映画「中学生円山」と宮藤官九郎(クドカン)論(「あまちゃん」含む)
宮藤官九郎(クドカン)の名前を初めて意識したのは2001年に公開された行定勲監督の映画「GO」(窪塚洋介、柴咲コウ、山崎努)である。金城一紀の小説を脚色したのがクドカンだった。日本アカデミー賞最優秀脚本賞や読売文学賞(戯曲・シナリオ)を受賞。そして翌年、映画「ピンポン」(松本大洋 原作)の脚色も素晴らしかった。
彼が劇団「大人計画」(松尾スズキ 主宰)に所属し、台本を書くだけではなく役者もこなし、ロックバンド「グループ魂」のメンバーであることは後に知った。
ただクドカンの初期オリジナル作品「木更津キャッツアイ」「ゼブラーマン」「舞妓Haaaan!!!」にはどうもついていけなかった。登場人物たちが常にハイテンション、エキセントリックで、ギャグを詰め込み過ぎ。Too much !!!の感を否めなかった。
ところが、そんなやんちゃ坊主のクドカンも年をとって落ち着いてきたのか、2005年にギャラクシー賞大賞を受賞した「タイガー&ドラゴン」は江戸落語を題材にして、文句なしの面白さだった。
そして2010年に向田邦子賞を受賞した「うぬぼれ刑事(デカ)」は肩の力が抜けたコメディで完璧な仕上がり。2011年「11人もいる!」はホーム・ドラマとしても出色の出来だった。2008年に放送された「流星の絆」なんか、東野圭吾の原作よりも遥かに面白かった(コメディ・パートは全てクドカンの創作である)。近年の彼の作品は余分なものを削ぎ落とした洗練がある。
こうして年々作家として円熟味を増したクドカンが現在取り組み、常に視聴率20%を超えるスマッシュヒットを飛ばしているのがNHKの朝ドラ「あまちゃん」だ。これはクドカンによる本格的アイドル論になっている。物語は松田聖子、中森明菜、小泉今日子らが全盛期だった1984年とAKB48が世間を席巻した2008年を交互に照射しながら、怒涛の2011年3月11日へと猛進していく。凄まじいエネルギーを感じさせる。しかしこの底抜けの明るさ、ポジティブなパワー、若い生命力の輝きは一体何なんだろう?クドカンの最高傑作が現在進行形で形成されつつあることの醍醐味。生きててよかった。僕はいま、本気で「アイドルは人々を笑顔にし、その力で日本を救えるのかも知れない」と信じつつある。是非今年の紅白歌合戦はキョンキョンの復活(歌は「潮騒のメモリー」)および、AKB48と(「あまちゃん」から生まれる仮想アイドル・グループ)GMT(ジ・モ・ト)47の直接対決を観たい!!
さて現在公開中、宮藤官九郎 脚本・監督の映画「中学生円山」の話だ。公式サイトはこちら。
評価:B+
これは中学生男子の抱く妄想をテーマにした作品である。男なら、誰しも「ある、ある!」と身に覚えがあることばかりの筈だ。僕は凄く共感した。クドカンが主人公の妄想癖を肯定しているのがまた嬉しいね。痛快である。タランティーノ映画風スタイルも粋だ。
草彅剛が言う、「考えない大人になるくらいなら、死ぬまで中学生でいるべきだ」が胸に響いた。僕は今まで役者のとしての草薙くんを全く評価していなかったが、今回初めて彼がイイ!と想った。
また「息もできない」のヤン・イクチュンの起用法が絶妙である。こんなコメディ演技も出来るんだ!と驚いた。最高に可笑しかった。
さらに主人公が恋するヒロインを演じる刈谷友衣子が可愛い。「あまちゃん」の能年玲奈といい、橋本愛といい、美少女揃いでクドカンの趣味の良さ、選択眼の確かさを感じる。
必見。
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