアスな必殺技が重要な役割を果たし、非道な”悪代官”が登場したりとケレン味たっぷりで飽きさせない。優れたエンターテイメント作品である。
主役の壮一帆は声量がなく音程も不安定だが、ビジュアル的には文句なし。お福役の愛加 あゆは美人で歌唱力もあり、白城あやかに負けないくらい良かった。
さて、後半の「ナルシス・ノアール II」は作・演出/岡田敬二。岡田さんのショーはよくも悪くもクラシカルで安定感がある。逆に言えば斬新さとか驚きはないんだけれどね。例えばこの作品にはタンゴの名曲「ジェラシー」が登場するが、若い演出家ならここでピアソラを使用するだろう。でも品があるし、宝塚歌劇はそもそも「古臭く」ていいんじゃないだろうか?岡田さんが好むラベンダー色へのこだわりも健在だった。
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