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2013年6月

2013年6月29日 (土)

「4 Stars」レア・サロンガ、ラミン・カリムルー/世界で活躍するミュージカル・スター夢の競演!

6月27日(木)梅田芸術劇場へ。

「4 Stars-One World of Broadway Musicals」を鑑賞。世界的ミュージカル・スターによるガラ・コンサートだ。

4stars

出演者は以下。

レア・サロンガ:1989年にロンドンで初演されたミュージカル「ミス・サイゴン」キム役オリジナル・キャスト。ディズニー・アニメ「アラジン」のジャスミン姫、「ムーラン」のタイトルロールも歌った。また「レ・ミゼラブル」10周年記念コンサートではエポニーヌ役、25周年ではファンテーヌ役に抜擢された。

ラミン・カリムルー:「オペラ座の怪人」の続編「ラヴ・ネヴァー・ダイズ」ファントム役オリジナル・キャスト。また「オペラ座の怪人」25周年記念コンサートでもファントムに抜擢された。その後「レ・ミゼラブル」ロンドン公演でジャン・バルジャン役を務めた。「レ・ミゼラブル」25周年記念コンサートではアンジョルラスを演じた。

シエラ・ボーゲス:ディズニー製作によるブロードウェイ・ミュージカル「リトル・マーメイド」アリエル役オリジナル・キャスト。「オペラ座の怪人」ラスベガス版と25周年記念コンサート、「ラヴ・ネヴァー・ダイズ」ロンドン公演でクリスティーヌを演じた。

城田優:宮本亜門演出「スウィーニー・トッド」で水夫アンソニー役に起用される。小池修一郎演出ウィーン・ミュージカル「エリザベート」でトート、フレンチ・ミュージカル「ロミオとジュリエット」でロミオを演じ人気が爆発。NHK朝ドラ「純と愛」にも出演。

レアはフィリピン人、ラミンはカナダ育ちのイラン人、城田はスペインと日本のハーフ、シエラはアメリカ人と国際色豊か。そのルーツを活かした選曲もあった。

編曲・ピアノ・指揮はジェイソン・ロバート・ブラウン:オブ・ブロードウェイで上演されたミュージカル「ソングス・フォー・ア・ニュー・ワールド」や「ラスト・ファイブ・イヤーズ」を作詞・作曲した。29歳の時、ミュージカル「パレード」の楽曲でトニー賞を受賞。

曲目は、

 ★シカゴ「ALL THAT JAZZ」(全員)

  ~ロジャーズ&ハマースタイン特集~
 ★オクラホマ「美しい朝」(全員)
 ★フラワー・ドラム・ソング「Love Look Away」(レア)
 ★王様と私「仲良くしましょう(Getting To Know You)」(シエラ)
 ★南太平洋「魅惑の宵」(ラミン)
 ★回転木馬「You'll Never Walk Alone」(全員)

 ★ガイズ・アンド・ドールズ「Guys And Dolls」(ラミン、城田)

  ~ディズニー・アニメの世界~
 ★リトルマーメイド「Part of Your World」(シエラ)
 ★ムーラン「Reflection」(レア)
 ★アラジン「A Whole New World」(全員)

  ~スティーヴン・ソンドハイムの世界~
 ★カンパニー「Another Houndred People」(レア)、「Being Alive」(ラミン)
 ★スウィーニー・トッド「ジョアンナ」(城田)
 ★イントゥ・ザ・ウッズ「No One is Alone」(全員)

 ★ラヴ・ネバー・ダイズ「君の歌を聞けるまで('Til I Hear You Sing)」
 ★モーリー・イェストン版ファントム「YOU ARE MUSIC」(城田、シエラ)
 ★オペラ座の怪人「オペラ座の怪人」(ラミン、シエラ)
   「All I Ask of You」(城田、シエラ)、「The Music of the Night 」(ラミン) 

 ★レ・ミゼラブル「On My Own」(レア)、「Bring Him Home」(ラミン)
   「夢やぶれて」(シエラ) 

  ~4人が5つの言語で歌うコーナー~
 ★Remainder(日本語&英語、ラミン)
 ★Isabel(スペイン語、城田)
 ★Ikaw-あなた(フィリピン(タガログ)語、レア)
 ★歌劇「ボエーム」~ムゼッタのワルツ(イタリア語、シエラ)

 ★エリザベート「最後のダンス」(城田)
 ★ミス・サイゴン「Why, God, Why」(ラミン)
   「Last Night of The World」(ラミン、レア)、「命をあげよう」(レア) 
 ★Godspell「Bless The Lord」(全員)
 ★A Little Princess「Live Out Loud」

  ~ジェイソン・ロバート・ブラウンの世界~
 ★Songs for a New World「The New Wolrd」(全員)
 ★The Last 5 Years「Still Hurting」(レア)、「Moving Too Fast」(ラミン)

 ★ウエストサイド物語「Somewhere」(全員)
 ★ラ・カージュ・オ・フォール「The Best of Times」(全員、アンコール

ジェイソン・ロバート・ブラウンのアレンジはJazzyで都会的。「You'll Never Walk Alone」とか「Somewhere」などは原曲とかなり雰囲気が異なり、すごく面白かった。

今回歌われたミュージカルの本篇(全曲)を舞台で鑑賞したことがあるのは14作品(+歌劇「ボエーム」もミラノ・スカラ座来日公演を観ている)。だから歌を聴きながら色々と懐かしく想い出した。

特にレア・サロンガの「命をあげよう」は絶唱で、「ミス・サイゴン」日本初演時に故・本田美奈子のキムで観た時の感激がまざまざと脳裏に蘇ってきた。正直言ってレアの声が全盛期に比べると衰えていることは否めない(だって初演から既に24年が経過しているのだ)。「レ・ミゼラブル」も10周年記念コンサートの時(1995年)と比べると些か苦しいものがあった。しかし「ミス・サイゴン」は別格だった。「やはりこの人の右に出る者はない」という圧倒的説得力。僕は聴きながら涙で頬が濡れるのをどうにも出来なかった。

「ミス・サイゴン」は長年、岩谷時子さんの名訳詞で親しんできたが、今回「命をあげよう」を英語で聴いてアラン・ブーブリルの原詩も本当に素晴らしいなと改めて想った。特にグッと来たのが以下の行である(岩谷訳も併記)。

You will be who you want to be
You, can choose whatever heaven grants
As long as you can have your chance
I swear i'll give my life for you

神の心のまま 望むもの選ぶの
つかまえなさいチャンス 命をあげるよ

正に母親の、子どもに対する無償の愛に溢れている。

あとレアは母国フィリピンの歌「Ikaw(イカウ)」もしみじみと良かった。

ラミン・カリムルーは張りのある声に痺れた。特にファントムを歌わせたら、彼は現在世界一ではないだろうか?ギターの弾き語りをした「Remainder」も格好よかった。意外と彼、ミュージカル「RENT」みたいなロック・ミュージカルでもいけるのでは?

シエラ・ボーゲスの歌唱はとにかく高音が美しい。「リトル・マーメイド」はさすがオリジナル・キャストだなとすっかり魅了された。クリスティーヌも文句なし。美人だしスタイルは抜群。正にスター。

2011年に城田優を「ロミオとジュリエット」で観た時は、「確かに背が高くイケメンだけど、歌はイマイチ。音程が不安定」という印象だった。しかし久しぶりに聴いて驚いた。明らかに上手くなっている!音域も広がった。日々ボイス・トレーニングを積んでいるんだなということがよく分かった。(失礼ながら)意外にも努力家なんだ。また彼の舞台を観てみたいと想った。

これ以上は考えられないというくらい贅沢で、充実したコンサートだった。観客は興奮状態で、「ひゃ~」「めっちゃ感動した!」「陶酔……」といった声があちらこちらから聞こえた。このような企画を是非再び実現して欲しいと願いつつ、僕は帰途に就いた。

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2013年6月25日 (火)

村上春樹と映画「華麗なるギャツビー」(3D 字幕版)

村上春樹がこよなく愛する小説はスコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」である。因みに彼にとってのベスト3は「グレート・ギャツビー」、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」、そしてチャンドラー「ロング・グッドバイ」だそうだ。中でもギャツビーは別格だという。

僕が最初にこの小説を読んだのが大学生の頃。新潮文庫から出ている野崎孝 訳であった。正直、何が面白いのかさっぱり理解出来ず、再読したがやはりピンとこなかった。

2006年に待望の村上春樹による新訳が登場し、さらに2回読んだ(訳者へのインタビュー記事はこちら)。そして漸く、この小説の持つ虚無感・諦念の味わいが体に沁みて来た。バズ・ラーマン監督自身、村上春樹が日本語に翻訳していることを力説し、映画化に難色を示すスタジオを説得したと語っている(その記事はこちら)。

Thegreatgatsby

実はこの映画、北米のプロの映画評を集約したRotten Tomatoesでは非常に評判が悪い(こちら!)。トマトメーターは(総計243のレビュー中)49%で 《腐ったトマト》の烙印を押されている。つまり肯定派より否定派のほうが多い。因みに「ライフ・オブ・パイ」は88%、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は87%で《新鮮》になっている。だから恐る恐る映画館に足を運んだのだが……。

評価:A+

いや~、もうパーフェクトな出来で驚いた!フィッツジェラルドの小説から必要な要素を何も引いていないし、余分なものを加えたりもしない。過不足ない、理想的な映像化である。原作との違いは(1929年)世界大恐慌の後、語り部であるニック・キャラウェイ(トビー・マグワイア)がアルコール依存症で更生施設(サナトリウム)に入所する場面が加わった程度だろうか。これは原作の地の文を活かすために必要な処置だった。特に、有名な最後のセンテンスをマグワイアがそのままナレーションしたのにはびっくりした。バズ・ラーマンの原作に対するをひしひしと感じた。

大恐慌前の1920年代(ジャズ・エイジ)。好景気に浮かれるニューヨークが舞台となる。人々の足が地に着いていない感じは、なんだか日本のバブル時代(1986-91年)を彷彿とさせる。フィッツジェラルドやヘミングウェイは「ロスト・ジェネレーション(失われた世代)」と呼ばれたが、日本でもバブルがはじけた1991年3月以降は「失われた20年」と言われていている。

この物語に登場するのは薄っぺらな人物ばかりである(ニックが一番まとも)。連日繰り広げられる狂騒的で虚しいパーティ、中身は空ろな張りぼての大邸宅。会話の中でギャツビー邸は「遊園地(コニー・アイランド)みたいだ」と評されるが、まさしく映画のデザインはディズニー・ランドのシンデレラ城を彷彿とさせた。また豪華な花火は僕がラスベガスで見たそれを想い起こさせた。

デイジーというヒロインは主体性がなく流される、むかつく女である。見ていてイライラする。究極のBitchであると断言しても過言ではない。彼女に翻弄されるギャツビーは本当に気の毒である。恐らく本作に否定的な人たちは、このキャラクター設定が気に入らないのだろう。しかし忘れてならないのは、フィッツジェラルドの小説で描かれたデイジーも全くこの通りなのである。極めて忠実なのだ。デイジーみたいな女は我々の身近にも沢山いる。例えば男にマンションを貢がせて、あっさりメールで振ってしまう蒼井優なんかその典型と言えるだろう。東野圭吾(著)「容疑者Xの献身」とか、白石一文(著)「一瞬の光」のヒロインもまた、彼女によく似ている。

デイジーのモデルはスコット・フィッツジェラルドの妻ゼルダである(ウディ・アレンの映画「ミッドナイト・イン・パリ」に登場)。ふたりは1920年代のニューヨークで放蕩の限りを尽くした。そしてスコットはゼルダの浮気に苦しんだ。ある意味彼女のせいで命を削られたと言ってもいい。では果たして、スコットは彼女と結婚したことを後悔しただろうか?僕はそう想わない。だってゼルダというミューズなくして世紀の傑作「グレート・ギャツビー」は決して生まれなかったのだから。ゼルダと共に生き、アルコール依存症となり44歳の若さで亡くなったスコットは仮にもう一度人生をやり直せたとしても彼女を選んだに違いない。それが男子の本懐というものだろう。堕ちていく快感。そしてデイジーを選んで滅びの道を歩むギャツビーにも同じ事が言える(蒼井優に捨てられた男たちもきっとそうだ)。いい夢を見させてもらったのだから、それだけで充分じゃないか。映画「ある愛の詩」の台詞にもあるだろう、

“Love means never having to say you’re sorry.”
 (愛とは決して後悔しないことだ)

ギャツビーはニューヨーク郊外のウエスト・エッグ岸辺の邸宅から、湾を挟んで対岸イースト・エッグに住むデイジー宅の埠頭の青い光を毎夜眺めている。このは「手を伸ばしても届かない憧れ」の象徴であり、小説の核(core)である。その辺のところをバズ・ラーマンもよく分かっていて、映画の冒頭からいきなりこのが登場し、執拗なまでに繰り返し描写される。「やるねぇ、押さえるべきところはしっかり押さえてるじゃん」と嬉しくなった。

キャリー・マリガンが驚異的に素晴らしい!小説の中からデイジーがそのまま飛び出してきたのかと錯覚する位である。最早、彼女以外のデイジーは考えられない。そのハマりっぷりは「風と共に去りぬ」でスカーレット・オハラを演じたヴィヴィアン・リーに匹敵すると断言しよう。

ギャツビーをレオナルド・ディカプリオが演じると聞いたときはミス・キャストじゃないかと考えていた。しかし実際観てみると、レオはさすが演技派だからそんなに違和感はなかった。

デイジーの夫・トムを演じたジョエル・エガートンがいい味出していた。ピッタリ。

豪華な美術装置や洗練された衣装も見応えがある。アカデミー賞にノミネートされたらいいね。

そして「ムーラン・ルージュ」の監督だけあって、バズ・ラーマンは音楽の使い方が卓越していた。無駄に3D(虚仮威し・ハッタリ)というのも愉しい。It's  show time, folks !

