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フェニーチェ歌劇場 ヴェルディ/歌劇「オテロ」@新フェスティバルホール

全面改築し、新規オープンとなったフェスティバルホールへ。

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こけら落としとなるフェニーチェ歌劇場による来日公演、ヴェルディ/歌劇「オテロ」を鑑賞。

ヴェネツィアにフェニーチェ歌劇場が完成したのは1792年。 ヴェルディの「エルナーニ」「アッティラ」「リゴレット」「椿姫」「シモン・ボッカネグラ」がここで初演されている。

僕が海外のオペラ座による日本公演を鑑賞するのはこれが2回目。前回は中学生の時、郷里・岡山から大阪まで新幹線に乗り、旧フェスティバルホールでミラノ・スカラ座の「ボエーム」を観た。演出・美術はフランコ・ゼッフィレッリ。カルロス・クライバー指揮でミレッラ・フレーニ(ミミ)、ペーター・ドヴォルスキー(ロドルフォ)という史上最強のプロダクションであった。カルロスの華麗な指揮ぶり、そして第2幕が開くと上下2段になった舞台装置が現れ場内が「オォーッ!」とどよめいたことを今でも鮮明に記憶している。あの頃は字幕なんて洒落たものはなかったが、今回は勿論、舞台両脇にLED字幕装置付き。

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指揮は5年間パリ・オペラ座バスティーユ音楽監督を務めた経験もあるチェン・ミョンフン。演出は1972年イタリア・ベルガモ生まれのフランチェスコ・ミケーリ

主な配役は、

オテロ:グレゴリー・クンデ
デズデーモナ:リア・クロチェット
ヤーゴ:ルーチョ・ガッロ
カッシオ:フランチェスコ・マルシーリア
モンターノ:マッテオ・フェッラーラ
エミーリア:エリザベッタ・マルトラーナ

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まず第1幕は数々の星座に彩られた紗幕(しゃまく:レース・カーテンのように透ける素材で出来た幕)が現れる。オテロを象徴する獅子座が中央にあり、デズデーモナを示す乙女座が寄り添う。それを2匹のうみへび座(=ヤーゴ)とさそり座(ロデリーゴ?)が包囲する。

第1幕後半のオテロとデズデモーナの二重唱では、舞台装置が黄金色に輝き、壁はイスラムのアラベスク(幾何学)模様で埋め尽くされ真に美しかった。

ちなみに物語の舞台となるキプロス島はトルコの南に位置する地中海の島で、当時はヴェネツィア共和国領だった。つまりヨーロッパ文化とイスラム文化の接点だったのだ。

また獅子はヴェネツィアの守護聖人・聖マルコの象徴であり、ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞はこれに由来する。

  • ヴィスコンティ映画「ベニスに死す」の謎
    (ヴィスコンティはオペラ演出家としても名高く、ゼッフィレッリは助手を務めていた。かの有名なマリア・カラスの「椿姫」@スカラ座を演出したのもヴィスコンティである)

第2幕・庭園の場でマンドリンやギターの伴奏で合唱が歌われる中、聖母像が登場。しかし物語が進み、ヤーゴの毒が回りオテロが嫉妬に狂うと聖母像が倒れ、それにウミヘビが巻き付いているといった具合で、演出が巧み。時折星座が光るのも綺麗だった。

グレゴリー・クンデはベルカント歌手として名を馳せた人だそうだが、甘美な声に魅了された。当初は果たしてオテロというドラマティックな役柄に相応しいのだろうか?という不安があったのだが、力強さにも不足はなかった。

リア・クロチェットは、人々の多くがソプラノと聞いてイメージする通り、ものすごい肥満体でビジュアル的にはいただけなかったが、歌唱はさすがだった。特に弱音の澄んだ美しさは特筆に値する。とにかくオテロとデズデモーナの2重唱には陶酔した。

ルーチョ・ガッロは見た目がよく、演技も見事だった。ただ声量が物足りなく、淡白な印象を受けた。僕が今まで親しんできたヤーゴは「歌役者」ティト・ゴッビや、スカラ座来日公演で歌ったピエロ・カプッチルリ、そしてゼッフィレッリが監督したオペラ映画「オテロ」のフスティーノ・ディアスであり、彼らと比べるのが気の毒だと分かっているが、こればかりは仕方がない。もっと個性を押し出し、強烈な悪の魅力を放散して欲しかった。

あとオペラ指揮者としてのチョン・ミョンフンの卓越した統率力には舌を巻いた。音楽は一瞬たりとも弛緩することなく劇的であり、明晰で切れがあった。オーケストラも(特に管楽器)べらぼうに上手かった。イタリアの底力を感じた。

清水の舞台から飛び降りたつもりで4万5千円という高額なチケットを購入、1階席7列目センターブロックで鑑賞した。悔いはない。それだけの価値のある公演であった。Bravissimo !!

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旧フェスティバルホールは音がデッドで嫌いだった。しかしリニューアルで音響は明らかに改善。収容人数が多いのでザ・シンフォニーホールほどの残響は勿論ない。しかし音の分解能が高く、各声部がクリアに聴こえる。潤いがあり、以前の”乾いた”印象は払拭された。

最後に、トイレがウォッシュレットに進化したのはありがたいが、便座シートや除菌クリーナーが設置されていないのは片手落ちだと思う(ザ・シンフォニーホールにはシートあり)。今後の改善を望む。ビロウな話で恐縮です。

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