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室内楽の森へ~厳選!これだけは絶対聴いておきたい80曲 その3 《20世紀以降》

まずはこちらからどうぞ。

今回は20世紀以降の作品を取り扱う。

〈コダーイ/ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲〉(1914) 言うまでもなくコダーイ・ゾルターンの最高傑作は無伴奏チェロ・ソナタである。これは議論の余地がない。ただ室内楽の定義に当てはまらないので、代わりに二重奏曲を選んだ。ハンガリーの民族色豊か。どこか郷愁にも似た懐かしさを感じさせ、土の香りがする。

〈ディーリアス/弦楽四重奏曲〉(1916/19改訂) 第3楽章は使徒エリック・フェンビーが弦楽合奏用に編曲しており、「去り行くつばめ」として単独で演奏されることもしばしばある。過ぎゆく季節(多分、夏)を惜しみ、愛おしむかのように心に染み入る楽曲。フレデリック・ディーリアスはイギリスの商家に生まれたが両親はドイツ人である。22歳の時オレンジのプランテーションを学ばせるため3年間アメリカのフロリダ州に送られたが、仕事を放棄した。その後もノルウェーを放浪したりして(グリーグやシンディングと山でトレッキングしている)、最終的にパリ郊外のグレ=シュル=ロワンに居を構えた。だから余りイギリスの作曲家という気がしない。むしろCosmopolitan、自由人と呼ぶべきだろう。

〈ヒンデミット/ヴィオラ・ソナタ 作品11-4〉(1919) ヒンデミットはヴィオラ奏者としても活躍し、1920年に結成されたアマール弦楽四重奏団の一員でもあった。だからヴィオラ作品を書く時は他と比べて全然気合の入り方が違う。紛れもなく彼の最高傑作である。

レスピーギ/ドリア旋法による弦楽四重奏曲〉は「ローマの松」と同じ1924年に作曲された。ドリア旋法とは中世ヨーロッパの教会旋法のこと。レスピーギには古いリュートのための曲を弦楽合奏用に編曲した「リュートのための古風な舞曲とアリア」や、ピアノ独奏曲「グレゴリオ旋法による3つの前奏曲」をオーケストレーションした「教会のステンドグラス」などを書いており、古楽への憧れがある作曲家だ。古(いにしえ)の響き。しかし意外と激しい曲調。ブロドスキー四重奏団の演奏を推す。

〈ガーシュウィン/3つの前奏曲〉(1926) 元々はジャズやブルースの語法を内包するピアノ独奏曲。作曲家と親交があったヤッシャ・ハイフェッツによるヴァイオリン&ピアノ編曲版が有名。

〈ベルク/抒情組曲〉 十二音技法+無調音楽。初演は1927年。1980年代になり、ベルクが不倫相手に渡していた手稿譜がその娘により公開された。そこには第1ヴァイオリンのパートの下にボードレール「悪の華」の詩”深淵からの叫び”が書かれていた。詩の日本語訳は→こちら。つまりこれはヤナーチェク/「ないしょの手紙」同様、不倫がモチーフだったことが半世紀を経て初めて明らかにされたのだ。密やかな夜の音楽。ドロドロとした得体の知れない感情が渦巻く。

〈ヴィラ=ロボス/ショーロの形式による五重奏曲〉(1928) フルート,オーボエ,クラリネット,バスーン,ホルンのための五重奏曲である。ヴィラ=ロボスの作品ならソプラノと8名のチェロ奏者による「ブラジル風バッハ 第5番」を選ぼうかと当初考えていた。しかし有名な作品よりは陽の当たらない作品を取り上げようと、こちらにした。ショーロとは19世紀にリオ・デ・ジャネイロで興った、即興的ポピュラー音楽のスタイルである。「ブラジルのジャズ」と称されることもある。5つの楽器がそれぞれに主役を競い、火花を散らす。ラテンの血が滾(たぎ)る。