フィッツジェラルドの愛読者は必見である。

最後に余談だが、主人公がピストルで撃たれてプールに死体が浮かぶ設定はチャールズ・ブラケット&ビリー・ワイルダー脚本の名画「サンセット大通り」(1950)と同じだね。今回映像で観て初めて気が付いた。「グレート・ギャツビー」からの引用だったんだ。「サンセット」はハリウッドの虚飾を描く作品であり、内容的にも共通する所がある。

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2013年6月23日 (日)

大フィルでウォルトンのパルティータ!

6月21日(金)ザ・シンフォニーホールへ。

レオン・フライシャー/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲(独奏:崔 文洙)
  • ラヴェル/組曲「クープランの墓」
  • ウォルトン/管弦楽のためのパルティータ

ベートーヴェンは優しく、柔らかい音で開始され、第2主題で憂いを帯びる。

今回つくづく思い知ったこと。ベートーヴェンの偉大さは重々承知しているが、ヴァイオリン協奏曲は全然好きじゃないこと。冗長で退屈なのだ。ピアノ協奏曲とかヴァイオリン・ソナタにはそんなこと感じないのだが。考えてみるとメンデルスゾーンやブラームスのヴァイオリン協奏曲も面白くないんだよね。僕がいいと想うのはコルンゴルト、ロージャ・ミクローシュ(ミクロス・ローザ)、シベリウス、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。特に究極の美しさを誇るコルンゴルトは是非一度、実演で聴きたいと希っている(大フィル定期で取り上げられたことは未だかつてない)。

なお、ソリストのアンコールはJ.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番から。ビリオド・アプローチを熟知している崔さん。こちらはほぼ、ノン・ヴィブラートで弾き切った。

ベートーヴェンはかなりゆったりしたテンポだったが、ラヴェルは速めの演奏。繊細でニュアンス豊か。「魔法の国」に彷徨い込んだかのような錯覚に囚われた。

今回一番愉しみにしていたのがウォルトン。僕がこの作曲家の作品を初めて聴いたのが中学生の時。忘れもしないスタンリー・ブラック指揮ロンドン・フェスティバル管弦楽団の演奏で映画「スピットファイア」~前奏曲とフーガであった。むちゃかっこ良くて痺れた!それからジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップスのアルバムで聴いた戴冠式行進曲王冠」と「宝玉と王の杖」も颯爽としていてお気に入りだった。「管弦楽のためのパルティータ」を聴けば、ジョン・ウィリアムズがいかにウォルトンからの影響を受けているかがよく分かる。特にインディ・ジョーンズ・シリーズのチェイス・シーンや「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」の”小惑星の原野”を聴き比べれば明らかだろう。

ウォルトンを他のイギリスの作曲家、例えばヴォーン=ウィリアムズやエルガー、ブリテンと分かつのは、リズミカルで躍動感溢れる点である。その特徴がジョージ・セルの委嘱で作曲された「管弦楽のためのパルティータ」によく表れている。むしろ同時代の作曲家ならストラヴィンスキーやプロコフィエフに作風が近い。

フライシャーはエネルギッシュな第1曲「トッカータ」からオケをがなり立てたりはしない。明晰で、丁寧な解釈。静かな第2曲「シチリア風牧歌」を経て、第3曲「ブルレスク風ジーグ」は爽快なドライブ感があった。生でこの20世紀の名曲を聴けて本当に嬉しかった。

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2013年6月22日 (土)

柳家さん喬 ひとり舞台@亀屋

6月16日(日)高槻の割烹旅館・亀屋へ。柳家さん喬を聴く。

  • 短命
  • 船徳
  • 中村仲蔵

”美人薄命”と”月下美人”との関係をマクラに「短命」ヘ。師匠の五代目・柳家小さんは「短命」ではなく、縁起を担いでネタ帳には「長命」と書いていたそう。冬や夏、季節折々の風景を描写し、囁くようなpp(ピアニッシモ)から大音量のff(フォルテッシモ)までダイナミックな高座。また、日本人の死生観についての考察あり。落語には人の死を扱ったものが少なからずあるが、そういう状況を笑いにする感覚は欧米にはないと。僕が思うに、これはキリスト教が支配的な国々と、無宗教である日本人との違いではないだろうか?

四万六千日の縁日にちなんだ浅草寺の「ほおずき市」(7月9日・10日)。それを盛り込んだ「船徳」が続いて演じられた。若旦那の陽気さが印象的。

江戸の落語家にあリ、上方にはない身分制度。「二つ目」になると紋付を着ることが許され、「真打」になるとトリを取れるそう。

お稲荷さんは芸の神様で、歌舞伎の楽屋には通常稲荷を祭った神棚があった。一番位の低い役者はこの下が定位置だったので「稲荷下」と呼ばれたそう。ここから「名代(なだい)」まで出世したのが「中村仲蔵」であるとマクラで解説された。ストイックな美しさを湛えた高座。

また蕎麦を食べる所作がネタの後半に登場するのだが、さん喬さんはしっかり麺の1/3しか汁につけなかった。これが正しい食べ方なのだが、最近では東京の蕎麦屋で見ていても全部漬ける人が多いことに呆れるばかりである。粋じゃない。江戸っ子たぁ言えねぇなぁ。

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2013年6月19日 (水)

映画「はじまりのみち」

こちらも併せてお読み下さい。

評価:B

Hajimari

木下惠介誕生100年記念映画。公式サイトはこちら

アニメーションの世界で活躍してきた原恵一監督の実写映画第1作である。堅実な作品で出来はかなりいい。原監督の作品でA級の傑作といえばやっぱり「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」と「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」だろう。それらには及ばないが、少なくとも退屈な「河童のクゥと夏休み」や「カラフル」よりはマシ。そういう立ち位置である。

最初はテンポが悪い(間延びしている)と思いながら観ていたが、人間をじっくり描き最後は感銘を受けた。宮崎あおいをワン・ポイントで起用しているのだが、彼女が「二十四の瞳」の大石先生(高峰秀子)へのオマージュとして登場した時には涙が出た。子どもたちを数えたらしっかり12人!憎いね。あと「楢山節考」へのオマージュもある。

ただ些か不満なのはやはり、木下恵介がゲイであるという事実を避けたこと。作品の性格上仕方ないのかもしれないが、それでは木下作品の核心に迫ることは難しいだろう。例えば将来ペドロ・アルモドバル監督(「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」)の伝記映画を製作すると仮定して、彼がゲイであることを回避出来るだろうか?

便利屋を演じた濱田岳が素晴らしい。いい味出している。今年の助演男優賞有力候補ではないだろうか?また田中裕子の凛とした美しさも特筆に値する。素敵な年の重ね方をしているなぁと感心した。

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2013年6月18日 (火)

映画「グランド・マスター」

評価:B

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原題は「一代宗師」。映画公式サイトはこちら

香港のウォン・カーウァイ王家衛)監督作品で今まで観たことがあるのは「恋する惑星」「ブエノスアイレス」「花様年華」「2046」。全体の印象として際立っているのは映像がスタイリッシュであること。しかし物語自体はあってなきが如し。これらのあらすじを述べよと言われても、僕には回答不能である。恐らく多くの人がそうではないだろうか?つまりこの監督はストーリーを重視せず雰囲気が大切なのだ。僕は彼の映画をファッションだと考えている。オシャレな感じ、でも中身はない。決して否定しているのではない。そのファッション性を愉しめばいいと割り切っている。別に映画を観て人生について考察する必要はないだろう。その場限りの快感で十分じゃない?

で、「グランド・マスター」は正にそういう映画だった。地面で跳ね飛び散る雨の雫。回転する帽子。それらをスローモーションで捉えた究極の映像美にウットリ酔い痴れた。ワイヤーアクションを駆使したカンフーの戦闘シーン(武術指導は「酔拳」「マトリックス」「グリーン・デスティニー」のユエン・ウーピン)はさながらバレエである。しかし相変わらず物語性は希薄だ。繰り返されるカンフー・アクションに次第に飽きてくる。

チャン・ツィイーとマックス・チャンとの戦闘シーンで、脇を蒸気機関車が駆け抜けていくのだが、何時まで経っても走り続けているのには爆笑した。「一体、何両連結しているんだ!?」と思わずスクリーンにツッコミを入れた。

音楽は梅林茂。最後、チャン・ツィイーが阿片窟で気怠そうにアヘンを吸っている場面を観ながら、「まるで『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のロバート・デ・ニーロみたいだな」と考えていたら、音楽がいつの間にか本当にエンニオ・モリコーネが作曲した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』~”デボラのテーマ”に切り替わったのでびっくりした!へぇ、ウォン・カーウァイはセルジオ・レオーネ監督が好きだったんだね。まさかここでオマージュを捧げるとは想像だにしなかった。

この映画から学ぶべき教訓なんて何もないが、暇つぶしにどうぞ。

余談だが、今回の撮影監督はフランスのフィリップ・ル・スール。長年コンビを組んでいたクリストファー・ドイルとは決別したのだろうか?

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五嶋みどり & Young Artists 「第6回 ICEP バングラデシュ/日本 活動報告コンサート」

6月13日(木)ザ・フェニックスホールへ。

Goto

五嶋みどり(Violin)、本田早美花(Violin)、ウィリアム・フランプトン(Viola)、ヒロ・マツオ(Cello)で、

  • ヴェルディ/弦楽四重奏曲
  • ストラヴィンスキー/弦楽四重奏のための3つの小品
  • 活動報告
  • ラヴェル/弦楽四重奏曲

大阪府出身の五嶋みどりが、アメリカで非営利団体「みどり教育財団(Midori & Friends)」を設立したのは1992年、彼女が21歳の頃だった。2002年「みどり教育財団」東京オフィスを改組し、特定非営利活動法人「ミュージック・シェアリング」を発足。2006年より発展途上国において社会貢献目的で演奏活動を行うInternational Community Engagement Program( ICEP )を開始した。彼女はオーディションで選ばれた若手演奏家たちとカルテットを編成し、これまでにベトナム、カンボジア、インドネシア、ミャンマーなどで無料のコンサートを開催している。

昨年12月はこのメンバーでバングラデシュを訪問。スライドを交えてその報告会もあった。五嶋さんが喋るのを初めて聴いたが、しっかりした口調で饒舌。芯が強い人だなと感じた。音楽家としてというよりも、まずひとりの人間として尊敬すべき女性だと甚く感銘を受けた。

プログラム前半のヴェルディとストラヴィンスキーは五嶋さんが第1ヴァイオリン、後半のラヴェルはロンドン育ちの本田さんが第1ヴァイオリンだった。

ヴェルディは第2ヴァイオリン(本田)の艶かしい音で開始される。動きと切れのある演奏。五嶋さんのヴァイオリンは弓で弦を押さえ過ぎず軽やか、左手のヴィブラートは繊細で目視出来ないくらい。あっさりして禁欲的表現だった。

一転してストラヴィンスキーでは激しく原始的リズムを強調。ここでは弓を押し付け、粘着質で濃い表情を作る。

ラヴェルは繊細な表現力に魅了された。鮮烈な第1楽章、第2楽章は激しいピッツィカートが突き刺さる。第3楽章は極彩色の幻影。全体を通して、触れれば壊れる硝子細工のような儚(はかな)い夢を描く。トレビアン!

常設のカルテットではないが、想像をはるかに上回る会心のパフォーマンスであった。曲ごとの性格の違いによる描き分けが素晴らしかった。来年はメンバーが替わるかもしれないが、是非また聴きたい。

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2013年6月17日 (月)

柳家三三×北村薫/「六月の花嫁」と落語「鰍沢」

6月9日(日)兵庫県立芸術文化センターへ。

33

このシリーズに足を運ぶのはこれが3年連続3回目。

落語家・柳家三三による一人芝居というか朗読劇。兎に角新しい演劇の形態であることは確か。

北村薫の推理小説〈円紫さんと私〉シリーズより、今回は連作短編集「夜の蝉」に収録されている「六月の花嫁」が選ばれた。 落語家・春桜亭円紫=ホームズ、「私」=ワトソンという役回りとなっている。谷口英治によるクラリネット独奏付き。

  • 六月の花嫁」前半
      仲入り
  • 六月の花嫁」後半
  • 落語「鰍沢(かじかざわ)」
  • 対談/北村薫×柳家三三

今回初めてクラリネット・ソロが加わったのは、主人公の友人・江美ちゃんが「クラリネット・ポルカ」を吹く場面が登場するためだと思われる。

冒頭で暗い闇から浮かび上がってくるのはクラリネット奏者ひとり。ハル・デヴィッド(詞)バート・バカラック(曲)の「雨にぬれても」(映画「明日に向かって撃て!」主題歌)がジャズ・アレンジで吹かれた。続いて「雨に唄えば」。そして梅雨の物語が始まる。最後、春桜亭円紫が喫茶店の窓を見て言う台詞「おや、雨が上がりましたね」を切っ掛けに「虹の彼方に」(映画「オズの魔法使い」)が演奏され締め括られる。なんて粋な選曲だろう!過去3回の中で今回が一番感銘を受けた。舞台で演じられることの意義が感じられた。

47都道府県を47日で廻るという快挙(暴挙?)を達成した三三さん。以前彼の「三味線栗毛」は錦木(検校)が最後に死ぬバージョンだったが、「空飛ぶ馬」で春桜亭円紫として死なないバージョンを演じて以来、そちらの方がしっくり来るようになり現在は後者で演っているという。

鰍沢」は三遊亭圓朝作。元々は三題噺(「卵酒」「鉄砲」「毒消しの護符」、あるいは「熊の膏薬」という説あり)だと言われている。初めて聴いたネタだが、ブラック・ユーモアがあり超展開で面白かった!

