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2013年7月24日 (水)

大植英次/大フィルでラヴェルの歌劇「子どもと魔法」ほか~音楽と色彩についての考察

7月23日(火)ザ・シンフォニーホールへ。

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • ブラームス(シェーンベルク 編)/ピアノ四重奏曲 第1番
  • ラヴェル/歌劇「子どもと魔法」(演奏会形式)

ラヴェルの独唱はステラ・ドゥフェクシス、インゲボルグ・ダンツ、天羽明惠、レイチェル・ギルモア、アネリー・ゾフィ・ミューラー、セバスティアン・ノアーク、ドミニク・ヴォルティッヒ、ルドルフ・ローゼン。合唱はザ・カレッジオペラハウス合唱団、大阪すみよし少年少女合唱団。

ブラームスのピアノ・カルテットはナチスを逃れアメリカに亡命したシェーンベルクが1937年に編曲し、翌38年にクレンペラー/ロサンゼルス・フィルの手で初演された。メランコリーが感じられ、ロマンティック。演奏は推進力があり、潤いのある音がうねる。たゆたうような浮遊感があり、根無し草のような印象を覚える。僕は村上春樹の小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の中で、主人公が自分のことを”空っぽの容器”と表現していたのを想い出した。つまり、ブラームスの音楽には人間の弱さがある。強靭な意志を持つベートーヴェンとは対極にある。そこに共感出来るのだ。なお未亡人となったクララ・シューマンをブラームスが終生愛し、独身を貫いたことは余りにも有名。このピアノ四重奏曲の初演もクララがピアノを弾いた。

一転して第4楽章は「ジプシー風ロンド」つまりハンガリー舞曲である。情熱的で血がたぎる。後半に登場する、ツィンバロンの響きを再現した箇所には驚愕する。魔術的とも言える。シェーンベルクはラヴェル同様にオーケストレーションの達人だったのだということがよく分かる。大植さんの解釈はケレン味たっぷりで、あざとい迄に極端にテンポを動かしてきたが、終楽章はこれでよかったと想う。

さて、ラヴェルは「子どもと魔法」(1925年初演)でピアノの弦の上に紙片を置くように指示しているが、これって1940年にジョン・ケージが「発明」したとされる、プリペアド・ピアノのはしりだよね?

チャイコフスキー、ラヴェル、プーランク、ブリテン、ニーノ・ロータ、ジョン・コリリアーノらゲイの作曲家たちを、他のストレートの作曲家たちと分かつのは、匂い立つ、鮮やかなだと想う。ラヴェルの音楽はとにかく響きがなのだ。

村上春樹のエッセイによるとプーランクは「私の音楽は、私がホモ·セクシュアルであることを抜きにしては成立しない」と語っているという。

ファッション・デザイナーにゲイが多いのも、この独特のと関係あるのではないか、と僕は考えている。

それに対しブラームスの音楽は、しばしば「いぶし銀」と表現されるようにモノトーンだ。

子供と魔法」はおどけた感じで、ユーモラスなオペラである。エレガントで妖しく、時に優しく微笑み、時に残酷にもなる夢の世界。

大植/大フィルはこのオペラの多彩な輝きを充分に表現し尽くした。また8人のソリストのうち7人までを欧米(主にドイツ)から招聘しており、声楽陣のレベルの高さが際立っていた。大植さんが今まで築いてきた人脈の力だろう。

特にレイチェル・ギルモア(火、うぐいす)が澄んだ美しいコロラトゥーラを聴かせてくれ、魅了された。彼女はどうやらアメリカ人らしい。

子供を演じたステラ・ドゥフェクシスはショート・ヘアでボーイッシュな雰囲気があり、チャーミング。すごく役に合っていた。

何よりも今回の定期は、選曲センスの勝利であった。演奏会形式ではあるが、豊穣なオペラの世界を堪能した。

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コメント

よかった

投稿: 大田 | 2013年7月28日 (日) 03時12分

レイチェルさん、とってもいい人です!