フランツ・シュミット/弦楽四重奏曲 ト長調は1929年に作曲された。調性と無調の間をたゆたう感じがなんとも言えない。その不安定さが魅力。

〈ロージャ/ハンガリー農民の歌による変奏曲〉(1929) ロージャ・ミクローシュ(英語読みでミクロス・ローザ)はハンガリーに生まれ、ハリウッドに渡り映画音楽作曲家になった。「白い恐怖」「二重生活」「ベン・ハー」で3度アカデミー作曲賞を受賞。このヴァイオリンとピアノのための曲を知っていれば、後に彼が作曲した映画音楽からハンガリー民謡のこだま(Echo)が聴こえてくるだろう。他に「北部ハンガリー民謡と踊り」「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」も素敵な曲だ。

ゴーベール/フルート・ソナタ 第3番(1933) 泣きたくなるくらい綺麗なメロディ。第1楽章は春のそよ風を感じさせる。第2楽章「間奏曲、牧歌」は軽やかで透明感がある。一転して第3楽章は活発で、子供たちがはしゃいでいるかのよう。ドビュッシーがもしフルート・ソナタを作曲していたら、こんな雰囲気になっていたのではないか?と想像の羽根を広げさせてくれる作品。

〈バルトーク/弦楽四重奏曲 第5番〉 バルトーク弦楽四重奏曲第4番第5番が傑出している。内面から沸き起こる衝動、ハンガリー民族音楽的リズムの激しさ、野性味(wild nature)。僕は第5番(1934)を推すが、第4番(1928)が一番好きという人も少なくない。

〈コープランド/六重奏曲〉 バレエ音楽「アパラチアの春」「ロデオ」「ビリー・ザ・キッド」で知られるアーロン・コープランドは”アメリカ(近代)音楽の父”である。クラリネット、ピアノ、弦楽のための六重奏曲は1937年に作曲された。西部開拓時代を思わせるフロンティア・スピリットに満ちている。コープランドは西部劇の映画音楽に多大な影響を与え、ジョン・ウィリアムズの楽曲も「華麗なる週末」(1969)、「11人のカウボーイ」(1971)、「7月4日に生まれて」(1989)、「プライベート・ライアン」(1998)などにコープランドの影を色濃く見ることが出来る。

〈バーンスタイン/クラリネット・ソナタ〉(1942) レニーにとって、出版された初めての作品。シンコペーションを多用し、ジャズテイスト満載。ノリがいい。

プロコフィエフ/フルートソナタは1943年に初演されたが、それを聴いたダヴィット・オイストラフからの依頼で、ヴァイオリン・ソナタ 第2番に生まれ変わり、44年に初演された。プロコフィエフの楽曲はどこかひんやりした冷たい感触がある。それは恐らく感情に溺れることのない、知性の輝きなのだ。

フランセ/木管五重奏曲 第1番(1948) 本当は最もお勧めしたいのが"L'Heure du berger"日本語に訳すと「恋人たちの時刻」「恋人たちの黄昏時」といった意味。バソン、ホルン、フルート、ピアノ、クラリネット、オーボエの六重奏。プーランク/六重奏曲と同じ編成。特に第3曲"Les petits nerveux"(神経質な子供たち)が軽妙洒脱で最高!最後にどんどん加速していく展開も愉しい。木管五重奏曲 第1番も「フランスの粋=ダンディズム」を感じさせる。

〈ヒナステラ/弦楽四重奏曲 第1番〉(1948) アルベルト・ヒナステラはアルゼンチンの作曲家。やはりラテンのノリだ。パンチが効いていてリズムが熱い。奔放な響き。ところが第3楽章になると一転、深い闇を描く。

ジョン・ケージ/4つのパートのための弦楽四重奏曲〉 ケージが1950年に作曲した "String Quartet in Four Parts"はそれぞれ次のような標題が付けられている。

  1. 静かに流れゆくこと (夏)
  2. ゆっくりと揺れ動くこと (秋)
  3. ほとんど動かないこと (冬)
  4. クオドリベット (春)

クオドリベット(Quodlibet)とは2つ以上のポピュラーソングを同時に演奏することで、対位法の一種。バッハ/ゴルトベルク変奏曲にも登場する。

ノン・ヴィブラート奏法による静謐なモノトーンの世界。五線譜の中にポツポツと音符が散らばっているよう。それは日本の石庭を連想させる。実際、ケージには「龍安寺」という作品がある。