三三さんは圓朝直系の橘家圓喬(たちばなやえんきょう)の型でされた。殺されかけ這々の体で逃げた主人公が崖に追い詰められる場面で圓喬の型は口を結び、恐怖で身を引く(それまでは前につんのめりそうになる演出が主流だったという)。

この「鰍沢」、東京の聴衆はクライマックスを息を潜めて真剣な眼差しで聴くが、ここ関西では「んなあほな!」という雰囲気で意外と受けたと。そういう反応は「皮膚で感じる」のだそう。東日本では時々、聴衆と「折り合いがつかない」ことがあるという。

ネタの内容をめぐり、北村薫さんは狩人が歌った「あずさ2号」について女性編集者数人と語り合ったエピソードを披露。「女は新しい恋人と旅に出る時、昔の男のことを考えたりしない。キッパリ忘れ去る。想い出の品も(高価なもの以外)惜しみなく捨てる(断捨離)。未練がましいあの歌詞は男の発想だ」と彼女たちは断言したという。「そういうものかなぁ」と思い、北村さんが調べてみると作詞したのは女性だった。「男性の聴衆に共感されるよう、意図して作詞されたのかも知れませんね」。

また「六月の花嫁」で江美は何故クラリネットを吹くのか?ということが話題になり、北村さんは「彼女の楽器はクラリネット以外考えられなかった」。ここでクラリネット奏者の谷口さんが「中学や高校の吹奏楽部でクラリネットを吹く女の子はおっとり/しっかりタイプ。古風でスカートの丈も膝下まであり、ソックスもきちっと折っている。絵美ちゃんのイメージにピッタリ」「ではスカート丈が短い楽器は何ですか?」と三三さん。谷口さんは「サックスです」と即答。成る程!さらにオーケストラにおいてクラリネットという楽器は弦楽器と管楽器を調和させる働きがあり、ポワーンとしたところもあると。

また、落語とは「より少ない情報で想像力が広がる芸」だと三三さん。そういう意味において、最小限の舞台セットと照明効果だけで想像の羽を広げるこの企画は大成功であったと言えるだろう。

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繁昌亭昼席(6/6)

6月6日(木)繁昌亭昼席へ。

  • 桂咲之輔/御公家女房
  • 桂雀五郎/看板の一
  • 桂文也/阿弥陀池
  • 旭堂小二三/講談「大坂の陣」
  • 桂七福/ちりとてちん
  • 笑福亭鶴志/代書
  • 桂一蝶/いらちの愛宕詣り
  • 桂枝三郎/お血脈
  • ビックリツカサ/マジック
  • 林家染丸/寝床

一蝶さんはリズム感が悪い。枝三郎さんは無駄な言葉が多く、アレンジが下手だなと想った。

正直、聴いたことのあるネタばかりで3時間強は怠かった。

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2013年6月15日 (土)

選定!中学生に観せたい映画

*これは2013年に執筆したものです。内容を7年ぶりに見直し、アップデートした記事を上げています。

こちらもどうぞ。

では中学生篇へ。まずは「厳選!これだけは絶対抑えておきたい12本」から(順不同)。

  • 風と共に去りぬ
  • カサブランカ (白黒) (男の子向け)
  • ローマの休日 (白黒) (女の子向け)
  • 大人は判ってくれない (白黒)
  • ハロルドとモード 少年は虹を渡る
  • 砂の器
  • ゴッドファーザー
  • スタンド・バイ・ミー
  • 時をかける少女(大林宣彦/細田守 監督版)
  • 初恋のきた道
  • がんばっていきまっしょい
  • ボーリング・フォー・コロンバイン

各論へ移ろう。

風と共に去りぬ」 実際に僕がこれをテレビで観て感動したのが中学校1年生だった。それから熱に浮かされたように新潮文庫で原作小説を読破した。

カサブランカ」(1942,米) 兎に角、シナリオが映画史上屈指の傑作。男なら一度は言ってみたい台詞に満ちている。

ローマの休日」(1953,米) 言わずと知れた名作。アカデミー主演女優賞(オードリー・ヘップバーン)、脚本賞、衣装デザイン賞を受賞。実はこの作品、ダルトン・トランボがオリジナル脚本を書いたのだが、彼は狩りでハリウッドから追放されており、友人イアン・マクラレン・ハンターの名前を借りた。本人は黙したまま死去したが1993年になってアカデミー選考委員会は遺族に賞を授与した。是非この映画とともに「狩りとハリウッド・テン」についても勉強して貰いたい。アメリカの影である。

フランソワ・トリュフォー監督「大人は判ってくれない」(1959,) この映画の本当の素晴らしさを理解するまで、僕には時間がかかった。だから中学生にはちょっと早いかもしれない。でもよく判らなくても、何年か経ったら繰り返し観てみて下さい。いつか「その日」が来る筈。ちなみにアントワーヌ・ドワネルの冒険は「大人は判ってくれない」('59) 「アントワーヌとコレット」('62) 「夜霧の恋人たち」('68) 「家庭」('70) 「逃げ去る恋」('79) で5部作になっている。

ハロルドとモード 少年は虹を渡る」(1971、米) アメリカン・ニューシネマの傑作。邦題に付け加えられた「少年は虹を渡る」という副題は意味不明。全く内容を表していない。映画「メリーに首ったけ」でキャメロン・ディアスが本作について「最高の恋愛映画(Harold and Maude is the greatest love story of our time)」と言っている。主人公の少年のキャラクター造形が秀逸。どんなに辛くても、生きてさえいればきっとなにか良いことがあるさ、と僕達に信じさせてくれる素敵な作品。

砂の器」「鬼畜」 松本清張原作の名画を2本。どちらも音楽が印象的。そしてクライマックスで両者は表裏一体だということが分かる筈。

スタンド・バイ・ミー」 少年たちの冒険譚。こうして大人になっていくんだね。原作はモダン・ホラーの帝王スティーヴン・キング(THE BODY)。でも超自然現象は出てこない。

がんばっていきまっしょい」(1998,日) 松山を舞台にボート部の活動に打ち込む5人の女子高生たちの物語である。フジテレビ系でドラマ化もされた。原作は松山市主催の坊ちゃん文学賞を受賞。

大林宣彦監督の「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」「ふたり」「あした」「青春デンデケデケデケ」は全て青春映画だ。移りゆく季節、一瞬の生の輝きをフィルムという永遠なるものに刻み込む。また「この空の花 -長岡花火物語-」は日本の未来へ向けてのメッセージ。ワンダーランドにようこそ。

チャン・イーモウ監督「初恋のきた道」(1999,中国) チャン・ツィイーの可愛さに尽きるね。が印象的。

グリーン・デスティニー」(2000,中国・香港・台湾・米国の合作) これもチャン・ツィイーが出ている。原題は”臥虎蔵龍”、英題"Crouching Tiger, Hidden Dragon"。静謐な武侠映画。アカデミー外国語映画賞・作曲賞・撮影賞・美術賞を受賞。

ボーリング・フォー・コロンバイン」(2002,米) アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞受賞。コロンバイン高校銃乱射事件に題材を
取り、銃社会アメリカの病んだ姿を浮き彫りにする。なおこの事件をモチーフにした劇映画「エレファント」は2003年カンヌ国際映画祭でパルム・ドール及
び監督賞を受賞した。

バットマン・ビギンズ」「ダークナイト」「ダークナイト・ライジング」 原作がアメコミだと信じられないくらい脚本の出来がいい。クリストファー・ノーラン監督の才能は桁外れだ。特にヒース・レジャーが死の直前に演じたジョーカーの凄みは尋常じゃない(アカデミー助演男優賞受賞)。

ジュリアン・デュヴィヴィエ監督「にんじん」(1932,仏) 原作は児童文学。ペシミズム(悲観主義)全開!

ビューティフル・マインド」(2001,米) ノーベル賞を受賞した実在の数学者の物語。アカデミー賞で作品・監督・助演女優・脚色賞を受賞。映画に仕掛けられた秘密は口外無用だ。

ビクトル・エリセ監督「ミツバチのささやき」「エル・スール」 スペイン映画珠玉の名作。くわしくはこちらをお読み下さい。

ウィリアム・ワイラー監督「嵐が丘」(1939,米) イギリスのエミリー・ブロンテが書いた小説「嵐が丘」は今まで何と7回も映画化されている。メキシコを舞台にしたルイス・ブニュエル監督版や、フランスの田舎が舞台のジャック・リヴェット版、そしてなんと日本の鎌倉時代に移した吉田喜重版(松田優作、田中裕子)なんていうのもある。1992年のイギリス映画では坂本龍一が音楽を担当した(鎌倉版の音楽は武満徹)。ぼくはそのうち4作品を観ているが、1939年版が一番優れている。本当は物語の前半しか扱っていないのだけれど。原作と併せてどうぞ。 

パンズ・ラビリンス」PG-12 美しくも哀しいダーク・ファンタジー。詳しくはタイトルをクリック。

シベールの日曜日」(1962,仏) アカデミー外国語映画賞を受賞。水墨画のような白黒の画面から浮かび上がってくる静謐な抒情。「レオン」の原型と断言してもいい。

ベン・ハー」(1959,米) 言わずと知れた史劇の傑作。アカデミー賞で11部門を制覇。戦車の場面が有名。これは「スター・ウォーズ エピソード1」にも引用された。脚本家はベン・ハーとメッサラをゲイの関係として描いたそうだ(詳しくはドキュメンタリー映画「セルロイド・クローゼット」をご覧あれ)。

ガンジー」(1982,英/印度) アカデミー作品賞・監督賞・主演男優賞など8部門受賞。ひらめきのある傑作ではなく、愚直な映画だが、歴史の勉強にはなる。マハトマ・ガンジーという偉大な人の生涯を知ろう。ただ僕はこの年、「E.T.」こそ作品賞、監督賞に相応しかったと今でも信じて疑わない。

デヴィッド・リーン監督「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」はいずれも歴史のうねりに翻弄される人間を描き、確かな手応えを感じさせる大作。モーリス・ジャールの音楽、フレディ・ヤングによる撮影(いずれもアカデミー賞受賞)が言葉を失うほど素晴らしい。

ギルバート・グレイプ」(1993,米) ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオ(19歳でアカデミー助演男優賞ノミネート)が共演。スウェーデンからハリウッドに招かれたラッセ・ハルストレムが監督した家族の物語。

ベスト・フレンズ・ウェディング」(1997,米) 愛すべきラブコメディかつ、セミ・ミュージカル映画。ハル・デヴィッド(作詞)バート・バカラック(作曲)の音楽を聴くとワクワクして胸がキュンとする。

岩井俊二監督「LOVE LETTER」 この頃の酒井美紀は可愛かったなぁ。失われた時を求めて(by マルセル・プルースト)。

デス・ノート」 原作は漫画。出来は相当いい。

の園」  女子高演劇部の人間模様を描いた吉田秋生の漫画が原作。キネマ旬報ベスト・ワンに輝いた1990年版を推す。同じ中原俊監督が撮った2008年リメイク版もある。

ピンポン」 原作は松本大洋の漫画。クドカン(宮藤官九郎)の脚色が素晴らしい。泣いたね。

下妻物語」 脚本・監督は「告白」の中島哲也。ロリータちゃんを深田恭子が演じる。原作者・嶽本野ばら曰く「ハードボイルドじゃなきゃ乙女じゃない」。

けんかえれじい」(1966,日) 少年たちの喧嘩がエスカレートし、終局は二・二六事件に突入していく。鈴木清順の破天荒な演出が見所。

博士の異常な愛情」(1964,米/英) 正式なタイトルは「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」ブラック・ユーモアの世界。ピーター・セラーズの1人3役が面白い。

英国王のスピーチ」 アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞を受賞。幼少期の体験というのはその後の人生を左右させるということがよく分かる。

ジョン・ヒューストン監督「黄金」「マルタの鷹」 全ては虚しく水泡に帰する。人生は得てしてそういうもの。

博士の愛した数式」 原作は第1回本屋大賞を受賞。静かに人間を見つめた映画。

阿弥陀堂だより」 優しい映画。おうめ婆さんを演じる北林谷栄と、加古隆のしみじみとした音楽が素晴らしい。

しゃべれどもしゃべれども」 落語家(二つ目)のお話。こういう世界もあるんだね。

シザー・ハンズ」 ティム・バートン監督の作品に通奏低音のように常に流れるのは、「異形に生まれたものに対する愛」。ジョニー・デップはその良き理解者だ。

007 スカイフォール」 紛れもなく、シリーズ最高傑作。詳しくはタイトルをクリック。

ジャン・ルノワール監督「大いなる幻影」(1937,仏) この映画のラスト・シーンには大いに感動した。

ロベルト・ロッセリーニ監督「無防備都市」(1945,伊)「戦火のかなた」(1946,伊) 第二次世界大戦におけるイタリアのレジスタンス運動を勉強しよう。ハリウッドで「無防備都市」を観て感動した女優イングリット・バーグマンはロッセリーニに手紙を書き、夫と娘を捨てイタリアへ飛んだ。そして彼と同棲生活を始める。これは一大スキャンダルとなった(1950年にようやく離婚が成立)。

戦場の小さな天使たち」 戦時下の子どもたちの生活を描く。

シンドラーのリスト」 ホロコーストについて学ぼう。

西部戦線異状なし」(1930,米) アカデミー作品賞、監督賞を受賞。白黒。反戦映画の代表作。

市民ケーン」(1941,米) 当時25歳のオーソン・ウェルズの処女作にして最高傑作。AFI(米国映画協会)などによる世界映画史上ベスト1に何度も選出されている。

今井正監督い山脈」(1949)は戦後民主主義の芽生え。ひめゆりの塔」(1953)は沖縄戦の話。「真昼の暗黒」(1956)は冤罪事件を扱った傑作。「橋のない川」(1969-70)は部落差別問題・全国水平社創立までを描く(【第1部】15歳以上推奨、【第2部】は高校生になってから観よう)。

太陽がいっぱい」(1960,仏/伊) アラン・ドロン主演の名作。パトリシア・ハイスミスのサスペンス小説が原作。「リプリー」というリメイクもある。この映画は表面上描かれたものとは別の物語が隠されている。さて、貴方は気付くだろうか?