投稿: | 2013年8月 1日 (木) 21時24分

何時も楽しく拝読いたしております。”プログラミングの勝利”名言ですね。この定期公演の話しを書き始めると2018年2月2日までかかるので別のきかいで魔法の魔法があり自記筆譜のコピーをフランス20世紀協会から送られて来て様々な言葉の後ろに隠された冗談、皮肉など記されてありそれを書かずに羅列な音だけの音楽では無い秘密があり、沢山ある中一つ二つだけ書いてそれを読まれると反って欲求不満に成られる事間違えなし
又Brahms-Schönbergにも色々Mahler協会の事も入れてあって次回に回します。今日たまたまこのpageが出てきて確りと貴男のオーラに包まれ改心。トピックを絞って書きます。
内容の中に佐渡君、大植のところが写り僕が皆様が思っていらっしゃるだろうなと思う事が其のままかかれてあり訂正する為ではなく確りとつかんである事を裏ずけです。私が
Bernstein先生にお会い出来たのは1978年7月24日で佐渡君がお会いになったのが1987年8月約9年違います。皆様が色々な想像なさるのは、大変結構な事で我らエンターテイメントイッシュな人様に幸せを送る人生、当然色々な噂、スキャンダル、人間像を話題にして頂くのは本当に良い事で話題にもならなかったら反って心配致します。私が世界中の方々がBernstein先生の弟子(生徒)之は何も裏に隠された秘密など全く無く書面どうりで2Dの話で3Dでは在りません。僕は12年後一緒させていただき佐渡君は3年履歴書を読めば簡単な算数です。12年一緒の僕が3年の佐渡君と比べられても又く問題無く一番長く先生と御一緒のMTTが一番長いだけの事です。良くBernstein先生が仰っておられたのは世界中のプロのオーケストラ、学生のその時だけのオーケストラの練習の最初に必ず最初に言われていた事は’My friends lets make music TOGETHER !'先生にお聞きしたらNYフィル時代からお亡くなられた日1990年10月14日午前?時たまたま朝食を一緒になど何時も誘われ其の日も午前7時に朝食をと言われ参りましたら長男のアレックスがEiji
come here と先生の寝室に呼ばれ部屋に入るとアレックス、ジェイミー、ニーナ(長男、長女、次女)医者と看護婦、そして僕を入れて6人でお見送り致しました。お亡くなられる数秒前に一言(いえませんがもし僕が72歳になったら本を書くことに言われていますのでその時まで)全く想像を絶する短いセンテンスですが、未だに(23年前)夢に殆ど毎日の様に聞きます。その言葉を書けば即皆様が即納得できる内容です。とにかく先生が何時もおっしゃてた事は”一緒に音楽を作る方達お客様、学生全てのmankindは友だ”と毎日の様に仰られておられました。先生の最も大事な事は全ての音楽仲間は俺と平等だ。お前達に教える事は無い、自分の経験を分かち合えるのだ。また音楽会にいらっしゃったお客様も心で通じているから終了したときは皆仲間だ、レコードを聞いて下さってるかたもおなじだ。と毎回お会いした時約10回はお聞きしました。彼にとって一秒でも何らかの形で過ごされば皆同じ心を分かちあった仲間である。との事でお分かり頂けましたでしょうどっちの方が上、下を完全に守られていた先生の本心、之をお伝えしました。此処まで読まれたら貴男も僕と同じ弟子です。Bernstein先生は人が大好きで何時までも全く知らない方々音楽を全然分からない方々も同じ目線で何時までもお話なさったりお聞きに成ったりでの方で”人生は多数決では過ごせない”
一人一人お会いに成れる。之は毎日の奇跡で
先生は毎日奇跡が起こる人、違う人は奇跡など起こらないと思っている方にも時間をかけて説得生されていました。皆平等で入れるのは、音楽とは見る事も触る事も出来ない。出来るのは心に直接訴えて感じてもれたら之ほど素晴らしい人生はありえないだろう。
大植 英次

投稿: 大植英次 | 2013年8月30日 (金) 12時21分

大植さん、長文のメッセージをありがとうございます。バーンスタイン臨終の場にいらっしゃったのですね。驚きました。

彼がニューヨーク・フィルとアメリカ南部を演奏旅行中にホテルが黒人奏者の宿泊を拒否したので、それに激怒した彼は楽員全員の宿泊をキャンセルしたというエピソードを聞いております。

また僕が非常に興味深く感じるのは、バーンスタインが生涯唯一書いた映画音楽がエリア・カザン監督の「波止場」だという事実です(大植さん、大フィルでこの曲を是非演奏して下さい!!大好きなんです)。「キャンディード」はある意味赤狩りに対する風刺という側面がありますが、カザンは赤狩りで嫌疑をかけられた際、司法取引をして仲間(その中にはキャンディードの台本を書いたリリアン・ヘルマンを含む)を売った「裏切り者」です。この辺りにバーンスタインという人の懐の深さ、ヒューマニティを感じるのですが、いかがでしょうか?

投稿: 雅哉 | 2013年8月30日 (金) 18時49分

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