オーギュスタン・デュメイ/関西フィル@いずみホール、@ザ・フェニックスホール
4月21日いずみホールへ。
オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン独奏・指揮)/関西フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、
- フランク/ヴァイオリン・ソナタ
- ショーソン/ヴァイオリン、ピアノと弦楽合奏のためのコンセール
- モーツァルト/交響曲 第29番
ピアノ・ソロは当初エレーヌ・メルシエが発表されていたが(フランクではなくドビュッシーのソナタが予定されていた)、急病のためパヴェル・コレスニコフが代演した。コレスニコフはモスクワ音楽院で学んだ後、ベルギーでマリア・ジョアン・ピリスに師事した。2012年にカナダのホーネンス国際ピアノ・コンクールで優勝。
フランクでのデュメイのヴァイオリンは力強く、第1楽章は固い意志が漲るかのようであった。第2楽章は厚みのある音で、凛として艶がある。第3楽章は夢や憧れが感じられ、第4楽章は足踏みをするなど熱気があった。
ショーソンは幻夢的で極めて美しい音楽。第1楽章はデュメイの研ぎ澄まされた音にゾクゾクした。第2楽章は月光下に浮かび上がるまぼろし。ジャン=ジャック・ルソーの絵を彷彿とさせる。第3楽章は決然として誇り高い。第4楽章は畳み掛ける緊張感があり、オケにも気迫があった。
ソリスト・アンコールはショパン/ワルツ第19番 イ短調とスカルラッティ/ソナタ イ長調 K.322。達者なピアノだった。
モーツァルトの交響曲は色彩感ある演奏。小気味よく溌剌としている。ニュアンス豊か。弾むように歌うが、決して古楽器演奏みたいに攻撃的にはならない。
デュメイが指揮する時、関西フィルは実力以上の音を出すが(150%増し)、以前にも増して柔らかく円やかな響きを獲得した印象を受けた。
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続いて4月25日(木)、ザ・フェニックスホール。やはりデュメイ(ヴァイオリン独奏・指揮)/関西フィルで、
- モーツァルト/弦楽五重奏曲 第4番 K.516より第1楽章
- ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ 第3番 (ピアノ:上田晴子)
- モーツァルト/管楽器のためのセレナーデ(第11番) K.375
- スーク/弦楽セレナーデ
弦楽五重奏曲はプログラムにしっかりと「デュメイ氏が指導したクインテットです」と記載されており、気合が入っている!前座として申し分なし。
デュメイのブラームスは基本的にフランクと同様の印象を受けた。ピンと張りがあり、情熱的に攻める姿勢を崩さない。しかし一方で、ブラームス固有の憂愁・哀感もある。
モーツァルトのセレナーデは音の強弱、緊張と緩和の対比が鮮やか。メリハリがある。
ヨセフ・スークはドヴォルザークの教え子で、後に娘婿となった。スーク・トリオで有名な同名のヴァイオリニスト、ヨセフ・スークは孫である。
弦楽セレナーデといえばチャイコフスキーとドヴォルザークが有名だが、スークの作品もそれらに劣らぬ傑作。演奏は緩急の変化に富み、繊細な弱音とダイナミックな強音が印象的だった。楽員の「本気」を肌で感じた。
クリーヴランド管弦楽団を「アメリカ5大オーケストラ」に鍛え上げたジョージ・セルやモントリオール交響楽団を一流オケにしたシャルル・デュトワ同様、デュメイは卓越したオーケストラ・ビルダーである。ダーク・ホース=関西フィルの今後に注目したい。
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