冒険者たち」(1967,仏) これもアラン・ドロンが出演する海の映画。共演するリノ・ヴァンチュラやジョアンナ・シムカスも好きだなぁ。宝探しのお話なんだけれど、ハッピー・エンドじゃないところがフランス映画らしい。でもこれが男のロマンなんだな。

ラスト・エンペラー」(1987,伊/中/英) アカデミー賞で作品・監督賞など9部門受賞(坂本龍一が作曲賞)。清朝最後の皇帝・溥儀の物語。

スミス都へ行く」(1939,米) アメリカの民主主義とは何か?がよく分かる。野田佳彦・元総理はこの映画を観て政治家を志したという。また三谷幸喜(脚本・監督)の映画「ステキな金縛り」にも引用されている。

ブレードランナー」(1982,米) SF映画の金字塔。夜の印象が強い。その後のSF作品群に与えた影響は計り知れない。主人公のデッカードは果たしてレプリカントなのか?興味深い命題である。

アマデウス」(1984,米) アカデミー作品・監督賞など8部門受賞。天才 対 凡人。

五線譜のラブレター」(2004,米) 作曲家コール・ポーターの半生を描く。彼が同性愛者であると告白したにも関わらず、プロポーズを受け入れたリンダとのユニークな関係性が興味深い。

キュリー夫人」(1943,米) 偉人伝。

スティング」(1973,米) どんでん返しの面白さ。

プロデューサーズ」(1968,米) メル・ブルックス監督版。後にブロードウェイ・ミュージカルとなり、ミュージカル版も映画化されたが、残念な出来だった。劇中劇「ヒトラーの春」は最高!

ウエストサイド物語」(1961,米) 説明は不要だろう。シェイクスピア「ロミオとジュリエット」を下敷きにしたダイナミックなミュージカル。

許されざる者」(1992,米) 汝、殺すべからず。西部劇の終焉。

捜索者」(1956,米) ジョン・フォード監督作。公開時は評判にならなかったが、年月を経てどんどん評価が上がっている作品。特に屋内から屋外の荒野をキャメラが捉えた、額縁の中の絵のような構図が余りにも有名。

我が家の楽園」(1938,米) アカデミー作品賞、監督賞受賞。「素晴らしき哉、人生!」もそうだけれど、フランク・キャプラ監督作品はアメリカの良心だと想う。

レベッカ」(1940,米) アルフレッド・ヒッチコック監督渡米第一作。タイトルロールが一度も画面に登場せず、しかし映画全体を支配し登場人物たちがその影に怯えているという設定が秀逸。

雨に唄えば」「巴里のアメリカ人」 MGMミュージカル、傑作中の傑作。無類の愉しさ!

い靴」(1948,英) バレエ映画の金字塔。プロフェッショナルであることの厳しさ。ミュージカル「コーラスライン」によれば、この映画をリアルタイムで観てダンサーを志した若者も少なくなかったようだ。

人間の條件」6部作(1959-61,日) 兎に角長い。総上映時間は9時間31分に及ぶ。でもその分見応えはある。満州を舞台に戦争と人間を描く。

ホテル・ルワンダ」「ブラッド・ダイアモンド」 アフリカのシビアな現状を知ろう。

タイタニック」 しょーもないラヴ・ストーリーだが、VFXはさすがに凄いね。そしてタイタニック号の一等から三等までの区別が、当時の身分の差を象徴している。

ロミオとジュリエット」(1968,英/伊) やはりフランコ・ゼフィレッリ監督版がベスト。ニーノ・ロータの音楽が美しい。

プラトーン」「地獄の黙示録」「無人の野」(1980,ベトナム) ベトナム戦争のことを学ぼう。

タクシー・ドライバー」(1976,米) これはベトナム戦争後遺症の話。映画に漂うそこはかとない哀歓、虚無感がいい。カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)受賞。

ゴッド・ファーザー」(PART IIIを除く) シチリア島からの移民、家族の物語。

ハート・ロッカー」 詳しくはタイトルをクリックしてレビューをご覧あれ。

天国の日々」(1978,米) アカデミー撮影賞受賞。マジック・アワーに自然光で撮られた奇跡の映像美。

オテロ」(1986,伊) フランコ・ゼフィレッリ監督、プラシド・ドミンゴ主演のオペラ映画。ヴェルディの音楽に血沸き肉踊り、シェイクスピアの勉強にもなる。

」「蜘蛛巣城」「影武者」 黒澤時代劇をどうぞ。「乱」はシェイクスピアの「リア王」で、「蜘蛛巣城」は「マクベス」だ。

未知との遭遇」(1977,米) 多分スティーヴン・スピルバーグが自らシナリオを書いた唯一の映画。それだけ思い入れが強い。ある意味宗教映画だとも言える。上を向いて歩こう、星に願いを。

ヒア・マイ・ソング」(1991,英) 伝説のオペラ歌手を探してイギリスからアイルランドへ。大人のファンタジー。

我等の生涯の最良の年」(1946,米) ウィリアム・ワイラー監督。帰還兵がどう生きていくか?当時のアメリカにとって切実な問題だったのだろう。

フラガール」(2006,日) 福島県いわき市の物語。

一枚のハガキ」 98歳の新藤兼人監督が撮った遺作。詳しくはタイトルをクリック。

スウィングガールズ」(2004,日) ノリノリの映画。日本の女の子たちは元気だ。

善き人のためのソナタ」(2006,独) アカデミー外国語映画賞受賞。東西冷戦時、東ドイツが置かれていた監視社会の実像を克明に描く。

恋に落ちたシェイクスピア」(1998,米) アカデミー作品賞他7部門受賞。シェイクスピアを主人公に、「十二夜」を絡めながら描いてゆく。

真珠の耳飾りの少女」(2003,英/ルクセンブルク) フェルメール(コリン・ファース)と、絵のモデルになった少女(スカーレット・ヨハンソン)の物語。アカデミー賞で撮影賞・美術賞・衣装デザイン賞にノミネート。

い風車」(1952,英) 画家ロートレックの伝記映画。

ミッドナイト・イン・パリ」 ←クリックしてレビューへ。コール・ポーターやヘミングウェイ、スコット・フィッツジェラルド、ダリ、ジャン・コクトーなどが登場。アカデミー賞でウディ・アレンが脚本賞を受賞。

カイロの紫のバラ」(1985,米) ウディ・アレン脚本・監督による、心優しいファンタジー。

リンダ リンダ リンダ」(2005,日) バンドを組む女子高生たちの話。ペ・ドゥナも出てるよ。

Shall we ダンス?」 アカデミー外国語映画賞で日本代表になっていれば間違いなく受賞出来たのに、本当に惜しい。ハリウッドでリメイクもされた(割と出来が良かった)。

ロボコン」(2003,日) 「がんばれ!!ロボコン」ちゃうよ。「全国高等専門学校ロボットコンテスト」のこと。長澤まさみが可愛い。小栗旬も出ている。

東京裁判」(1983) 小林正樹監督によるドキュメンタリー映画。上映時間な、なんと4時間37分!!でも僕は公開当時に映画館で一気に観たよ。歴史について学ぼう。

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ 」(2009,日) 太宰治の小説が原作。吉松隆の音楽がいい。モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞受賞。

柳川掘割物語」(1987) 製作:宮崎駿、監督:高畑勲によるドキュメンタリー映画。水と人々の暮らしの関係について、じっくりと考えよう。

不都合な真実」(2006,米) アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞受賞。地球温暖化問題を扱う。

スラムドック$ミリオネア」(2008,英) アカデミー作品賞・監督賞・作曲賞・歌曲賞・脚色賞など8部門受賞。詳しくはタイトルをクリック。

沈まぬ太陽」(2009,日) 航空会社を舞台に展開される骨太なドラマ。日本航空ジャンボ機墜落事故がモデルとなっており、御巣鷹山も登場する。

フォッグ・オヴ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」(2003,米) アカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞。戦争に関する考察。

別離」(2011,イラン) アカデミー外国語映画賞受賞。タイトルをクリックし、レビューへ。

潜水服は蝶の夢を見る」(2007,仏/米) 驚くべき実話。詳しくはタイトルをクリック。

告白」(2010,日) R-15指定なので15歳になってから観よう。

バック・トゥー・ザ・フューチャー」(1985,米) 今更説明するまでもないが、タイム・トラベルものの代表作。PART 2は駄作。同様の趣向の作品として「バタフライ・エフェクト」(2004,米)とか、「恋はデジャ・ブ」(Groundhog Day,1993,米)もお勧め。

ある日どこかで」(1980,米) カルト映画。兎に角、下記記事を読んで下さい。それが全て。

大脱走」(1963,米) 捕まっても、捕まってもめげない、不屈の闘志。

アポロ13」(1995,米) 決断力。

ショーシャンクの空に」(1994,米) スティーブン・キング原作。ラスト・シーンの爽やかさは空前絶後。

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」 今年のアカデミー賞で監督賞・作曲賞・撮影賞・視覚効果賞を受賞。詳しくはタイトルをクリック。

きっと、うまくいく」(2009,印) なりたいものになれ!

フォレスト・ガンプ/一期一会」(1994,米) 「人生はチョコレートの箱と同じ。開けてみるまで分からない」アカデミー作品賞・監督賞など6部門受賞。アメリカ近代史を俯瞰する。

シービスケット」(2003,米) 競走馬と青年の心の交流。

シックス・センス」(1999,米) いま考えてみると、M・ナイト・シャマラン監督は”一発屋”だったなぁ。これ一本だけで映画史に名を残した(いや、まだ生きてるけどさぁ……)。

インファナル・アフェア/無間道」(2002年,香港) 香港ノワールの最高作。ハリウッドでリメイクされた「ディパーテッド」がアカデミー作品賞・監督賞を受賞したのはご承知の通り。でも断然、オリジナル版の方がいい。

キッズ・リターン」(1996,日) 北野武の映画の中で僕が唯一いいと想う作品。久石譲の音楽と相まって、ラスト・シーンには感動する。

宮藤官九郎(クドカン)脚本・監督「中学生円山 」 妄想力の肯定。

塩田明彦監督「どこまでもいこう」(1999) 小学生が主人公だが、過酷な現実を突き付ける結末なので中学生向けかも。塩田監督が同年に撮った「月光の囁き」も好きなのだが、些か変態映画なので中学生にはお勧め出来ない(原作は漫画)。また塩田明彦監督には「害虫」(宮崎あおい、蒼井優)や「カナリア」(谷村美月)といった中学生を主人公にした作品がいくつかあるが、みな内容はハードである。

舟を編む」 辞書を作ることがどれくらい大変な作業なのか、よく分かる。そして日本語を大切にすることを学ぼう。

DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る」 2011年3月11日を契機に日本はどう変わったのか?生々しいドキュメンタリーである。

ピーター・ジャクソン監督ロード・オブ・ザ・リング」3部作 通してみると無茶苦茶長いけど、中身が詰まったファンタジーの傑作であることは確か。 

やさしい本泥棒」(2013,米) 言葉は人を救う。詳しいレビューはこちらで。

ソロモンの偽証」(2015,日) 中学生が主人公のミステリー。レビューはこちら

最後に中学生向きではないかもしれないが、敢えてフェデリコ・フェリーニ監督の「道」(←詳細はクリック!)を挙げておく。僕自身、この映画を中学生の時に観て感動の涙を流した。決して早過ぎることはないだろうと信じる。

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選定!小学生に観せたい映画

*これは2013年に執筆したものである。7年後に内容を見直し、アップデートしたものを上げている。

この記事を執筆するに当たり、留意したことを列記する。

  • 子供が観て愉しいもの
  • 映画史に残る名作
  • 倫理、道徳的に教育上役立つもの
  • 世界の成り立ちについて見聞を深めるもの

上記のいずれかの条件を満たすものを選定した。また恋愛や性的描写があるものは入れていない。

こちらもどうぞ。

まず、これだけは押さえておきたい厳選ベスト12を順不同で示す。

  • モダン・タイムス (白黒)
  • 素晴らしき哉、人生! (白黒)
  • 禁じられた遊び (白黒)《3,4年生以上》
  • オズの魔法使い
  • い風船
  • サウンド・オブ・ミュージック
  • スター・ウォーズ エピソード4 (男の子向け)
  • E.T.
  • リトル・プリンセス (女の子向け)
  • 打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?
  • やかまし村の子どもたち
  • 遠い空の向こうに

具体的推薦理由は後述する。

では、思い付くまま書いていこう。些か小学生には難しいかな?という作品もなくはない。沢山挙げたので、後は親御さんが吟味し、取捨選択されたらよいだろうと考える。

ハリー・ポッター・シリーズ」 第1作から第3作まで。これはファンタジーとして文句なしに楽しめるだろう。ただ第4作「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」以降はダークサイドに突入するし、恋愛も絡んでくるので中学生以降で良いのでは?

