映画「グランド・マスター」
評価:B
原題は「一代宗師」。映画公式サイトはこちら。
香港のウォン・カーウァイ(王家衛)監督作品で今まで観たことがあるのは「恋する惑星」「ブエノスアイレス」「花様年華」「2046」。全体の印象として際立っているのは映像がスタイリッシュであること。しかし物語自体はあってなきが如し。これらのあらすじを述べよと言われても、僕には回答不能である。恐らく多くの人がそうではないだろうか?つまりこの監督はストーリーを重視せず雰囲気が大切なのだ。僕は彼の映画をファッションだと考えている。オシャレな感じ、でも中身はない。決して否定しているのではない。そのファッション性を愉しめばいいと割り切っている。別に映画を観て人生について考察する必要はないだろう。その場限りの快感で十分じゃない?
で、「グランド・マスター」は正にそういう映画だった。地面で跳ね飛び散る雨の雫。回転する帽子。それらをスローモーションで捉えた究極の映像美にウットリ酔い痴れた。ワイヤーアクションを駆使したカンフーの戦闘シーン(武術指導は「酔拳」「マトリックス」「グリーン・デスティニー」のユエン・ウーピン)はさながらバレエである。しかし相変わらず物語性は希薄だ。繰り返されるカンフー・アクションに次第に飽きてくる。
チャン・ツィイーとマックス・チャンとの戦闘シーンで、脇を蒸気機関車が駆け抜けていくのだが、何時まで経っても走り続けているのには爆笑した。「一体、何両連結しているんだ!?」と思わずスクリーンにツッコミを入れた。
音楽は梅林茂。最後、チャン・ツィイーが阿片窟で気怠そうにアヘンを吸っている場面を観ながら、「まるで『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のロバート・デ・ニーロみたいだな」と考えていたら、音楽がいつの間にか本当にエンニオ・モリコーネが作曲した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』~”デボラのテーマ”に切り替わったのでびっくりした!へぇ、ウォン・カーウァイはセルジオ・レオーネ監督が好きだったんだね。まさかここでオマージュを捧げるとは想像だにしなかった。
この映画から学ぶべき教訓なんて何もないが、暇つぶしにどうぞ。
余談だが、今回の撮影監督はフランスのフィリップ・ル・スール。長年コンビを組んでいたクリストファー・ドイルとは決別したのだろうか?
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