ヒラリー・ハーン/ヴァイオリン・リサイタル@兵庫芸文
5月16日(木)兵庫県立芸術文化センターへ。ヒラリー・ハーンによるヴァイオリン・リサイタル。満席。
- アントン・ガルシア・アブリル/ "First Sigh" from "Three Sighs" ★
- デイヴィッド・ラング/Light Moving ★
- モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ K.302
- 大島ミチル/Memories ★
- J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番よりシャコンヌ
- リチャード・バレット/Shade ★
- エリオット・シャープ/Storm of the Eye ★
- フォーレ/ヴァイオリン・ソナタ 第1番
- ヴァレンティン・シルヴェストロフ/Two Pieces for Violin and Piano ★
ワルツ、クリスマス・セレナーデ
★……ヒラリー・ハーンのための委嘱作品
実は彼女、2011年3月21日に兵庫芸文でリサイタルを予定しており、僕もチケットを購入済みだったのだが、その直前に東日本大震災と福島原発事故が発生し、来日中止になった→詳細はこちら。2009年に同ホールで彼女を聴いた時のレビューはこちら。
以前から僕はハーンのことを妖精みたいな人だと評していたが、その印象は今も変わらない。現在33歳だなんて俄に信じられない。心・技・体ならぬ心・技・音を兼ね備えた、麗しき女性である。彼女は頭が小さくて首が長い。つまりバレエリーナ体型なのだ。だから妖精を連想させるのかも知れない。
ハーンの音は線が細いが、芯があり純度が高い。凛とした佇まい。
モーツァルトは軽やかに駆け、コロコロ転がる子犬みたいな演奏。
バッハは力強さとか激しさよりも、むしろ気品があって高潔な解釈。囁くようなハーモニクスの高音が美しい。ヴィブラート:ノン・ヴィブラートの割合は3:7くらい。そしてヴィブラートの「揺れ」のスピードは変幻自在。お見事!
一転してフォーレではたっぷりヴィブラートをかけるが、上品さを保ち、繊細な表現力。第3楽章は軽やかさとスピード感があった。
First Sighは幻夢的。
Light Movingはフィリップ・グラスとスティーヴ・ライヒがまだ若くて貧しい時、ニューヨークで生計を立てるために「チェルシー・ライト・ムーヴィング」という運送会社を立ち上げたことに因んでいる。That's Minimal Music !と言いたくなるような小洒落た無窮動。ハーモニクスが涼やか。
映画音楽作曲家として知られる大島ミチルが書いたMemoriesは水の精を連想させる、揺蕩うような楽曲。ロマンティックで甘美な夢を描く。
Shadeは不思議な曲で、ピアノの最低音から最高音までを駆使。
Storm of the Eyeは眼内閃光がテーマで、映画「2001年宇宙の旅」のラストシーンを連想した。ヴァイオリン技法の可能性を広げる曲。
Two Piecesは優しいメルヘン。まともな調性音楽で気に入った。
アンコールのジェームズ・ニュートン・ハワードは映画「キング・コング」などの作曲で知られる。
Farewellは揺り籠のような、美しい楽曲だった。
小品ながら沢山の委嘱作品が聴けて愉しかった。
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