チャーリーとチョコレート工場」 歌があって愉しんじゃないかな?ジョニー・デップの扮装も可笑しいし。

アリス・イン・ワンダーランド」 奇天烈な登場人物たちがいイイ。ディズニー・アニメ「不思議の国のアリス」と併せてどうぞ。

テラビシアにかける橋」 ファンタジーなんだけどこれには泣いたね。公開時にレビューを書いているからタイトルをクリックしてみて。

秘密の花園」(1993,米) 監督は女性でポーランド・ワルシャワ生まれのアニエスカ・ホランド。主人公メアリーの両親が原作ではコレラで亡くなるのに、映画では大地震のせいになっていたり、メアリーの母と伯父の亡くなった妻が双子の設定に変えられていたりと、不可解な改変は気になるが、ロジャー・ディーキンスの撮影とスチュアート・クレイグ(「ガンジー」「危険な関係」「イングリッシュ・ペイシェント」で3度アカデミー賞受賞)の美術が大変美しく、充足感を得られる。

E.T. 泣く子も黙る名作。

インディー・ジョーンズ」3部作(4作目「クリスタル・スカルの王国」は認めない) 冒険活劇の愉しさ。

ジョーズ」 これも一種の冒険映画だ。男の子向き。

激突! ハラハラドキドキのスリラー。

太陽の帝国」 少年が主人公。空を飛ぶことへの憧れ。宮崎駿監督のアニメーションにも通じるものがある。以上5作品連続でスティーヴン・スピルバーグ監督作品でした。

遠い空の向こうに」(October Sky,1999,USA) ロケット作りに取り組んだ少年たちの物語。原作が"Rocket Boys"で、映画のタイトルはそのアナグラムになっている。洒落てるよね。原作者は後にNASAで活躍し、少年時代の夢を実現する。素敵じゃない?少年少女よ、大志を抱け。夢を持て。

タワーリング・インフェルノ」「ポセイドン・アドベンチャー」「大空港 代表的なパニック映画(Disaster Movie)を3本並べた。

ダイ・ハード」「ダイ・ハード2」「スピード」「ブラック・サンデー」「アイアンマン」「アイアンマン3」 アクション映画の傑作を一同に。「ブラック・サンデー」は1977年に我が国で公開される予定だったが「上映すれば映画館を爆破する」との脅迫があり、中止となった。韓国映画「シュリ」がこのプロットを頂戴している。

ザッツ・エンターテイメント PART 1&2&3」「ザッツ・ダンシング」 MGMミュージカルの歌と踊りを堪能しよう。夢の世界へようこそ。

オズの魔法使い」(1939) 「風と共に去りぬ」と同じ年に公開された。永遠のジュディ・ガーランド。白黒とカラーの使い分けは後の映画の規範となった(例えば大林宣彦監督「転校生」)。

若草の頃」 ジュディ・ガーランドの歌に尽きるね。家族の物語。幸福な作品。

メリー・ポピンズ」 音楽が綺麗だし、実写とアニメの融合あり。ジュリー・アンドリュースがアカデミー主演女優賞を受賞。

サウンド・オブ・ミュージック」 サム・メンデス監督の映画「お家(うち)をさがそう」にこんな場面が登場する。主人公夫婦が訪ねる友達の家には沢山の養子の子供達がいる。友人夫婦はDVDで「サウンド・オブ・ミュージック」を観せているが、パーティで7人のトラップ家の子供達が「さようなら、ごきげんよう」を歌い終わると、「さあここまで!みんな寝なさい」と言ってテレビを消す。後で主人公がその理由を尋ねると、「映画はこの後、ナチスがオーストリアを併合してしまう。子どもたちに厳しい現実を見せるのはまだ早い」と答える。僕はこれを聞いて「なるほど、その手があったか!」と膝を打った。

ディケンズ原作の「クリスマス・キャロル」は何度も映画化されているが、アルバート・フィニーやアレック・ギネスが出演した1970年ミュージカル版をお勧めしたい。原題はSCROOGE。分かりやすく、心温まる。

スター・ウォーズ」6部作 説明不要だよね。僕がエピソード4を映画館で観たのは小学校5年生の時だった。

ミッション・インポッシブル」シリーズ(現在5作品) 1作ごとに監督が代わる。それぞれにカラーがあって面白い。スパイ大作戦。ただチーム・プレーではなく、トム・クルーズの一人相撲になっているのが些か不満ではある。

アンタッチャブル」 アル・カポネ vs. アメリカ財務省捜査官の死闘。スタイリッシュな映像で、格好いい。

ミクロの決死圏」 人体の神秘、冒険旅行。優れたSF映画だ。オリジナルのアイディアは手塚治虫の漫画「38度線上の怪物(「吸血魔団」改題)」→テレビ「鉄腕アトム」第88話「細菌部隊の巻」。ただクレジットはされていないので、真相は藪の中。

J.J.エイブラムズ監督「スター・トレック」「SUPER 8/スーパー・エイト」 J.J.は優れた映像センスを持つ監督。その作品には少年時代の夢がいっぱい詰まっている。彼がメガホンを取る「スター・ウォーズ エピソード7」も愉しみ。

木下惠介監督「二十四の瞳」(1954) 当時の文部省推薦映画。唱歌が沢山登場する。向田邦子賞を受賞した遊川和彦(脚本)のテレビ・ドラマ「女王の教室」(2005)は明らかに本作を意識している。また同じ小豆島を舞台にした映画「八日目の蝉 」も本作と繋がっているので、併せてどうぞ。

ベイブ」(1995,米) 子豚ちゃんの映画。動物好きなら。アカデミー視覚効果賞受賞。

アルベール・ラモリス監督「い風船」(1956,フランス) 色彩の美しいファンタジー。パリの風景もいい。カンヌ国際映画祭パルム・ドールおよび米アカデミー脚本賞受賞。同監督「素晴らしい風船旅行」(1960)もいい。大空への夢。あと「白い馬」(1953,カンヌ国際映画祭グランプリ)は白黒作品だが、動物たちの生き生きした描写と、驚くべき撮影技術に魅了される。

チャールズ・チャップリン監督・主演「キッド」(1921)「モダン・タイムス」(1936,白黒、サイレント) 子供はチャップリンのおどけた動作が好きだよね。「モダン・タイムズ」はサイレント映画だけれど、チャーリーが「ティティナ」を歌う場面ではトーキーに。名曲"Smile"も聴きどころ。

バスター・キートン主演「キートン将軍キートンの大列車強盗)The General」(白黒) 久石譲さんがこのフィルムのために作曲をしている。「キートンのセブン・チャンス」は次々と転がり落ちてくる石をかわす場面が圧巻。喜劇王はチャップリンかキートンか、はたまたロイドかと言われた時代があった。親しみを感じさせるチャップリンに対し、決して笑わないキートンには凄みを感じる。

ハロルド・ロイドなら「ロイドの要心無用」(1923,白黒) マーティン・スコセッシ監督「ヒューゴの不思議な発明」にも重要な場面で登場する。こちらもお勧め。

アナーキーなマルクス兄弟は「吾輩はカモである」(1933)と「マルクス兄弟オペラは踊る」(1935)どちらも白黒映画。ウディ・アレンが彼らのことを尊敬している。

アーサー・ペン監督「奇跡の人」(1962,米)は勿論、ヘレン・ケラーの物語。キー・ワードは"WATER"。リメイク版もあるが、やはり格調高いのはこちらの白黒版でしょう。

鉄塔 武蔵野線」(1997) 原作はファンタジーノベル大賞受賞。小学生が送電の鉄塔を探訪し、その源流をたどる物語。日本版「スタンド・バイ・ミー」だ。

岩井俊二監督「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」(1993) 日本映画監督協会新人賞受賞。僕が死ぬほど好きな映画。夏になると無性にこれを観たくなる。小学生たちが主人公。奥菜恵の絶頂期だね(撮影当時13歳)。

若草物語」はジューン・アリソン、マーガレット・オブライエン、エリザベス・テイラーらが出演した1949年版(カラー)も、ウィノナ・ライダー、キルスティン・ダンスト、クレア・デインズらが出演した1994年版もいい。

アルフォンソ・キュアロン監督「リトル・プリンセス」(1995,米) 原作は勿論「小公女」。エマニュエル・ルベツキの撮影が美しい。アカデミー賞で撮影賞、美術賞にノミネート。「女の子はみんな、プリンセスなのよ」という台詞が素敵だね。キュアロンは後に「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」を撮った。子どもの扱いが上手い人だ。

スポ根ものでは「ロッキー」第1作。浪速のロッキーこと「どついたるねん」(赤井英和の自伝)は中学生以降かな?

三池崇史監督「ヤッターマン」(2009) アニメの実写化として成功している。フカキョンも○。詳しいレビューはタイトルをクリックしてみて。

コーリャ 愛のプラハ」(1996,チェコ) アカデミー学国語映画賞受賞。優しい映画だ。チェコの近代史を学ぶことも出来て一石二鳥。名指揮者ラファエル・クーベリックが42年ぶりに祖国の土を踏む場面も登場する。

素晴らしき哉、人生!」(1946,米) アメリカ人はクリスマスにこの映画を観る習慣がある。何度観ても涙が流れ、心洗われる名作。白黒。また、同じくクリスマスを題材にした「三十四丁目の奇跡」(1947,米)も挙げたい。アカデミー助演男優賞、原案賞、脚色賞を受賞。

サム・ウッド監督「チップス先生さようなら」(1939,英) リメイクもあるけれど、この白黒オリジナル版のほうが優れている。全寮制男子校を舞台に、先生と生徒の心の交流が描かれる。アカデミー主演男優賞受賞。その年の対抗馬は、なんと「風と共に去りぬ」のクラーク・ゲーブルだった!

レオン」(1994,仏米合作) ジャン・レノとナタリー・ポートマンの出世作。プロットはフランス映画「シベールの日曜日」に似ている。この頃がリュック・ベッソン監督の全盛期だった。日本公開時のキャッチコピーは「凶暴な純愛」。

リトル・ダンサー」(2000,英) 原題はBilly Elliot。後にブロードウェイ・ミュージカルになり、トニー賞を総なめにした。最後に世界的ダンサーであるアダム・クーパーが特別出演。 

ルイ・マル監督「地下鉄のザジ」(1960,仏) 10歳の女の子がパリの街を冒険する。 ヌーベルバーグの時代が生んだスラップスティック・コメディ。

黒澤明監督「素晴らしき日曜日」(1947,日) まだ日本が貧しかった時代の初々しい青春映画である。最後に日比谷公会堂に流れる未完成交響楽が印象的。 

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」 ←タイトルをクリックしてレビューをどうぞ。9・11で心に傷を負った少年の再生の物語。

スウェーデン映画ながらアカデミー監督賞にノミネートされたラッセ・ハルストレム監督「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」。少年と犬との交流。スプートニク2号に乗せられたライカ犬のエピソードも登場する。この映画が切掛でハルストレムはハリウッドに招かれ、「ギルバート・グレイプ」「サイダーハウス・ルール」「ショコラ」「HACHI約束の犬」などを撮ることになる。ハリウッドに渡る直前に母国で完成させたのが「やかまし村の子どもたち」「やかまし村の春夏秋冬」の二部作。原作は「長くつ下のピッピ」のアストリッド・リンドグレーン。原作者自身が映画のシナリオも担当している。村の自然が息を呑むくらい美しく、驚嘆した。果たしてハルストレムは渡米して幸せになれたのだろうか?といったことをふと考え込んでしまった。

友だちのうちはどこ?」(1987)「運動靴と赤い金魚」(1997)はイラン映画。子どもたちが生き生きしている。「運動靴…」はモントリオール世界映画祭でグランプリに輝き、米アカデミー外国語映画賞にノミネート。

篠田正浩監督「少年時代」(1990)の原作は藤子不二雄Aの漫画。井上陽水による主題歌が大ヒットした。戦争中に藤子が疎開した富山が舞台となる。

ソ連のアンドレイ・タルコフスキー監督「ローラーとバイオリン」(1960)と「僕の村は戦場だった」(1962)は詩情溢れる作品。

北京オリンピックを演出したチャン・イーモウ監督「あの子を探して」(1997)は中国の実情がよく分かる。

ピーター・ボグダノヴィッチ監督「ペーパー・ムーン」(1973,米) テータム・オニールが史上最年少でアカデミー賞助演女優賞を受賞した。父娘で出演。心温まる珍道中だ。「がんばれ!ベアーズ」(1976)も併せてどうぞ。

