映画「リンカーン」とスピルバーグの病
評価:B-
アカデミー主演男優賞・美術賞受賞。映画公式サイトはこちら。
アカデミー監督賞を生涯4回(史上最多)受賞したジョン・フォードの作品に「若き日のリンカーン」(1939)がある。弁護士時代のリンカーンをヘンリー・フォンダが演じた。アカデミー監督賞を2回受賞したスティーブン・スピルバーグは、この後日譚を撮りたかったのではないだろうか?勿論、あわよくば3回めのオスカーを狙っていたことは言うまでもない。
「予定通りにはいかない。番狂わせが面白い」
(ミュージカル「エリザベート」より)
立派な映画。でも、お世辞にも面白いとはいえない。「アメリカン・デモクラシーとは何か?」という勉強にはなる。そういう意味において、フランク・キャプラ監督「スミス都へ行く」(「若き日のリンカーン」と同じ1939年公開)や、シドニー・ルメット監督「十二人の怒れる男(1957)に近い作品と言えるだろう。ただし、「スミス」や「十二人」は映画としても優れているけどね。そこが違う。
ダニエル・デイ=ルイスの演技はパーフェクト。ただ他のキャラクターに魅力がない。前から感じていたことだが、スピルバーグという人は男女の恋愛(夫婦愛を含む)とか、親子の情といったものを描くのが本当に苦手だね。これはもしかしたら彼がアスペルガー症候群と診断されたことと関係があるのかも知れない。やはり「激突!」「ジョーズ」「未知との遭遇」「E.T.」といったところが彼の真骨頂だと僕は想う。
有名なゲティスバーグ演説の後、大統領が南北戦争をどう終結させ、奴隷解放を実現させるかという点に映画は焦点を絞っている。憲法修正案を議会で通すため、ロビイストを駆使して政敵の民主党票をどう切り崩すか(リンカーンは共和党)、その政治的駆け引きがスリリング(というか、それしかない)。理想だけでは現実は動かない。時には妥協や工作(根回し)が必要なんだね。そういうことを学んだ。大学の講義を受けた気分。
スピルバーグは次回作としてマーティン・ルーサー・キング牧師の伝記を検討しているという。誰か、彼の「オスカー欲しい病」を何とかしてくれないか!?もう十分だろう。
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