« オーギュスタン・デュメイ/関西フィル@いずみホール、@ザ・フェニックスホール | トップページ | 映画「舟を編む」 »

2013年4月27日 (土)

大植英次/大フィルのマーラー「復活」@フェスティバルホール

4月26日(金)新生フェスティバルホールへ。

Oue1

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • マーラー/交響曲 第2番

を聴く。これは一般に「復活」と呼ばれているが、作曲家自身がその標題を用いたことはない。

僕がこの作品に持つイメージは「誇大妄想の産物」。第1楽章「葬礼」から第5楽章「復活」に至る壮大なシンフォニーをグスタフ・マーラー自身がベルリン・フィルを指揮して初演したのが1895年、35歳の時。完成は34歳だから「青年」と言ってもいい年頃。驚くべきことだ。

第5楽章にはクロプシュトックの「復活」賛歌が採用されている。これはイエス・キリストの復活を歌ったもの。しかし第2番が初演された時、マーラーはユダヤ教徒だった。結婚とウィーン宮廷歌劇場第一楽長就任のためキリスト教(ローマ・カトリック)に改宗するのはそれから2年後の97年のことである

彼の父親は酒造業を営むユダヤ人実業家だった。幼いグスタフはドイツ語を話し、地元ボヘミア(現チェコ)のキリスト教教会で少年合唱団員として賛美歌を歌っていたという。だからクロプシュトックの「復活」賛歌に対しても何の違和感もなかったのだろう。交響曲第3番に児童合唱が入るのもこうした経緯からと想われる。

一方、ユダヤ人の裕福な銀行家の息子として生まれたフェリックス・メンデルスゾーンは7歳の時プロテスタントのルーテル教会で洗礼を受け、後に彼の一家は揃ってユダヤ教からキリスト教に改宗した。当時ヨーロッパに住むユダヤ人が、どれだけ生き辛かったか窺い知れよう。

Oue2

さて、オーケストラは第1ヴァイオリンが16人の16型。対向配置でコントラバスは舞台下手(客席から向かって左)。

合唱は大阪フィルハーモニー合唱団、大阪新音フロイデ合唱団、神戸市混声合唱団、ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団というプロ・アマ混成チーム。人数が多いので迫力があり、クオリティも高かった。

大植さんはいつもながら暗譜で指揮。第1楽章の葬送行進曲は遅めのテンポで開始され、足を引き摺るかのよう。間をたっぷり取る。表情はグロテスクなまで彫りが深く、陰影が濃い。ティンパニの連打が「最後の審判」のように痛烈にホールに響き渡る。第2主題が現れると儚げで、今にも消え入りそうに仮初の夢を描く。そして怒涛の展開部に突入。音楽は速まり、歪で奇っ怪な世界が広がってゆく。パンチが効いている。

僕はこの第1楽章を聴きながら、一大センセーションを巻き起こした2009年2月の大フィル定期を想い出した。

楽譜には第1楽章の後に「少なくとも5分間以上の休みを置くこと」という指示があり、ここで独唱者と合唱団が入場した。そして第2楽章以降は全て間髪入れずアタッカで演奏された。

第2楽章は失われた無垢、幸福な過去(青春)への追想。前楽章でギクシャクしていた音楽は一転、流麗になり、愉しい気分に満ちる。そのコントラストが鮮やか。

第3楽章はおどけたスケルツォ。僕が大植/大フィルの演奏から連想したのはフェデリコ・フェリーニ監督の映画に登場するサーカスの情景だ。音楽は弾み、リズミカル。あたかも滑稽な道化芝居(farce,ファルス)を観ているかのよう。

第4楽章でエストニア出身のアネリー・ペーボ(アルト)は「おお、いバラよ!」と歌い出すのに合わせ、いスカートにい花をコーディネイトしていた。深い声。瞑想し、まどろむ。

続いてオーケストラが咆哮する中、僕は眩く輝く光が天井から差し込む情景を幻視した。第5楽章は生命の賛歌だ。音楽は浄化され、そして次第に熱くなる。そこには希望に燃える青年マーラーの姿があった。「復活する、そう復活するだろう」という合唱冒頭部は全員座ったまま囁く。「おお、信ぜよ、我が心よ、私が何も失ってないことを!」で独唱者が立ち、「おお、あらゆるものに染み渡る苦痛よ、私はお前から逃れ出た!」で合唱も立ち上がり、力強く歌い上げる。ドイツ・ミュンヘン生まれのスザンネ・ベルンハルト(ソプラノ)の歌唱は清潔で、透明感があった。けだし美しい。

ちなみにレナード・バーンスタイン/ロンドン交響楽団のDVDで確認すると、レニーは最初から立って歌わせていた。演出の違いが興味深い。

そしてクライマックス。凄まじいエネルギーの噴出!音楽はどこまでも、どこまでも高揚し、未曾有の頂点を築く。

音楽が終わると、熱狂した聴衆が割れんばかりの拍手を惜しみなく送り、新フェスティバルホールはブラボーの嵐に飲み込まれた。

開幕シリーズに相応しい、記憶に残る名演だった。僕がいつもボロクソに書く大フィルの金管セクション(特にトランペットとホルン)も大健闘。文句なし。

大植さんは大フィル音楽監督に就任した直後の定期演奏会(2003年5月)でも、このシンフォニーを振った。正に、ここぞ!という時の「キメ」曲と言えるだろう。

今回初めて生で聴いて、交響曲第2番の真の素晴らしさは実演に接しないと絶対理解出来ないなと痛感した。大編成の醍醐味、そして舞台裏から鳴り響き掛け合いをする軍楽隊バンダの面白さ!

フェニーチェ歌劇場の記事にも書いたが、新フェスティバルホールは旧に比べ響きに潤いが増し、随分良くなった。音の分離も優れている。残響ではザ・シンフォニーホール(1,704席)やいずみホール(821席)に及ばないが、少なくとも巷でも評判が最悪な京都コンサートホール兵庫県立芸術文化センター大ホールよりはマシなのではないだろうか?キャパが増えると音響が悪くなるのは必定だが、2,700席でこれなら上々だ。

最後に、終楽章の終結部を聴きながら、レナード・バーンスタイン/「キャンディード」の終曲"Make Our Garden Grow"にそっくりだということに初めて気が付いた。あのミュージカルはレニーが赤狩り吹き荒れる暗黒の時代に書いたブロードウェイ・ミュージカルだ。つまりヴォルテールの原作小説にレニーは希望ある未来、アメリカの「復活」を託したのではないだろうか?そんなことを考えた。

|
|

« オーギュスタン・デュメイ/関西フィル@いずみホール、@ザ・フェニックスホール | トップページ | 映画「舟を編む」 »

クラシックの悦楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/212850/57253482

この記事へのトラックバック一覧です: 大植英次/大フィルのマーラー「復活」@フェスティバルホール:

« オーギュスタン・デュメイ/関西フィル@いずみホール、@ザ・フェニックスホール | トップページ | 映画「舟を編む」 »