山崎貴監督「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005)はVFXの使い方が秀逸。で、なんてったって堀北真希。東北地方が貧しく、集団就職があった時代のお話。

クリムゾン・タイド」(1995,米) 潜水艦で繰り広げられる、デンゼル・ワシントン vs. ジーン・ハックマン、男と男の闘い。痺れる。

天然コケッコー」(2007) 山下敦弘監督、原作はくらもちふさこの漫画。田舎の風景が素敵。詳しくはタイトルをクリック。

WATARIDORI」(2001,仏) 撮影期間3年、世界20ヶ国以上を訪れ、渡り鳥の生態を捉えたたドキュメンタリー映画。

リュック・ベッソン監督「アトランティス」(1991,仏)とイギリスBBC製作「ディープ・ブルー」(2003)は海洋ドキュメンタリーの傑作。地球を知ろう。夏に観たい。

アルフレッド・ヒッチコック監督の映画から「疑惑の影」「北北西に進路を取れ」「裏窓」ハラハラドキドキのスリラー。

アガサ・クリスティ原作からは「そして誰もいなくなった」(ルネ・クレール監督の1945年版)と「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」を推す。

西部劇(マカロニ・ウエスタン含む)なら「駅馬車」「荒野の決闘」「大いなる西部」「シェーン」「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」を。腕白な男の子向けだね(僕は西部劇が好きな女性にお目にかかったことがない)。 

アクションではジョン・ウー監督「男たちの挽歌英雄本色)」(1986,香港)「レッドクリフ(赤壁)」(2008-9)。マントが翻り、鳩が飛ぶ。スローモーションが格好いい。

黒澤明監督から「用心棒」「椿三十郎」「隠し砦の三悪人」「天国と地獄」。僕にとっては血沸き肉踊る痛快娯楽映画だね。「天国と地獄」は鮮烈なパートカラーにハッとさせられる。「隠し砦の三悪人」は「スター・ウォーズ」の原点となった(ジョージ・ルーカスは当初、三船敏郎にオビ=ワン・ケノービ役をオファーした)。

怪猫有馬御殿」(1953,日)は「化け猫女優」として知られる入江たか子さんの代表作。

大林宣彦監督「HOUSE ハウス」はおもちゃ箱をひっくり返したようなワンダーランド。これも一種の化け猫映画だ。

「魔神ドラキュラ」「恐怖の振り子」「フランケンシュタイン」(1931)「フランケンシュタインの花嫁」(1935)はホラー映画の代表格。フランケンシュタインをパロディにしたメル・ブルックスの「ヤング・フランケンシュタイン」やティム・バートンのアニメ「フランケンウィニー」も愉しい。

怪獣映画から「ゴジラ」(1954)「モスラ」(1961)そしてピーター・ジャクソン監督の「キング・コング」を。

金子修介監督の平成「ガメラ」3部作、「学校の怪談3」もいい。「ガメラ」は樋口真嗣の特撮が優れている。

SF映画からは「エイリアン」「エイリアン2」「ターミネーター」「ターミネーター2」「アバター」を推薦。

ジャパニーズ・ホラーの代表作は「リング」「呪怨」「仄暗い水の底から」。全てハリウッドでリメイクされた。

オーケストラの少女」といえばディアナ・ダービン。またレオポルド・ストコフスキーが本人役で登場。背筋をピンと伸ばした指揮ぶりが素敵だ(ストコフスキー関連でディズニーの「ファンタジア」も是非)。

次の2作品を観て、戦争について語り合おう。小学校中学年(3,4年生)以降が相応しいだろう。

《3,4年生以上》ルネ・クレマン監督「禁じられた遊び」(1952,仏) この映画は特に、「禁じられた遊びとは何か?」を子供と一緒に考えるのが有効だと想われる。僕も小学生の時、道徳の授業で観た。

《3,4年生以上》ジョージ・スティーブンス監督「アンネの日記」(1959,米) 僕はアルフレッド・ニューマンがこの映画のために書いた音楽が大好きだ。本作でしか知られていないミリー・パーキンス(アンネ・フランク役)の可憐な魅力も忘れがたい。

《3,4年生以上》ジェニーの肖像」(1948,米) 幻想映画の大傑作。白黒だが最後の最後にカラーになる演出に感動する。ドビュッシーの音楽が印象的に使われている。

《3,4年生以上》小さな恋のメロディ」(1971,英)可愛らしい映画。本国イギリスやアメリカではさっぱり当たらず、日本だけで大ヒットという不思議な現象が起こった。何でだろう?その理由について親子で話し合ってみるのも一興かも。ビー・ジーズの「メロディ・フェア」が爽やか。

《3,4年生以上》ふたつの名前を持つ少年」(2013,独/仏) 実話に基づく驚くべき物語。詳しいレビューはこちら

《3,4年生以上》ジュラシック・ワールド」(2015,米) 恐竜の世界へようこそ。レビューはこちら

《高学年向け》カラー・パープル」 スピルバーグ監督作品。これを観て、アメリカの黒人差別について子供と話し合おう。

《高学年》夜の大捜査線」(1967,米) アカデミー賞の作品賞・主演男優賞・脚色賞など5部門受賞。黒人刑事と白人警察所長との対立。ここでも人種差別問題が描かれている。

《高学年》ヘルプ 心がつなぐストーリー」(2011,米) これも黒人差別問題を扱っている。詳しくはタイトルをクリック。

《高学年》太陽の少年」(1994,中国/香港) 文化大革命の時代を背景に描かれる青春映画かつ夏の映画。「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」に似た雰囲気がある。

《高学年》ライフ・イズ・ビューティフル」 アカデミー外国語映画賞、主演男優賞、作曲賞を受賞。ナチスのホロコーストについて学ぼう。

《高学年》冨樫森監督「ごめん」(2002) 思春期、性への目覚めを丁寧に描いている。

《高学年》十二人の怒れる男」(1957,米)と中原俊監督「12人の優しい日本人」(1991)では陪審員制度、ディスカッションのあり方について勉強しよう。

《高学年》未来を生きる君たちへ」(2010,デンマーク) アカデミー外国語映画賞受賞。詳しくはタイトルをクリックし、レビューへ。

《高学年》炎のランナー」(1981,英) オリンピックがテーマになっている。米アカデミー賞で作品賞、作曲賞、衣装デザイン賞、脚本賞を受賞。

《高学年》アラバマ物語」  原題は"To Kill a Mockingbird"。グレゴリー・ペックがアカデミー主演男優賞を受賞。他に脚色賞、美術賞も。この映画で描かれる父親(正義感溢れる弁護士)はアメリカの良心、理想像(ヒーロー)だね。アメリカ映画協会(AFI)は本作を”最も偉大な法廷ドラマ”第1位に選出した。

以上気の向くまま、思い付くままに書いていったので、製作年はバラバラである。悪しからず。

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2013年6月12日 (水)

タリス・スコラーズ(ア・カペラ)@兵庫芸文

6月8日(土)兵庫県立芸術文化センターへ。

ピーター・フィリップス指揮タリス・スコラーズを聴く。ルネサンス期の教会音楽(無伴奏)を専門にするコーラス・グループで、男5人・女5人で構成されている。ただし、1人はカウンターテナー(アルト)なので、実質的には男声(テノール・バス)4・女声(ソプラノ・アルト)6ということになる。

Tallis

今回は結成40周年記念ツアー〈ベスト・オヴ・タリス・スコラーズ〉と銘打たれており、彼らの代表曲ばかり聴けるという贅沢なプログラム。

曲目は、

  • オルランドゥス・ラッスス/うるわしき救い主のみ母
  • ジョスカン・デ・プレ/ミサ・パンジェ・リングヮ
  • グレゴリオ・アレグリ/ミゼレーレ
  • トマス・タリス/主よ、われらをあわれみたまえ
  • ジョン・タヴナー/小羊
  • トマス・ルイス・デ・ビクトリア/聖土曜日のためのエレミアの哀歌 第3部
  • ウィリアム・バード/主よ、認めたまえ

Tallis2

透明感があり、聖なる響きに心洗われる想いがした。

ローマのシスティーナ礼拝堂で歌われ、楽譜が門外不出の秘曲だった「ミゼレーレ」を14歳だったモーツァルトが二度聴いただけで正確に採譜したというのは余りにも有名なエピソードである。僕が大好きな曲で、タリス・スコラーズのCDを繰り返し聴いている。ステージに5声部、1階席上手サイドに1人、2階席下手サイドに4声部のコーラスを配し、立体的音響に魅せられた。森の空気感、そこに差し込む木漏れ日の光などの情景が思い浮んだ。

ジョン・タヴナーは現代の作曲家。宗教曲でありながら、調性音楽から逸脱する面白さ。

今回一番気に入ったのが「聖土曜日のためのエレミアの哀歌」。兎に角美しい!

またアンコールで歌われた、アルヴォ・ペルトが作曲した静謐なアヴェ・マリアも素晴らしかった。

前半はバス・パートの声の調子が悪く掠れていて残念だったが、後半はコンディションが改善し、随分良くなった。

しかし、やはりこうした宗教音楽は2,000人も収容する大ホールではなく、教会のように小ぢんまりとした、残響が豊かな空間で聴きたいな。

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チョン・キョンファ/ヴァイオリン・リサイタル@兵庫芸文

6月5日(水)兵庫県立芸術文化センターへ。

Chung

チョン・キョンファのヴァイオリン、ケヴィン・ケナーのピアノで、

  • モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ 第35番 ト長調 K.379
  • プロコフィエフ/ヴァイオリン・ソナタ 第1番
  • バッハ/シャコンヌ
  • フランク/ヴァイオリン・ソナタ
  • シューベルト/ソナチネ 第1番 Op.137より (アンコール)

モーツァルトは甘くなく、ヴィブラートは抑え気味。しかし品位と潤いのある演奏。第2楽章は毅然として誇り高い。全体を通して速めのテンポで、第3楽章は軽やかに締め括られた。

プロコフィエフの第1楽章はピンと張り詰めた空気があり、第2楽章は厳しい表情で激しい演奏。第3楽章は幻夢的。月の夜の妖しさが漂う。第4楽章は才気煥発。迸るような歓びがあった。

バッハシャコンヌは基本的にノン・ヴィブラート。要所要所ここぞという時にブルルン!と高速ヴィブラートが唸る。颯爽と吹く風が感じられ、ツルツルとした肌触りではなく木目の温もりがあった。

フランクはピンと背筋が伸びた演奏。第1楽章は貴婦人が午後の紅茶をゆったり飲んでいる情景が思い浮かぶ。周囲の風景は枯葉散る秋、凛とした空気感がある。第2楽章は研ぎ澄まされた音で突風が吹き荒れる。冬の到来だ。第3楽章はカンタービレで情熱や強い思いを訴えるかのよう。そして第4楽章は春の訪れ。木々は芽吹き、蕾が花開く情景が目の前にパァーッと広がった。

シューベルトは歌心に満ち、優しい表情が印象的だった。

チョン・キョンファの弟、チョン・ミョンフンの指揮は先日フェニーチェ歌劇場「オテロ」で聴いた。別のジャンルにおいて姉弟で世界一流の音楽家になるって凄いことだね。

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2013年6月 8日 (土)

室内楽の森へ~厳選!これだけは絶対聴いておきたい80曲 その3 《20世紀以降》

まずはこちらからどうぞ。

今回は20世紀以降の作品を取り扱う。

〈コダーイ/ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲〉(1914) 言うまでもなくコダーイ・ゾルターンの最高傑作は無伴奏チェロ・ソナタである。これは議論の余地がない。ただ室内楽の定義に当てはまらないので、代わりに二重奏曲を選んだ。ハンガリーの民族色豊か。どこか郷愁にも似た懐かしさを感じさせ、土の香りがする。

〈ディーリアス/弦楽四重奏曲〉(1916/19改訂) 第3楽章は使徒エリック・フェンビーが弦楽合奏用に編曲しており、「去り行くつばめ」として単独で演奏されることもしばしばある。過ぎゆく季節(多分、夏)を惜しみ、愛おしむかのように心に染み入る楽曲。フレデリック・ディーリアスはイギリスの商家に生まれたが両親はドイツ人である。22歳の時オレンジのプランテーションを学ばせるため3年間アメリカのフロリダ州に送られたが、仕事を放棄した。その後もノルウェーを放浪したりして(グリーグやシンディングと山でトレッキングしている)、最終的にパリ郊外のグレ=シュル=ロワンに居を構えた。だから余りイギリスの作曲家という気がしない。むしろCosmopolitan、自由人と呼ぶべきだろう。

〈ヒンデミット/ヴィオラ・ソナタ 作品11-4〉(1919) ヒンデミットはヴィオラ奏者としても活躍し、1920年に結成されたアマール弦楽四重奏団の一員でもあった。だからヴィオラ作品を書く時は他と比べて全然気合の入り方が違う。紛れもなく彼の最高傑作である。