〈バーバー/夏の音楽〉(1956) サミュエル・バーバーはアメリカの作曲家。弦楽四重奏曲 第1番 第2楽章を編曲した「弦楽のためのアダージョ」が余りにも有名(映画「プラトーン」などで使用された)。「夏の音楽」は木管五重奏曲。湿度が高くジメジメした日本の夏とは異なり、風通しの良い高原の爽やかさを感じさせる楽曲。

〈黛敏郎/プリペアド・ピアノと弦楽のための小品〉(1957) 小難しい前衛・ゲンダイ音楽というよりは、実験音楽という名称が相応しい。ピアノをいじくるとハープとか鉄琴みたいな、こんな音が出るんだ!という面白さ。独奏曲だがジョン・ケージ作曲「プリペアド・ピアノのためのソナタとインタリュード」もお勧め。

カステレード/笛吹きたちのヴァカンス(笛吹きの休日)〉(1962)はお洒落なフランス産フルート四重奏で、趣向が似た作品にボノー/ディヴェルティメントがある。後者はフルート四重奏にピアノ伴奏付き。

〈コリリアーノ/ヴァイオリン・ソナタ〉(1963) コリリアーノは映画「レッド・ヴァイオリン」でアカデミー作曲賞を受賞。それをヴァイオリン協奏曲にまとめたものや、独奏ヴァイオリンのための「レッド・ヴァイオリン奇想曲」もある。いずれも大好きな作品だ。瞑想的な「レッド・ヴァイオリン」に対してヴァイオリン・ソナタはリズミカルで躍動感がある。そしてカラフル。

〈ハーマン/航海の想い出〉(1967) 寂しいクラリネット五重奏曲である。バーナード・ハーマンは不朽の名作「市民ケーン」などの映画音楽作曲家として知られる。アルフレッド・ヒッチコック監督との10年に渡る蜜月(「サイコ」「めまい」「北北西に進路を取れ」)が破綻し(1966年の映画「引き裂かれたカーテン」で両者の関係は文字通り引き裂かれ、ヒッチコックはハーマンが書いた音楽をキャンセル。ジョン・アディソンに交代させた)、ハーマンは66年フランソワ・トリュフォー監督から招かれ、イギリス映画「華氏451」の音楽を作曲する。心に傷を負った哀しみの旅路。それはブラームス/クラリネット五重奏を彷彿とさせ、ハーマンの作品の中ではヒッチコックの「めまい」やブライアン・デ・パルマ監督の「愛のメモリー」に近い曲調と言えるだろう。

リゲティ/弦楽四重奏曲 第2番(1968)は皮下を無数の蟲が這いずり回り、耳の中で羽虫がブンブン唸っているような曲。

〈ウォルトン/ピアノ四重奏曲〉(1921/74改訂) イギリスのウィリアム・ウォルトンは理知的な作曲家である。感情に流されることなく、全てが完璧にコントロールされている。言い換えるなら「そつが無い」。それは反面、人間味に欠けるということにもなり、日本で余り知名度がない原因なのかも知れない。ウォルトンが他のイギリスの作曲家、例えばエルガー、ディーリアス、ヴォーン=ウィリアムズらと一線を画するのは、その明確なリズム感である。動的なのだ。

〈ブリテン/ラクリメ-ダウランド歌曲の投影〉(1976) ヴィオラとピアノのための楽曲。ジョン・ダウランド(1563-1626)はイギリスの作曲家。古(いにしえ)との対話である。ベンジャミン・ブリテンが作曲した有名な「青少年のための管弦楽入門」は別名「ヘンリー・パーセル(1659-1695)の主題による変奏曲とフーガ」と呼ばれる。同様の趣向と言えるだろう。弦楽四重奏版「シンプル・シンフォニー」もお勧め。