レスピーギ/ドリア旋法による弦楽四重奏曲〉は「ローマの松」と同じ1924年に作曲された。ドリア旋法とは中世ヨーロッパの教会旋法のこと。レスピーギには古いリュートのための曲を弦楽合奏用に編曲した「リュートのための古風な舞曲とアリア」や、ピアノ独奏曲「グレゴリオ旋法による3つの前奏曲」をオーケストレーションした「教会のステンドグラス」などを書いており、古楽への憧れがある作曲家だ。古(いにしえ)の響き。しかし意外と激しい曲調。ブロドスキー四重奏団の演奏を推す。

〈ガーシュウィン/3つの前奏曲〉(1926) 元々はジャズやブルースの語法を内包するピアノ独奏曲。作曲家と親交があったヤッシャ・ハイフェッツによるヴァイオリン&ピアノ編曲版が有名。

〈ベルク/抒情組曲〉 十二音技法+無調音楽。初演は1927年。1980年代になり、ベルクが不倫相手に渡していた手稿譜がその娘により公開された。そこには第1ヴァイオリンのパートの下にボードレール「悪の華」の詩”深淵からの叫び”が書かれていた。詩の日本語訳は→こちら。つまりこれはヤナーチェク/「ないしょの手紙」同様、不倫がモチーフだったことが半世紀を経て初めて明らかにされたのだ。密やかな夜の音楽。ドロドロとした得体の知れない感情が渦巻く。

〈ヴィラ=ロボス/ショーロの形式による五重奏曲〉(1928) フルート,オーボエ,クラリネット,バスーン,ホルンのための五重奏曲である。ヴィラ=ロボスの作品ならソプラノと8名のチェロ奏者による「ブラジル風バッハ 第5番」を選ぼうかと当初考えていた。しかし有名な作品よりは陽の当たらない作品を取り上げようと、こちらにした。ショーロとは19世紀にリオ・デ・ジャネイロで興った、即興的ポピュラー音楽のスタイルである。「ブラジルのジャズ」と称されることもある。5つの楽器がそれぞれに主役を競い、火花を散らす。ラテンの血が滾(たぎ)る。

フランツ・シュミット/弦楽四重奏曲 ト長調は1929年に作曲された。調性と無調の間をたゆたう感じがなんとも言えない。その不安定さが魅力。

〈ロージャ/ハンガリー農民の歌による変奏曲〉(1929) ロージャ・ミクローシュ(英語読みでミクロス・ローザ)はハンガリーに生まれ、ハリウッドに渡り映画音楽作曲家になった。「白い恐怖」「二重生活」「ベン・ハー」で3度アカデミー作曲賞を受賞。このヴァイオリンとピアノのための曲を知っていれば、後に彼が作曲した映画音楽からハンガリー民謡のこだま(Echo)が聴こえてくるだろう。他に「北部ハンガリー民謡と踊り」「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」も素敵な曲だ。

ゴーベール/フルート・ソナタ 第3番(1933) 泣きたくなるくらい綺麗なメロディ。第1楽章は春のそよ風を感じさせる。第2楽章「間奏曲、牧歌」は軽やかで透明感がある。一転して第3楽章は活発で、子供たちがはしゃいでいるかのよう。ドビュッシーがもしフルート・ソナタを作曲していたら、こんな雰囲気になっていたのではないか?と想像の羽根を広げさせてくれる作品。

〈バルトーク/弦楽四重奏曲 第5番〉 バルトーク弦楽四重奏曲第4番第5番が傑出している。内面から沸き起こる衝動、ハンガリー民族音楽的リズムの激しさ、野性味(wild nature)。僕は第5番(1934)を推すが、第4番(1928)が一番好きという人も少なくない。

〈コープランド/六重奏曲〉 バレエ音楽「アパラチアの春」「ロデオ」「ビリー・ザ・キッド」で知られるアーロン・コープランドは”アメリカ(近代)音楽の父”である。クラリネット、ピアノ、弦楽のための六重奏曲は1937年に作曲された。西部開拓時代を思わせるフロンティア・スピリットに満ちている。コープランドは西部劇の映画音楽に多大な影響を与え、ジョン・ウィリアムズの楽曲も「華麗なる週末」(1969)、「11人のカウボーイ」(1971)、「7月4日に生まれて」(1989)、「プライベート・ライアン」(1998)などにコープランドの影を色濃く見ることが出来る。

〈バーンスタイン/クラリネット・ソナタ〉(1942) レニーにとって、出版された初めての作品。シンコペーションを多用し、ジャズテイスト満載。ノリがいい。

プロコフィエフ/フルートソナタは1943年に初演されたが、それを聴いたダヴィット・オイストラフからの依頼で、ヴァイオリン・ソナタ 第2番に生まれ変わり、44年に初演された。プロコフィエフの楽曲はどこかひんやりした冷たい感触がある。それは恐らく感情に溺れることのない、知性の輝きなのだ。

フランセ/木管五重奏曲 第1番(1948) 本当は最もお勧めしたいのが"L'Heure du berger"日本語に訳すと「恋人たちの時刻」「恋人たちの黄昏時」といった意味。バソン、ホルン、フルート、ピアノ、クラリネット、オーボエの六重奏。プーランク/六重奏曲と同じ編成。特に第3曲"Les petits nerveux"(神経質な子供たち)が軽妙洒脱で最高!最後にどんどん加速していく展開も愉しい。木管五重奏曲 第1番も「フランスの粋=ダンディズム」を感じさせる。

〈ヒナステラ/弦楽四重奏曲 第1番〉(1948) アルベルト・ヒナステラはアルゼンチンの作曲家。やはりラテンのノリだ。パンチが効いていてリズムが熱い。奔放な響き。ところが第3楽章になると一転、深い闇を描く。

ジョン・ケージ/4つのパートのための弦楽四重奏曲〉 ケージが1950年に作曲した "String Quartet in Four Parts"はそれぞれ次のような標題が付けられている。

  1. 静かに流れゆくこと (夏)
  2. ゆっくりと揺れ動くこと (秋)
  3. ほとんど動かないこと (冬)
  4. クオドリベット (春)

クオドリベット(Quodlibet)とは2つ以上のポピュラーソングを同時に演奏することで、対位法の一種。バッハ/ゴルトベルク変奏曲にも登場する。

ノン・ヴィブラート奏法による静謐なモノトーンの世界。五線譜の中にポツポツと音符が散らばっているよう。それは日本の石庭を連想させる。実際、ケージには「龍安寺」という作品がある。

〈バーバー/夏の音楽〉(1956) サミュエル・バーバーはアメリカの作曲家。弦楽四重奏曲 第1番 第2楽章を編曲した「弦楽のためのアダージョ」が余りにも有名(映画「プラトーン」などで使用された)。「夏の音楽」は木管五重奏曲。湿度が高くジメジメした日本の夏とは異なり、風通しの良い高原の爽やかさを感じさせる楽曲。

〈黛敏郎/プリペアド・ピアノと弦楽のための小品〉(1957) 小難しい前衛・ゲンダイ音楽というよりは、実験音楽という名称が相応しい。ピアノをいじくるとハープとか鉄琴みたいな、こんな音が出るんだ!という面白さ。独奏曲だがジョン・ケージ作曲「プリペアド・ピアノのためのソナタとインタリュード」もお勧め。

カステレード/笛吹きたちのヴァカンス(笛吹きの休日)〉(1962)はお洒落なフランス産フルート四重奏で、趣向が似た作品にボノー/ディヴェルティメントがある。後者はフルート四重奏にピアノ伴奏付き。

〈コリリアーノ/ヴァイオリン・ソナタ〉(1963) コリリアーノは映画「レッド・ヴァイオリン」でアカデミー作曲賞を受賞。それをヴァイオリン協奏曲にまとめたものや、独奏ヴァイオリンのための「レッド・ヴァイオリン奇想曲」もある。いずれも大好きな作品だ。瞑想的な「レッド・ヴァイオリン」に対してヴァイオリン・ソナタはリズミカルで躍動感がある。そしてカラフル。

〈ハーマン/航海の想い出〉(1967) 寂しいクラリネット五重奏曲である。バーナード・ハーマンは不朽の名作「市民ケーン」などの映画音楽作曲家として知られる。アルフレッド・ヒッチコック監督との10年に渡る蜜月(「サイコ」「めまい」「北北西に進路を取れ」)が破綻し(1966年の映画「引き裂かれたカーテン」で両者の関係は文字通り引き裂かれ、ヒッチコックはハーマンが書いた音楽をキャンセル。ジョン・アディソンに交代させた)、ハーマンは66年フランソワ・トリュフォー監督から招かれ、イギリス映画「華氏451」の音楽を作曲する。心に傷を負った哀しみの旅路。それはブラームス/クラリネット五重奏を彷彿とさせ、ハーマンの作品の中ではヒッチコックの「めまい」やブライアン・デ・パルマ監督の「愛のメモリー」に近い曲調と言えるだろう。

リゲティ/弦楽四重奏曲 第2番(1968)は皮下を無数の蟲が這いずり回り、耳の中で羽虫がブンブン唸っているような曲。

〈ウォルトン/ピアノ四重奏曲〉(1921/74改訂) イギリスのウィリアム・ウォルトンは理知的な作曲家である。感情に流されることなく、全てが完璧にコントロールされている。言い換えるなら「そつが無い」。それは反面、人間味に欠けるということにもなり、日本で余り知名度がない原因なのかも知れない。ウォルトンが他のイギリスの作曲家、例えばエルガー、ディーリアス、ヴォーン=ウィリアムズらと一線を画するのは、その明確なリズム感である。動的なのだ。

〈ブリテン/ラクリメ-ダウランド歌曲の投影〉(1976) ヴィオラとピアノのための楽曲。ジョン・ダウランド(1563-1626)はイギリスの作曲家。古(いにしえ)との対話である。ベンジャミン・ブリテンが作曲した有名な「青少年のための管弦楽入門」は別名「ヘンリー・パーセル(1659-1695)の主題による変奏曲とフーガ」と呼ばれる。同様の趣向と言えるだろう。弦楽四重奏版「シンプル・シンフォニー」もお勧め。

〈吉松隆/デジタルバード組曲〉(1982)  フルートとピアノのための作品。機械じかけのデジタルバードを主人公にした架空のバレエのための音楽からの組曲という設定。シリアスよりはポップ、アナログよりはデジタルという発想で書かれている。サクソフォンのために書かれたファジィバード・ソナタ第1楽章 Run,Bird 、第2楽章 Sing,Bird 、第3楽章 Fly,bird)も併せてどうぞ。吉松隆はNHK大河ドラマ「平清盛」で有名だが、他に映画「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」の音楽も担当していて、これもなかなか良い。

〈グラス/弦楽四重奏曲 第3番「MISHIMA」〉(1985) 緒形拳が三島由紀夫を演じたハリウッド映画「MISHIMA」(遺族の不興を買い、日本未公開)のために作曲された音楽をまとめたもの。クロノス・クァルテットがお勧め。映画のサントラもいい。こちらもクロノス・クァルテットが演奏しているが、他にパーカッション、ハープ、エレキギター、シンセサイザー(キーボード)などが参加している。全体を漂う浮遊感がいい。

〈グレツキ/弦楽四重奏曲 第2番「幻想曲風に」〉(1990/91) 瞑想的・思索的作品。心の襞の奥底にまで、音楽がヒタヒタと染み渡ってゆく感じ。ヘンリク・グレツキ(1933-2010)はポーランドの作曲家。ホロコーストを題材にした交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」CDは空前絶後の売上を記録。全英ポップス系ヒットチャートで第6位まで上り詰め、社会現象に発展した。

ナイマン/ソングス・フォー・トニー(1993)はサクソフォン四重奏で、亡くなった友人へ捧げられた痛切な哀歌。マイケル・ナイマンはイギリス人。ミニマル・ミュージックの騎手だが、同ジャンルの中でも飛び抜けてメロディアスな作曲家だと想う(久石譲さんも)。映画「ピアノ・レッスン」の音楽なんか大好きだなぁ。

〈ドアティ/歌え!フーヴァーFBI長官〉 エドガー・フーヴァー長官の人となりを知っていた方が楽しめるので、レオナルド・ディカプリオ主演クリント・イーストウッド監督の映画「エドガー」も併せてどうぞ。フーヴァーの声を編集しラップのように扱い、電話の音・タイプライター・銃声などをコラージュする。アメリカ国歌やサン=サーンスの「動物の謝肉祭」も登場。クロノス・クァルテットのアルバム「吠える!」に収録。マイケル・ドアティは交響曲第3番「フィラデルフィア物語」が有名。その第3楽章「ストコフスキーの鐘」は編曲され、しばしば吹奏楽コンクールでも演奏される。

譚 盾(タン・ドゥン)/Shuang Que〉は二胡と揚琴のアンサンブルで中国的。タン・ドゥンはまずアカデミー作曲賞を受賞した「グリーン・デスティニー」(原題: 臥虎蔵龍、英語題: Crouching Tiger, Hidden Dragon)から聴いて欲しい。また映画「HERO」のための音楽もお勧め。

〈ヴァスクス/弦楽四重奏曲 第2番「夏の歌」〉(1984) ペトリス・ヴァスクス(1946- )はラトヴィアの作曲家。静謐な叙事詩。鳥の声も聴こえる。エストニアのアルヴォ・ペルトの作風に近い印象を受ける。国がお隣同士だから共感性があるのだろう。

〈グバイドゥーリナ/弦楽四重奏曲 第4番〉(1993) ソフィア・グバイドゥーリナはロシア連邦タタールスタン共和国出身の作曲家。テープとの共演で特殊奏法が聴きどころ。特にマンドリン風に弾く技法が面白い。単一楽章。

カプースチン/フルート、チェロとピアノのための三重奏曲は1998年に作曲された。これをブラインドで聴いてウクライナの作曲家だと当てられる人は皆無だろう。お洒落で粋な正真正銘のJAZZ MUSIC。

〈マッケイ/ブレイクダウン・タンゴ〉 先鋭的リズムが無茶苦茶格好いい!吹奏楽コンクールでしばしば演奏される「レッドライン・タンゴ」(ウォルター・ビーラー記念作曲賞、ABAオストウォルド賞受賞)の室内楽版。

以上、3回に分けてお届けした。もし他に、推薦曲があればどんどんコメント欄にお書き下さい。室内楽についてあれこれ語り合いましょう。

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2013年6月 7日 (金)

初体験!AKB48握手会顛末記

僕は高校1年生の時、原田知世 主演/大林宣彦 監督「時をかける少女」を満員の映画館で観て、感涙に咽いだ。そして「この監督の作品をわが里程標(マイルストーン)として生きていこう」と決意した。本当の話である。その後、「この空の花」まで大林映画は必ず公開時に映画館で観て来たし、監督の古里・広島県尾道市は勿論のこと、「廃市」の福岡県柳川市、「青春デンデケデケデケ」の香川県観音寺市、「はるか、ノスタルジィ」の北海道小樽市、「天国にいちばん近い島」のニューカレドニア・ウベア島など大林映画のロケ地へ旅を重ねて来た。

だから大林監督が今年、AKB48のミュージック・ビデオ「So Long !」を撮ったことは僕にとって大事件だった。

この64分に及ぶMVを観ないわけにはいけない。だからAKB48のCDを初めて購入した。そして、どうせならということで3月に京セラドーム大阪で開催された握手会にも参加した。

まず女性ファンが多いのに驚いた。来場者の男女比は6:4くらいだろうか?小中学生など子どもたちも沢山来ている。幼児から老人(例えば高橋みなみ推しの田原総一朗、79歳)まで幅広い層に支持されているのが「国民的アイドル」AKB48の強みだろう。

会場で歌われたのは、

  • So Long !
  • GIVE ME FIVE !
  • 重力シンパシー
  • 掌(てのひら)が語ること(東日本復興応援ソング)

「むちゃぶりショートコント」の後、大島優子がM.C.の横山由依に「すごく良かったよ!」と言った。これはどうやら大林監督の物真似らしい。監督は意外と彼女たちから好感を持たれているんだなと、何だか嬉しかった。

さて握手券が手元に4枚あったので下記のレーンに行った。

  1. 渡辺麻友 
  2. 柏木由紀 
  3. 島崎遥香・永尾まりや・横山由依
  4. 大島涼花・川栄李奈・森川彩香

まゆゆ(渡辺)とゆきりん(柏木)、ゆいはん(横山)は握手の対応がとても感じの良い女の子たちだった。あとステージで見て、まゆゆってすらっとした美脚なんだなと初めて気が付いた。

ぱるる(島崎)は喉の調子が悪く握手の時も無言だったので、彼女が噂通りの「塩(しょっぱい)対応」なのかどうか、よく分からなかった。

始終ブスッとして非常に印象が悪かったのが川栄李奈。僕は基本的にDD(誰でも大好き)なのだが、いっぺんにアンチになった。6月8日の選抜総選挙で(運営側がゴリ押ししている)彼女が64位までにランクインしないことを願う。

握手会の途中でユニット曲も披露された(先頭表記がセンター)。

  • 黒い天使(入山杏奈・菊地あやか・仁藤萌乃)
  • 天使のしっぽ(川栄李奈・大島涼花・森川彩香)

丁度この時、握手レーンに並ぶためアリーナ席に降りてきていたので、幸運にも至近距離から観ることが出来た。やっぱりライヴはいいね。ドームの外野席から大型ビジョンで眺めても意味がない。ぜひいつか、劇場公演を生で観てみたいなと想った。

待っている間に会場でメンバーによるラジオ生放送があったり、退屈しないよう工夫されているし、数万人もの来場者を何一つ混乱なくスマートに誘導する運営の手腕もさすがだなと感心することしきりであった。

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2013年6月 3日 (月)

「はじまりのみち」公開記念〜木下惠介監督再評価のために/彼の性的嗜好に関する考察

木下恵介監督を主人公にした映画「はじまりのみち」が現在、公開中である。

僕が木下映画を初めて接したのは高校生くらいだったと想う。「二十四の瞳」「野菊の如き君なりき」「カルメン故郷に帰る」などを観た率直な感想は、「得体が知れない」「不気味だ」「理解に苦しむ」といった印象だった。

どうしてこの人の作品に登場する男たちは(優男で)ナヨナヨしていて、女々しいのか?何故この監督は男女の恋愛が描けないのか?女子大の学生運動を描く「女の園」で女性たちへの共感性が(異常に)高い理由は?「二十四の瞳」でデコちゃん(高峰秀子)が結婚しその夫は戦死するのだが、彼の存在感が希薄なのは意図的なのか?など、頭の中が疑問符だらけであった。このモヤモヤした違和感は一体何処から来るのだろう?僕は途方に暮れた。

大学生の頃NHKで放送された、木下監督(当時存命)へのインタビューもまた不可解だった。独身の木下は男の養子をとっているという。どうしてそんなことをするのか、当時の僕にはさっぱり分からなかった。

それから10年くらいたってからだろうか。同性婚を認められていない国では、ゲイ・カップルが養子縁組をすることがよくあるという事実を知ったのは。木下がゲイだったと仮定すれば、今までの疑問が全て氷解することに漸く考えが至った。

恩地日出夫(著)「砧撮影所とぼくの青春」によると、木下は女性的な言葉使いをすることが多かったという。

また、映画評論家の石原郁子はその著書「異才の人 木下惠介/弱い男たちの美しさを中心に」の中で1959年(昭和三十四年)の映画『惜春鳥』を「日本メジャー映画初のゲイ・フィルム?」と評し、

木下はこの映画で一種捨身のカムアウトとすら思えるほどに、はっきりとゲイの青年の心情を浮き彫りにする。邦画メジャーの中で、初めてゲイの青年が〈可視〉のものとなった、と言ってもいい。

ここには監督が男性同士に演じさせたかった肉体的接触が、かつてなく大胆に〈常識〉の枠に囚われることなく(木下映画ではこれまで、男性同士が裸体で、あるいは蒲団に入って近くにいるシーンはなかった)表現されており、その意味でも監督自身の〈好み〉を、さらにはっきり言えば〈性向〉を、堂々と主張した映画と言える。

ごく一般的には、ゲイでない男性の多くが、やはり『惜春鳥』に対して「気色悪い」という感じを持つようだ。「才能」「抒情」「女性的」。男性知識人たちは、そうした言葉で彼を評価するとき、もしかしたら、そこに自分たちには見えない、あるいは見えているのに語る言葉が分からない未知のものを感じ取り、密かに怯え、「辟易」し、しかもそれゆえにこそ魅了されたのではなかったか。

当時はおろか現在でさえ、日本の女性監督の数は世界に類を見ない少なさだが、じつはそこに木下惠介が、並み居る男性作家たちを凌駕して屹立していた。「女」「女性的」という言葉を冠されながらこれほど活躍し、高く評価された映画作家は他にない、というだけではなく、彼はそのことによって、実際に日本映画の男性性の中に、彼らの持つ原理や原則とはまったく無縁な「女性」として作用したのだ。

と語る。そして最後に

私にとって木下は、世界に類のないほど男性優位である日本映画界でほとんど唯一の例外としての〈女性監督〉だった。

(中略)もちろん、彼が実際に〈女性〉であれば、やはりこうした成功はあの時代にあり得なかったろうから、その点では、厳密に木下恵介が〈女性〉としてだけあったとは言えないが、しかし彼は、少なくとも何か〈男性〉ではないもの、ジェンダーの越境者、周縁者、あるいは家父長主義・男性優位社会からしなやかに降りた元・男性だ。

と結論付けるのである。

またシナリオ2008年6月号別冊「脚本家 白坂依志夫の世界 書いた!跳んだ!遊んだ!」の中で黒澤映画の脚本家・菊島隆三についての記載があり、次のように書かれている(209ページ)。

 戦後、黒澤・木下時代というのが、長くつづいた。二人の監督は、競うように、問題作を連打した。
 黒澤監督がシナリオを書き、木下さんが監督をするという企画が発表された時は、大変な話題になった。
 松竹映画で、「肖像」という題名であった。
 木下監督がホモ・セクシャルなことは、有名である。木下組の助監督は、そろって美青年で、そろいのスーツにそろいのネクタイ、華やかな現場だったと、後年、篠田正浩監督にきいた。
「肖像」の脚本にとりかかるために、木下監督と旅館にこもることになった黒澤さんに、
「黒さん(黒澤監督の愛称)」
 と、菊島さんが冗談まじりにきいたそうである。
「夜中、木下さんが、襲ってきたらどうしますか?」
「なにィ?」
 と、黒澤さんは目をムイて、
「尻をねらってきたら、かまわないから、クソをぶっかけてやるさ」
 破顔大笑した。

今年、NHK「クローズアップ現代」で木下が取り上げられた時(こちら)、僕は正直その内容にがっかりした。わざわざ番組の中でゲイであることをカミングアウトしている橋口亮輔監督(「二十歳の微熱」「ハッシュ!」)にインタビューしているのに、木下がゲイであったことに一切触れなかったのだ。その視点から彼の映画をどう観るかという話が聴きたいのに。故に木下恵介とは何だったのか?という核心に迫れなかった。本人がカミングアウトすることなく亡くなったということもあるのだろうが、やはり日本においてこの問題は未だにタブーなんだなと想った。

木下映画「日本の悲劇」や「楢山節考」のテーマはある意味、母殺しであると言える。その点で寺山修司の「田園に死す」や「書を捨てよ町へ出よう」に繋がっている。調べてみると案の定、寺山も(本人はカミングアウトしなかったが)ゲイだったと言われているようだ。

欧米で最初に”発見”された、日本映画の巨匠といえば1951年に「羅生門」でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した黒澤明だろう。「影武者」の製作を助けたフランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカス、「夢」の企画を実現させたスティーヴン・スピルバーグなど黒澤を敬愛する映画作家は後を絶たない。さらに1953年「雨月物語」で銀獅子賞を受賞した溝口健二、「東京物語」の小津安二郎が続いた(ジム・ジャームッシュ監督「ストレンジャー・ザン・パラダイス」にはTokyo Storyという名の競走馬が登場する)。近年では成瀬巳喜男増村保造の名も次第に世界的に知られてきた(フランスでは増村の「赤い天使」の評価が際立って高い)。

しかし未だに木下惠介の名前が海外で取りざたされることは滅多にない。これは「臭いものには蓋をしろ」ではないが、木下がゲイだったことを日本人がひた隠しに隠してきたことが原因ではないかと僕は考える。

例えばスペインのペドロ・アルモドバル監督がゲイであることを抜きにして、「オール・アバウト・マイ・マザー」や「トーク・トゥ・ハー」を語ることが出来るだろうか?イタリアのルキノ・ヴィスコンティ監督がバイセクシャルだったことを抜きにして「ベニスに死す」や「ルートヴィヒ」「家族の肖像」で彼が何を描こうとしたか理解出来るだろうか?木下についても同じ事が言えるだろう。

日本の映画関係者達に強く訴えたい。木下がゲイだったことをむしろ積極的にアピールすることこそ、彼の海外での再評価に繋がると僕は信じて疑わない。

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2013年6月 1日 (土)

インド映画「きっと、うまくいく」

考えてみたらインド映画を観るのは1998年に日本で公開された「ムトゥ 踊るマハラジャ」以来かも!?「スラムドッグ$ミリオネア」は勿論観ているが、あれはイギリス映画だし。

評価:B+

3

原題は" 3 idiots "つまり「3人の愚か者」。2009年の作品。インド映画歴代興行成績NO.1となり、インドアカデミー賞で作品賞・監督賞など史上最多の16部門を制覇したという。その中に「悪役賞」とか「男性プレイバックシンガー賞」という謎の部門があったり、脚本賞とは別に台詞賞があったりと、そのテキトーさがインドらしくて面白い。

上映時間2時間50分という長尺だが飽きることはなかった。

名門工科大学ICEに通う3人の大学生の友情の物語。10年後の彼らの姿をクロスカッティングしながら描いてゆく。エリート校のプレッシャーから自殺者が出たりと内容は結構シビアである。学歴社会であるインドの現状をあぶり出しながら、一方で脳天気なミュージカル・シーンも有り、その混沌(カオス)ぶりがインド映画ならでは。挿入歌の歌詞がまたいいんだ。サービス精神旺盛で結構笑えるし、最後は「ショーシャンクの空に」を彷彿とさせる爽快感が待ち受けている。大いに気に入った。「誰がために鐘は鳴る」のキスシーンとか、「月の輝く夜に」など、往年のハリウッド映画へのオマージュもニヤリとさせられる。

主演のアーミル・カーンは1965年生まれ、撮影当時既に40代半ば。でも全然そんな風には見えず、若々しかった。インドで非常に人気がある役者だそう。

これを見逃す手はない。今すぐ映画館に駆けつけろ!

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