〈吉松隆/デジタルバード組曲〉(1982)  フルートとピアノのための作品。機械じかけのデジタルバードを主人公にした架空のバレエのための音楽からの組曲という設定。シリアスよりはポップ、アナログよりはデジタルという発想で書かれている。サクソフォンのために書かれたファジィバード・ソナタ第1楽章 Run,Bird 、第2楽章 Sing,Bird 、第3楽章 Fly,bird)も併せてどうぞ。吉松隆はNHK大河ドラマ「平清盛」で有名だが、他に映画「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」の音楽も担当していて、これもなかなか良い。

〈グラス/弦楽四重奏曲 第3番「MISHIMA」〉(1985) 緒形拳が三島由紀夫を演じたハリウッド映画「MISHIMA」(遺族の不興を買い、日本未公開)のために作曲された音楽をまとめたもの。クロノス・クァルテットがお勧め。映画のサントラもいい。こちらもクロノス・クァルテットが演奏しているが、他にパーカッション、ハープ、エレキギター、シンセサイザー(キーボード)などが参加している。全体を漂う浮遊感がいい。

〈グレツキ/弦楽四重奏曲 第2番「幻想曲風に」〉(1990/91) 瞑想的・思索的作品。心の襞の奥底にまで、音楽がヒタヒタと染み渡ってゆく感じ。ヘンリク・グレツキ(1933-2010)はポーランドの作曲家。ホロコーストを題材にした交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」CDは空前絶後の売上を記録。全英ポップス系ヒットチャートで第6位まで上り詰め、社会現象に発展した。

ナイマン/ソングス・フォー・トニー(1993)はサクソフォン四重奏で、亡くなった友人へ捧げられた痛切な哀歌。マイケル・ナイマンはイギリス人。ミニマル・ミュージックの騎手だが、同ジャンルの中でも飛び抜けてメロディアスな作曲家だと想う(久石譲さんも)。映画「ピアノ・レッスン」の音楽なんか大好きだなぁ。

〈ドアティ/歌え!フーヴァーFBI長官〉 エドガー・フーヴァー長官の人となりを知っていた方が楽しめるので、レオナルド・ディカプリオ主演クリント・イーストウッド監督の映画「エドガー」も併せてどうぞ。フーヴァーの声を編集しラップのように扱い、電話の音・タイプライター・銃声などをコラージュする。アメリカ国歌やサン=サーンスの「動物の謝肉祭」も登場。クロノス・クァルテットのアルバム「吠える!」に収録。マイケル・ドアティは交響曲第3番「フィラデルフィア物語」が有名。その第3楽章「ストコフスキーの鐘」は編曲され、しばしば吹奏楽コンクールでも演奏される。

譚 盾(タン・ドゥン)/Shuang Que〉は二胡と揚琴のアンサンブルで中国的。タン・ドゥンはまずアカデミー作曲賞を受賞した「グリーン・デスティニー」(原題: 臥虎蔵龍、英語題: Crouching Tiger, Hidden Dragon)から聴いて欲しい。また映画「HERO」のための音楽もお勧め。

〈ヴァスクス/弦楽四重奏曲 第2番「夏の歌」〉(1984) ペトリス・ヴァスクス(1946- )はラトヴィアの作曲家。静謐な叙事詩。鳥の声も聴こえる。エストニアのアルヴォ・ペルトの作風に近い印象を受ける。国がお隣同士だから共感性があるのだろう。

〈グバイドゥーリナ/弦楽四重奏曲 第4番〉(1993) ソフィア・グバイドゥーリナはロシア連邦タタールスタン共和国出身の作曲家。テープとの共演で特殊奏法が聴きどころ。特にマンドリン風に弾く技法が面白い。単一楽章。

カプースチン/フルート、チェロとピアノのための三重奏曲は1998年に作曲された。これをブラインドで聴いてウクライナの作曲家だと当てられる人は皆無だろう。お洒落で粋な正真正銘のJAZZ MUSIC。

〈マッケイ/ブレイクダウン・タンゴ〉 先鋭的リズムが無茶苦茶格好いい!吹奏楽コンクールでしばしば演奏される「レッドライン・タンゴ」(ウォルター・ビーラー記念作曲賞、ABAオストウォルド賞受賞)の室内楽版。

以上、3回に分けてお届けした。もし他に、推薦曲があればどんどんコメント欄にお書き下さい。室内楽についてあれこれ語り合いましょう。

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